大和田新『大和田ノート-伝えることの大切さ 伝わることのすばらしさ』(2016.8、福島民報社)
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「東日本・津波・原発事故大震災」(注:大和田さんは東日本大震災をこのように呼ばれます。)から、丸7年が過ぎました。
しかし、被災された方々に節目はないそうです。震災から3ヶ月後の日に被災者の方にインタビューした大和田さんは、「震災から何ヶ月、何年という区切りはマスコミが勝手に作っているだけ。あなたは恥ずかしくないか」と言われたそうです。
著者は神奈川県出身、中央大法学部を卒業後にラジオ福島に入社。現在はフリーとして活躍されています。震災から7年の間、現場に足を運んで取材し、被災地の現状や被災者の方々の思いをラジオで伝えてこられました。
震災が発生した日は、午後6時から翌朝6時まで、不安な気持ちを抱えるリスナーに対して「一緒に朝を迎えましょう」と励まし続けられました。
ところが3週間後、「がんばろう福島!」と語り続ける大和田さんに、リスナーから長い手紙が届きました。そこには浜通りの壮絶な実情がつづられ、最後には「現場を見てから物を言え!」とあったそうです。衝撃を受けた大和田さんは、翌週から被災地に自ら足を運んでの取材を始められました。
ぎりぎりまで避難を呼びかけパトカーごと津波に流された若い警察官。身体の不自由なお年寄りを高台に誘導した後で自分の祖父母を探しに行き、犠牲となった高校生。避難先の埼玉県から福島市に戻り、被災地に向かう自衛隊や警察の復興支援車両に手を振り続けた小学生の姉弟。本書の副題(伝えることの大切さ 伝わることのすばらしさ)は、担当番組が優秀賞を受賞した際に、この2人から贈られた手作りの盾にあった言葉だそうです。
本書には、被災者の方たちの生の声が多くの写真とともに収録されています。大震災の教訓を忘れないためにも、時折り開いて読み返したい本です。
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【F.M.Letter No.139、2018.3/17[和暦 如月朔日]掲載】
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