【メルマガ】F.M.Letter No.146

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.146◇
 2018年6月28日(木)[和暦 皐月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  GDPとFIFAランキング
◆ O.カレント  共奏ファーム
◆ ほんのさわり イリイチ『コンヴィヴィアリティのための道具』
◆ 情報ひろば  拙ブログ更新、イベント情報等
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 サッカーのW杯ロシア大会(下克上大会?)もたけなわ。日本代表は大健闘、今夜1次リーグ突破をかけて格上のポーランドとの一戦ですね。
 時の流れを体感するため、本メルマガは和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるようなデータをコツコツと紹介していきます。

-GDPとFIFAランキング(経済とサッカー)-

開会前はあまり盛り上がらないかと思っていたら、いざ始まってみるとついつい寝不足という人も多いのでは。
 W杯の楽しみは、もちろん日本代表の応援もありますが、アフリカや中南米の「小国」が互角に戦うという面白さにもにもあります。

現代の産業社会の原動力は経済(おカネ)。したがって、国の大小(規模や実力)を決めるのは(軍事力を別にすれば)経済力です。それでは、経済大国ほどサッカーも強いのでしょうか。

リンク先の図100(祝・グラフ100号!)は、横軸にGDP(国内総生産の額)、縦軸にFIFA(国際サッカー連盟)のランキングをとり、W杯ロシア大会参加32カ国をプロットしたものです。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/06/100_WC.pdf

今大会の出場国のうち、GDPが最も大きいのは日本です(アメリカも中国も参加していません)。一方、最も小さいのはセネガル。一次リーグH組で何とか引き分けたセネガルのGDPは、日本の約300分の1しかありません。

グラフ全体をみると、GDPとFIFAランキングの間には相関関係は認められません。つまり、経済力と作家への実力は無関係なのです。
 もっとも、FIFAランキング30位以内の国(青)についてみると、GDPが大きいほどランキングも上位にある傾向があります。一方、30位以下の国については、逆にGDPが大きいほどランキングは下位となっているように見えます。

なお、GDPとスポーツの実力が無関係というのは当然とも思えますが、五輪の獲得メダル数を考えると、やはりサッカーには「面白み」があります。

[データ出典]
 UN, National Accounts Main Aggregates Database,
   https://unstats.un.org/unsd/snaama/Introduction.asp

 FIFA
   https://www.fifa.com/fifa-world-ranking/ranking-table/men/

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。

-共奏ファーム(埼玉・東松山市)-


 東京・池袋から50分ほどの東武東上線・高坂駅で降り、15分ほどバスに乗って、さらに小川沿いの心地よい道を徒歩で20分ほど。
 そのような場所に共奏ファームはあります(車であれば高坂駅から10分ほど)。

オーナーのまさひこさん(桂政彦さん)については、本メルマガNo.111(2017.1/28)でも紹介させて頂きましたが、大手外資系IT企業をリタイアされた後、ホームページ製作支援会社・creativekeiの運営、各地での地域おこしに取り組んでおられるほか、最近は介護福祉士の資格を取得されるなど、多彩な活躍をされている方です。

地元の方とのご縁で、500坪ほどの耕作遊休地を使わせて頂けるようになったのが5年ほど前のこと。
 その頃は一面、背高泡立草やメルケン苅萱に覆われ、あちらこちらには野ウサギの糞が落ちていたそうです。そこをまさひこさんは、ほとんど一人で開墾して畑にし、固定種のトマトやサツマイモの栽培を始められました。
 農薬や肥料は(たい肥も)一切使わず、水もやらないという徹底した自然農法です。

その後は、ナスやキュウリ、ズッキーニなど作物の種類も増え、数年前には養蜂も始められました(天然・非加熱の蜂蜜を販売中)。

まさひこさんは、共奏ファームにかける思いを、
 「数百年の間、育まれてきた多様な(田畑、地域、命などの)営みが崩壊しつつある現在、一人ひとりの思いがつながり、協働して、心地よく癒される故郷を再生していきたい」等と語っておられます。

見学の受入れもされています。
 このような畑が各地に増えていけば、この社会は変わっていくのかもしれません。

[参考]
 共奏ファーム(FBページ)
  https://www.facebook.com/kyosofarm/

まさひこさん(No.111、オーシャン・カレント)
  http://food-mileage.jp/2017/01/28/0128oc/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。

-イヴァン・イリイチ著、渡辺京二/梨佐翻訳『コンヴィヴィアリティのための道具』(2015/10、ちくま学芸文庫)-

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480096883/

著者は1926年、オーストリアに生まれ、神学、哲学、歴史学を学びカトリック司祭として活動した後、メキシコを拠点に産業社会への批判を展開した思想家です。
 1973年に刊行された本書は、その後のエコロジー運動や脱成長論の思想的な源泉の一つと位置づけられています。

本書のキーワード「コンヴィヴィアル」(convivial)は、一般的に耳に馴染みはなく、書くのも発音するのも大変です。
 著者は「尊敬する友人たちの忠告に逆らって」、あえてこの言葉を用いたとのこと(「はじめに」)。というのは、現代英語ではコンヴィヴィアルとは「宴会気分」といった意味があるためです(本書は最初、英語版として刊行されました)。

著者が意図するところは、この意味とは異なります。
 肥大化する産業社会においては、道具(技術や制度)が人間を支配するようになり、人々は選択権を有しない消費者の地位におとしめられている現状にあります。そうではなく、人間が道具をコントロールし、他者や自然との関係性の中で、その創造性を最大限に発揮できる理想社会を、コンヴィヴィアルという言葉で表しているのです。
 生産性至上主義の正反対にある言葉として位置づけています。

また、本来(ラテン語等)は「節制ある楽しみ」「優雅な好奇心」といった意味もあるとのこと。ちなみに渡辺京二は「自立共生」という訳語を当てています。

多くの示唆に富んだ本書ですが、必ずしも読みやすい内容ではありません。
 現在、毎週末に都心の某大学で開かれて入る読書会に参加させて頂くことで、少しずつでも自分なりに理解を深めていきたいと思っています。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 読書会『コンヴィヴィアリティのための道具』[6/13]
 http://food-mileage.jp/2018/06/13/blog-109/

○ コンヴィヴィアルな畑[6/18]
 http://food-mileage.jp/2018/06/18/blog-110/

○ 2018年6月の共奏キッチン♪@シェア奥沢[6/22]
 http://food-mileage.jp/2018/06/22/blog-111/

○ 加須パワーフードでまんぷくナイト(@ちよだいちば)[6/27]
 http://food-mileage.jp/2018/06/27/blog-112/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ IBUKI(いぶき)-vol.3-【自分の好きで突き抜ける】
 日時:7月1日(日)14:00~18:30
 場所:赤羽会館(東京・北区赤羽南1)
 主催:IBUKI
 (詳細、お問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/2236736126353084/

○ 第42回 縮小社会研究会
 「科学技術の進歩で大量生産文明の持続は可能か」
 日時:7月7日(土)13:00~17:35
 場所:清泉女子大学(東京・品川区東五反田3)
 主催:縮小社会研究会
 (詳細、お問合せ等↓)
 http://shukusho.org/data/42announcement.pdf

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*今号のコツコツ小咄
 「こんど2人でポーランドに旅行に行こうよ」
 「いいけど、悪さは(ワルシャワ)しないでね」

コツコツ小咄は、まとめて拙ウェブサイトにも掲載してあります。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.147は7月13日(木)[和暦 水無月朔日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/ 
 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」