シブヤの農業

 今日の午後は、渋谷区主催の環境講座にお招き頂きました(資料等は拙ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」をご覧下さい)。

 平日の午後早い時間にも関わらず、センター街からスペイン坂を歩いただけで、人の多さと喧騒に頭がくらくらとしてしまいました。シブヤは大都会・東京の代名詞であり、およそ農業とは無縁の場所です。正直、始まるまでは、ここでどうやって食べものや農業の話をすればいいんだろう、という不安で胸が一杯でした。
 しかし、約40名の参加者の皆さんを相手にお話しするうち、長時間の一方的な(しかも下手くそな)説明にも関わらず、参加者の皆さんが一所懸命聞いて下さっている熱意が伝わってきて、次第に不安は消えて行きました。真摯な質問も出され、終了後には何人もの方と名刺交換させて頂き、また、アンケートには、多くの方が自由記入欄にたくさんの感想を書いて頂いていることをみて、大変、心強く、有難く思った次第です。
 終了後、区役所環境保全課のNさん、Iさん(企画、運営お世話になりました。)に、分庁舎の屋上に案内して頂きました。屋上緑化されているのですが、その一画にあったのは何と菜園です。区職員の有志の方々が、野菜やハーブを栽培されているとのこと。先日、収穫したばかりという立派なサツマイモも見せて頂きました。
 渋谷区役所の屋上にある菜園には、象徴的な意味があるように思えました。
 そういえば、渋谷区の区民菜園は、住宅地に囲まれた小学校の体育館跡地や、東横線のガード下といったわずかな空き地を活用して開設されています。競争率は高く、シブヤという大都会にも、あるいは大都会だからこそ、菜園や農業に対するニーズは大きいものがあるようです。先日お訪ねした「ふれあい植物センター」も、素晴らしい施設でした。
 思えば9月23日の新嘗祭に、東京中の農作物が奉納される明治神宮があるのも渋谷区です。
 こう考えていくと、むしろシブヤは、東京の、そして日本の農業にとっても象徴的な場所かもしれないと思い始めました。そう思いつつ帰り際にハチ公をみると、何と大きなニンジンをくわえているではありませんか。
 ところで夜は、北陸農政局在勤中にお世話になった石川県生活学校の皆さん4名と再開し、目黒で食事しました。生活学校とは、女性を中心に身近な暮らしの中の様々な問題を学び、実践していく市民グループです。石川県生活学校は、大規模なアンケートを実施するなど、食と環境の分野について積極的に活動されており、私も何度か研修会や意見交換会に参加させて頂くなどお世話になりました。その皆さんが、今回は、代々木での全国研修会に参加するために上京されたのです。東京で再会できて、懐かしく、嬉しく思いました。
 この日の基調講演の講師が江戸東京・伝統野菜研究会の大竹道茂さんだったこともあり、目黒にリニューアルオープンしたばかりの江戸野菜居酒屋「江ど間」にご案内しました。
 名物の千住葱1本焼き、小松菜と鯛ちくわの塩昆布炒め、おでんなど、素材の味を活かしたお料理には、加賀野菜の本場から来られた皆さんにも満足して頂けたようです。心が満たされた一日でした。