ローカルフード

 土日と穏やかな週末でした。
 土曜の昼は、久しぶりに肉汁うどんを食べに行きました。多摩地方は水が少なく、米があまり獲れなかったため、食文化としては小麦地帯です。現在も、H市内には多くのうどん屋さんがあります。今回は、Kやさんにお邪魔しました。

 小さな店ですが、いつも混んでいます。メニューは基本的に1種類、肉汁うどんだけです。
 地粉を打ったうどんは、一般的な真っ白ではなく褐色がかっています。これがざるに盛られて出てくるのですが、サイズはLから5Lまでの中から選びます。2Lが普通サイズ位でしょうか。足らなければうどんだけ追加することもできます。また、お好みで天ぷらの掻き揚げと海苔をトッピングできます。
 このうどんを、熱い付け汁に浸して頂くのですが、だしのきいた付け汁の具は豚肉、ネギ、ほうれん草など。表面には脂の粒がきらきらと輝いています。これに薬味のワサビ、生姜、ゆずを入れ、さらに摺り胡麻を振ると、ぱっと食欲をもよおす香りが立ちます。
 今日は4Lを注文しました。盛られたうどんの山に箸を入れて多めにつかみ、付け汁にさっとくぐらせ口に運ぶと、普通食べ慣れているうどんのツルツル感とは異なり、どちらかといえばボソボソとした食感に最初は驚いたものです。しっかりとコシがある麺は、噛めば噛むほど旨みがピュルピュルと(小泉先生みたい)出てきます。

 店は回転が早く、ふらりと立ち寄った様子の近所の人、少々遠くから車や自転車で来た人、カップル、小さな子ども連れなど、ひっきりなしに客が入れ替わります。小規模ながらも戦場のような店を切り盛りするのは、ご高齢の(失礼)女性3名。市内のうどん屋さんの主役、接客と調理を担っているのは、大体どこも女性たちです。ご主人は裏方でうどんを打っているのかも知れません。

 さて、翌日曜日は、T屋酒造の酒蔵一般開放の日です。年1回、新酒の発売に合わせて開催される、H市民にとって、すっかりお馴染みになったイベントです。
 このT屋酒造、実は慶長元年に江戸の神田・鎌倉橋で開業したという非常に歴史のある蔵で、「江戸名所図会」にも描かれており、つい先日はNHKの土曜時代劇の舞台にもなっていました。その後、昭和初期に現在の地に醸造蔵が設けられたとのことです。
 普段は見られない蔵の中に入り、富士山の伏流水を使っているという井戸や昔の酒造りの道具の見学、酒米や麹を見ながらの杜氏さんによるガイドも興味深いものですが、来訪者の多くの目的は、できたばかりの新酒の利き酒(試飲)です。

 14時頃に行きましたが、敷地内は既に盛り上がっています。

 何しろ、工場の敷地内にはお酒の直売だけではなく、焼き鳥やおでんの屋台が出て、さらに特設ステージでは、伝統無形文化財のお囃子や獅子舞が演じられています。子どもたちがお面をつけて踊っていました。
 あちこちでは、椅子代わりのお酒のケースに座って盛り上がってるグループも。まっ昼間から、見方によっては、ちょっと異様な空間ではありますが、これも収穫の喜びを表すための、新しいタイプの地域のお祭です。

 こういった地域の歴史と伝統、食文化というものを、大事にしていきたいと感じた週末でした。