2019年1月20日(日)は二十四節気の大寒。
一年で最も寒さが厳しい季節ですが、比較的暖かい朝を迎えました。
冬の日射しが眩しいなか、8時20分頃に自転車で自宅を出発。JR武蔵野線・新秋津駅前を左に折れ、柳瀬川(やなせがわ)を渡ったところにあるのが淵の森(ふちのもり)緑地です。
すでに多くの人たちが集まっていました。
樹の間には「淵の森会議」と書かれた横断幕が張られています。
この日は、地元の市民団体「淵の森の会」主催による恒例の「下草刈り」の日。
今年で22回目になるそうです。
先日の銀座農業コミュニティ塾で、塾生のお一人(所沢市在住)の方から紹介頂いたのですが、私は地元でありながら(来たことはありましたが)下草刈りに参加するのは初めてです。
東京・東村山市と埼玉・所沢市にまたがる約0.6haの緑地を宅地化から保全するため、地元自治会等からなる連絡協議会(「淵の森の会」の前身)が結成されたのが1996年のこと。
広く募金活動や署名活動を展開し、2018年に公有地化が実現し、現在は維持管理するための市民主体の活動が続けられています。
林の中を歩いてみました。木漏れ日。かさかさとした落ち葉の感触。
「淵の森の掟(やくそく)」と書かれた木札(淵の森の会、東村山市、所沢市の連名)には、「みどりをまもります/ごみはもちかえります」等と書かれています。
「淵の森の会」の会長は、近隣にお住まいの映画監督・宮崎駿さん。
アニメ映画『となりのトトロ』の構想を練った場所の一つだそうで、ご自身も会に多額の寄付もされているそうです。
緑地内にある宮崎監督直筆の石碑には「この森が、さらに豊かに深く育ち、人々の心を支え、木や草、鳥や虫たちのすみかとなることを願ってやみません」等と刻まれています。
おや、石碑の下の方にはまっくろくろすけが(!)
定刻の9時を回り、一ヶ所に集合するよう促されました。
スピーカーを手に進行を仕切られているのは、事務局長の安田敏男さん。
約300人のボランティアを前に宮崎会長がマイクを取られ、「保全のあり方については、自然に任せておくべきなど様々な意見もあるが、放置しておくとアズマネザサが伸びて稀少な植物が失われる。市街地の中でほっとできる場所として守っていきたい」等と挨拶。
続けて「ササはなるべく根本から刈って下さい。ただし、柵(ロープ)の近くは残すように。枯れ枝等は一ヶ所に集めて下さい」等と、会長ご自身から具体的な作業内容の説明もありました。
作業スタート。
参加者は持参した剪定ハサミや鎌を手に、思い思いの場所に散り、足元に伸びているササ刈り等に取り掛かります。
安田事務局長は「人数が多いからゆっくりやって下さい、すぐに終わりますから」と声を掛けていましたが、なんの、手に余るほどの量です。
枯れ枝もたくさんあります。
小さな子どもを連れた家族や外国人のグループの姿も。バッグに入れた愛犬を連れた方もおられました。
「淵の森」内は明るい陽の光が広がっていますが、下草刈りをしていない隣接地ではササが大きく伸びています。
管理活動の効果は歴然です。
淵の森を回り込むように流れているのは、一級河川の柳瀬川。綺麗な川です。
淵の森の会ではこの川の清掃活動もされているそうで、東京湾からの天然遡上のアユの姿も見られるようになっているとのこと。
大きなビニール袋を持った方が、参加者が刈り取ったササを集めて下さいます。
枯れ枝は数箇所に集め積み上げられ、たちまち小さな山ができました。
大人数のお陰か1時間ほどで作業は終了。最初の場所に集合するよう促されます。
歩く途中、足元を見ると、あちらこちらに野草や低木の色鮮やかな実やキノコなど。
集合場所では、事務局の方が会計報告書とキャンデーを配って下さいました。
そのうち、作業中から聞こえていたバグパイプの音が、森の中をこちらに近づいてきました。
思った以上の音量、そして深くて暖かみのある音色です。
途中から「さんぽ」(となりのトトロ)のメロディーに変わりました。
集合していた参加者の前に、民族衣装で着飾った8名の楽団の方々が到着。太鼓の方もおられます。
さらに数曲を披露して下さったのは「東京パイプバンド」の方々。
1974年のエリザベス女王来日を機に結成された演奏団体だそうで、この日は所沢市文化振興事業団の協力によるサプライズ演出だったようです。
素晴らしい演奏でした。
そして「閉会式」。
東京パイプバンドの代表の方に宮崎会長からお礼の言葉。会長も参加者と一緒に作業されていたようです。
引き続き宮崎会長、所沢市長、東村山市長からの閉会挨拶。
その後、初めて参加した方を中心にマイクを手に取られ、一言ずつ自己紹介と感想。青森や岡山から夜行バスで駆けつけたという人もおられました。
11時頃に散会。
あくまで青い冬の空の下、木漏れ日を浴びながら雑木林の中で過ごした時間は、何とも言えない快適なものでした。
地面に座り込んで枯れ葉と戯れる子ども達の姿が印象的でした。
身近な環境を自分達の手で守っていくことの大切さを、教えられたイベントでした。