2018年9月11日(火)の終業後は、東京・京橋の中央区立環境情報センターへ。
交流を通じて農的社会の実現を目指す銀座農業コミュニティ塾の第5回勉強会が開催されました。
参加者は13名ほど。
19時過ぎ、事務局のKさんによる進行、塾長のTさんからの挨拶で開会。
前半は、蔦谷栄一先生(農的社会デザイン研究所)による「イタリアの社会的農業の実態~特に有機地区の取組みについて~」と題する講義。
8月下旬にイタリアを視察されたことの報告です(文責・中田)。
「イタリアの有機農業の面積割合は14.5%(日本は0.4%)。2015年8月には社会的農業法も成立した。これは農業者及び協同組合による農福連携、食育等の活動を支援する内容で、実態に法律が追いついてきたもの」
「有機農業の市場は拡大しているが、GAS(イタリア版CSA(提携))は頭打ちで、大手流通企業が参入している」
事前に配布して下さったレジュメだけではなく、撮影して来られた写真を映写しながら説明して下さいます。
「有機農業を核とした共同体(「有機の町」)づくりが盛ん。訪問した地区では、在来種にこだわるブドウ生産を重視するなど環境や文化と一体となった町おこしが行われていた」
「地域での取組みが地域間のパートナーシップに発展しつつある。これは国家単位とは別のアプローチ。有機農業は地域の中で、環境、食文化、歴史等と結びついて発展している」
「有機は単なる農法ではなく、まさに哲学・運動。イタリアでは福岡正信氏が信奉され、『わら1本の革命』は教科書にも取り上げられている」
「規模拡大や近代化だけでは、現代社会が抱える様々な問題の解決は難しい。有機農業や小規模農業も併存し、切磋琢磨しながら対応していくことが必要ではないか。その意味で、イタリア農業は、自分がイメージする農業の最先端を示していると感じた」
後半は、有機農家・清水茂さん(武蔵野市)による特別講演。
蔦谷先生の紹介によると、清水さんとは「ご近所」同士だそうで、野菜などを求められることも多いそうです。
私も清水さんとは何度か(呑み会等の場で)ご一緒したことはありましたが、まとまった話を伺うのは初めてです(この日は、後継者のお嬢様もご一緒でした)。
「清水農園の紹介」と「食の安全から食の健全へ」と題する2種類のレジュメを事前に配って頂いていましたが、この日は、スライドを映写しながらのお話でした(デザイン等も工夫された分かりやすいスライドでした)(文責。中田)。
清水さんが代々続く農家を継がれたのは1986年。ほどなく有機農業の研究に入って「微生物=命」という考え方にたどり着いた。2014年から子ども達のための「はたけの幼稚園」、子育てママさん達のための「武蔵境3番線ホーム」等の活動をスタートされたそうです。
「『農』という字を分解すると、上から林、田、貝になる。定住することで農業が始まり、社会が生まれた。貝は農具を表す。ここから工業(Industry)が発達していった」
「Industry は経済原理に基づき、大規模化等による生産性を重視。大規模産地農業もこの考え方。一方、もともと農(Agriculture)は生命原理に基づくもので、コミュニティ、田園風景の保全等とも結びつく。そこに(小規模でも)都市農業の意義がある」
「有機農法とは、命で命をつなぐこと。作物を育てるのは微生物であり、微生物が生きやすい環境を維持することが人の役割。小さな命や環境と共生していくことが大事。安全なだけの食品ではなく、健全な食品を求めていきたい」
清水農園での交流の様子なども映し出されました。子ども達、お母さん・お父さん達の笑顔が印象的です。
食べものや農業を含め、現代の社会は様々な問題を抱えています。それらを解決していくためには、理論的な分析や思想的な整理も不可欠ですが、同時に事例や実践により証明していくことも重要です。
理論と実践の両面が学べる銀座農業コミュニティ塾の次回(第6回)の勉強会は、11月7日(水)に開催予定です。毎回、終了後は懇親会(こちらが目的?)もあり、多くの方とつながることもできます。
興味を持たれた方は、気楽な気持ちで一度のぞいてみて下さい。