「民家フォーラム2015 東京」 @ 東京・東久留米市柳窪集落

 2015年11月14日 (土)。
 この週末も、残念ながら予報通り雨模様となりました。小雨がぱらつく中、自転車で隣接する東久留米市の柳久保へ。
 近くまで行くと、ところどころに「日本民家再生協会」と書かれた幟が立てられています。
 日本民家再生協会(JMRA)とは、経済・社会構造や生活様式の変化のなかで失われようとしている伝統的な日本の民家を『日本の住文化』の結晶とし、これを次代に引き継ぐために様々な活動をしているNPOです。
 この地で10時から開催されたのは、「民家フォーラム2015東京-地域に生きる民家を残す~武蔵野の柳窪集落に学ぶ~」。
 主会場である村野家(登録有形文化財・顧想園(こそうえん))の薬医門の前で受付。
 嬉しいことに、近隣の住民は入場料 (1,000円) が半額です。
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 門を入ると、よく手入れされた広い庭を囲むようにして茅葺きの主屋、土蔵、離れ、中雀門、茶室(顧想庵)等が並んでいます。風情のある苔の庭。銀否や紅葉が色づいています。
 これまでも門前は何度も通り、立派な民家があることが気になっていたのですが、ようやく中に入ることができました。
 ちなみに顧想園とは、武蔵野の雑木林を愛した国木田独歩の言葉にあやかって名付けられたそうです。
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 受付で、この日のイベントのために作成されたパンフレットを頂きました。
 開くと明治7年頃の「柳窪村・地引絵図」。さらに開くと、現在の散策マップが現われ、昔と現在の集落の姿を重ねてみることができるというスグレものです。
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 10時から四君子亭(休憩所)で開会式。
 壁には、日本民家再生協会のこれまでの活動についてのパネル等が展示されています。
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 協会の公文大輔代表理事による開会の挨拶。
 民家フォーラムは、これまで東京でも2回開催してきたもののいずれも市街地で、武蔵野で開催するのは初めてとのことです。
 続いて顧想園の園主・村野さんから、
 「この柳窪の緑を守っていくため、亡くなった主人が仲間に声をかけて、市街化調整区域への逆線引きや文化財登録等の取組を行ってきた。色んな苦労はあったが、多くの方達の協力を頂いてきたことに感謝」とのご挨拶。
 最後に、地元の若い野崎さんが力強く開会宣言。奈良山(屋号)の13代目の方だそうです。
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 このフォーラムに参加するのは初めてですが、充実した多彩なプログラムが組まれていることに驚きます。
 まず、10時30分からの講演会(1回目)に参加することに。
 会場は離れです。
 本来は直接離れに入る予定だったそうですが、この日は雨が降っていたため、特例で主屋の玄関から入り渡り廊下を通っていくことに。
 幸運にも、普段は入ることができない建物の中を見学することができたのです。雨、さまさまです。
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 最初の対談形式の講演会(座談会)のテーマは、「地域と生きる<武蔵野・柳窪集落から学ぶ>」。
 会場は続きの間も含めて椅子が並べられ、満席状態です。
 登壇者は3名。
 まず、柳窪集落研究者の鈴木賢次さん(日本大学名誉教授)。長年にわたって歴史的建造物の調査・保存・再生等に取り組んで来られた方だそうです。コーディネータも務められます。
 「この地区の調査にも携わってきた。文化遺産として祭り上げるということではないが、かといって放っておいて守れるものではない。NPO等が非常に熱心に活動してこられた賜物」
 続いてNPO法人東久留米の水と景観を守る会代表の佐藤雄二さん。
 「この集落は自然に残ったのではなく、残そうという強い意志があったから。最初の頃は必ずしも地元でも多数派ではなかったが、話し合いを重ねて今まできた。2004年から見学会を始めた。20年近くここに住んでいるという人が『こんなにいいところとは知らなかった』と話されたのが印象に残っている」
 そして、地域の住人でもある奥住實さん。「柳窪の自然と環境を守る会」代表で「東久留米竹とんぼ協会」会長(竹とんぼの全国チャンピオンだそうです)。
 「住んでいる者にとっては空気みたいな存在だったのが、鈴木先生達に勉強させてもらって改めて貴重な財産であることに気づかされた。何とか後世に残していきたいと取り組んでいきたい」
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 興味深い話が続いているのですが、残念ながら、11時からの柳窪集落・屋敷ツアーに参加するため中座させて頂きました(申し訳ありません)。
 集合場所の四君子亭では、すでにスタッフの方によるコースの概要説明が始まっていました。
 雨が強くなるなか、傘をさして20名ほどのツアーが出発。
 歩きながらスタッフの男性に伺うと、隣接する小平市在住とのこと。この地に魅せられて「守る会」のメンバーとして活動されているそうです。
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 素晴らしいケヤキ並木を抜けたところにあるのが、開会宣言をされた野崎さんのお宅(奈良山)。
 11代目当主の方にお話を伺うことができました。
 主屋は明治初期の建築で2階は養蚕に使われていたとのこと。主屋の脇に小さな朱雀門があるのが、この辺りの民家の特徴だそうです。
 広い庭や作業小屋では、午後からのワークショップの準備が進められていました。
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 すぐ隣にあるのが宇兵衛(奥住家)。
 広壮な主屋と、2棟並んだ土蔵が印象的です。また、この集落で唯一の蚕室の建物が残されており、屋根は通気を良くするように格子状になっています。
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 奥住家のすぐ裏には樹林や竹林を縫うように黒目川が流れています。都の緑地保全地域に指定されています。
 遊歩道を少し上流に歩いたところに、「東京の湧水57番」の標柱。ふだんは必ずしも水量は多くないそうですが、この日は幸いの雨のために、豊かなせせらぎを眺めることができました。ここでも雨、さまさまです。
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 柳窪天神社の境内には、柳久保小麦の碑が建てられています。
 幕末以来、うどん用あるいは藁ぶき屋根の材料として栽培されていましたが、昭和に入ってほとんど生産は途絶えていたのが、最近は地域の特産品として栽培が増えています。江戸東京野菜(野菜ではありませんが)にも認定されています。
 地域特産品(柳久保小麦のうどん、ラーメン、かりんとう等)の販売ブースも。柳久保小麦の麦わらを使ったヒンメリ(スウェーデンの麦わら細工)作りのワークショップも行われていました。
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 社務所では、自由学園の生徒による民家スケッチ等が展示されています。
 柳久保小麦のうどんを頂きました。もちもちとして、冷えた身体に染み込んでくるような美味しさです。
 午後からお会いする方向けに、柳久保ラーメンを購入。
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 生僧と午後は別用があり、昼過ぎまでで失礼させて頂きました。
 なお、この後も、「民家を生かす<土壁から考える民家の魅力>」、「民家に生きる<都会から地域への移住者に話を聴く>」の2回の座談会のほか、竹細工、落葉掃き、正月飾り、土壁作り体験等のワークショップ、さらに翌15日(日)には文京区本郷と墨田区京島の町並みを見学するオプショナルツアーも予定されています。
 充実したプログラムです。
 生憎の(実はラッキーでもあった)雨のなか、多くの方達が熱心に参加されていることに驚きました。また、スタッフの方達が、冷たい雨の中で合羽を着て道案内等をされている様子に、民家に対する熱い思いを感じることができました。
 この地の貴重な財産が残されてきた歴史、関わってこられた方達の思いに触れることのできた非常に意義深いイベントでした。
 地元の皆さま、主催者及びスタッフの皆さまに感謝したいと思います。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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