連休明けの1月10日(火)の夜、冬空には十六夜の月が煌々と輝いていました。
手許の手帳「旧暦日々是好日」によると、この日は旧暦では前年の12月17日。この月が欠けていくとともに年が暮れ、新月(1月23日)から新しい年が始まります。
この手帳を作られた高月美樹さんによると、月の満ち欠けをベースにした旧暦は「地球の呼吸」を直接感じることができる暦であり、旧暦を意識して暮らすことは、自然の摂理にしたがい、自らも自然の一部として循環できる存在になれるとのことです。
さて、(グレゴリオ暦の)お正月早々、素敵な写真集が手元に届きました。
木佐聡希さん(本名・木佐千代枝さん)の「花想」です。
千代枝さんが撮影した身近な花や植物の写真と、短歌や写真に書き添えられていた文章、関連する新聞記事等がまとめられています。
京都府内の小学校教師をされていた千代枝さんは、40歳半ばで若年性パーキンソン病を発症され、郷里の島根での療養生活を送られる中、震える不自由なお身体で、身近な野の花の写真を撮影されるようになりました。
これら写真は、元の同僚の方たちによって1998年から10年間製作されたカレンダーに使われ、さらに昨年2月頃からは、ご家族により写真集づくりが進められていたのですが、完成を目前にした9月20日、千代枝さんは亡くなられたとのことです。
ここで写真集の内容を紹介する筆力は、私にはありません。
日常の生活の中の、身近な野の花や植物がいかに美しいか。
むろん、その花たちは千代枝さんの回りにしか無かった訳ではなく、ほとんどは私たちの身の回りにもある「ありふれた」ものです。しかし、その美しさに私たちの多くは気付いていません。
帯には、社会学者・上野千鶴子氏の「病を得たひとの眼には、こんなにも世界はうつくしいのか。わたしは何を見落としていたのか」等の言葉があります。
千代枝さんご自身、教師をしている時はゆっくりと故郷で過ごす時間もなく、療養生活に入って初めて身近な野の花の美しさに気付いた旨を書かれています。
身近な自然に寄り添い、その美しさを素直に認め、さらに自然の息吹の中での自分自身を(あるいは文明や技術も)自覚することが、今、大事なことではないでしょうか。
私がこの写真集を知ったのは、熊本のミニコミ情報誌「ドリーム」に掲載されていたゴーヤー佐藤さんの記事です。確かに写真集の表紙のススキの写真は「全てOKよ!」と言っているようです。
詳しくは、ご実兄の木佐茂男先生のウェブサイトにある紹介文をご覧下さい。
一人でも多くの方に、手に取って頂きたい写真集です。