東京は、面白い町です。
食料自給率はわずか1%。
日本の中で最も農業の生産現場から離れているにも関わらず(だからこそ?)、食べものや農業に強い関心を持ち、様々な活動を実践している多くの人たちがいます。
年齢も性別も職業も様々ですが、総じて、1次産業とは遠い仕事をしている若い方が中心となって活動されている場合が多いようです。
私も、野次馬根性で面白そうな(美味しそうな)場に顔を出させてもらっていますが、以下に紹介する2つのグループも充実した取組をされています。
まずは、「週末農風」。
代々木公園で毎月開催されている「アースディマーケット」(今春、7周年を迎えるそうです。)に出店されている農家の販売をお手伝いすることをきっかけに活動がスタートし、現在は週末等の援農ツアーによる産地との交流活動に発展しています。スタッフは若い女性が中心です。
そして、「共奏キッチン♪」。
東京・田町に近い古民家を活かした「三田の家」を拠点に、自由に集まって食事を作り、食べて、語り合うというイベントを定期的に開催しています。こちらの主催者は、システムデザインの会社を経営する若い男性です。
その両者が今回、初めてコラボして企画したイベントが公開されたのは、2013年3月7日(木)のことでした。
そのイベントとは、季節感を大切にする日本人にとっての重要な年中行事、「お花見」です。
今年度最後(3月31日)の日曜日の昼、場所は東京・綾瀬の小菅東スポーツ公園。
誰でも参加できるオープンなイベント、料理やお酒を持ち寄って楽しもうという内容で、フェイスブック等で案内されると同時に、多くの人たちから参加希望の手が上がりました。
順調にスタートを切ったかに見えたイベントですが、幹事(主催者)の皆さんの日頃の善行にも拘わらず、開催当日までに思いがけない多くの試練が待ち受けていたのです。
最初の試練は、今年の桜の開花が記録的に早かったことです。
3月上旬の平均気温はぐんぐん上昇、最高気温が25度を超える夏日まであり、16日(土)には東京都心でも桜が開花。歴代一位タイの早さでした。
翌週も暖かい日が続き、たちまち満開に近くに。とても月末まで花は保たないと思われました。
ところが、24日(日)頃から寒が戻り、最高気温は2月上中旬並みの日が続いたお陰で、桜が一気に散る心配は無くなったのは良かったですが、今度は、天候不順という試練に直面したのです。
週初めの週間予報では31日は雨。この予報は前日の昼まで変わらず、しかも気温はさらに下がるとのこと。
残念ながら中止かと気を揉んでいたところ、前日夜に一部の天気予報が「曇り」に変わったことを受け、幹事による決行の指令がFB上に高らかに宣言されたのです。
そして当日の朝を迎えました。
前夜の雨は上がりましたが、空はどんよりとして、いつ雨が落ちてきてもおかしくありません。
そのような中、現地に先乗りした幹事から寄せられた情報は、「花は十分に見頃で思ったより寒くない」。リアルタイムのソーシャルメディアの威力です。
13時に綾瀬駅西口に落ち合ったのは20名ほど。徒歩で会場に向かいました。肌寒い曇り空ですが、すぐに雨が落ちてくる気配はありません。
参加者の中からは「空いているだろうし、絶好の花見日和だね」との声も。
15分ほどで「小菅東スポーツ公園」の入り口に。
小菅水再生センターの建物の屋上に、日本庭園、芝生広場、テニスコート等があるというのです。
ゲートをくぐり長いスロープを登りきると、確かにそこには空中庭園が広がっていました。
芝生広場の桜はまだまだ見頃、風が吹くと、ひらひらと花びらが舞い落ちます。
先乗りされていた幹事の方たちと合流し、桜の下に持ち寄ったシートを布き、これも持ち寄った飲みものや料理を並べ、無事に「花見の会」が始まりました。
お互いに初対面の方もおられ、まずは食べながら、呑みながらの自己紹介からスタート。
さすがに皆さん、食べ物に関心のある方が多く、様々な活動をされています。
また、持ち寄られた料理も産地や材料に拘ったものがたくさんあります。「週末農風」が関わっている農家の食材もたくさん使われているそうです。
持ち寄って下さったたくさんの料理。
例えば、山口・祝島産の釜炊きひじきと干しタコ。干しタコはタコめしのおにぎりになっていました。
目にも鮮やかな、トマトのファルシー(詰め物料理)。
有機野菜のサラダと手作りのドレッシング。
自分の畑から摘んできたというイタリアンパセリやパクチーを持ってきて下さった方も。
さつまいもやキノコの煮物。
花豆を煮たもの。ペンネのミートソース載せ。エスニック風味のカレー。
お重に綺麗に料理を詰めてきて下さった家族連れの方も。自家製のお味噌が添えられています。
中学生のお嬢さんの名前は「はるか」ちゃん、ここは綾瀬なので「綾瀬はるか」ちゃん。新選組の原田左之助のファンだそうです。
各地のお菓子やデザートも。桜あんパンを買ってきて下さった方もいました。
料理のできない私は、地元名物の饅頭を持参。
飲みものは、自家製のサングリア、有機米で作られた日本酒「穂の穂」、ジン、ワイン、ビールなど。
参加者の中には、在来種の野菜生産に携わっている方がおられ、一方で、昔のアクの強い曲がったキュウリを食べたいけれど今はスーパーにはなど売っていない、と嘆く消費者の方がおられました。
このような方たちを相互につないでいく役割も、この日のイベントにはありました。
現状を見渡すと、日本の「食」と、それを支える農林漁業は、様々な意味で危機的な状況にあると言わざるを得ません。
さらに日本の社会自体、都市と農村の格差の拡大、「無縁社会」とコミュニティの喪失など、多くの問題を抱えているのが現実です。
その一方で、この日の主催者、参加者の方たちなど、若い世代を含め多くの人たちが、食べものや農業に強い関心を持ち、身近なところからの実践が拡がっていることも、紛れもない事実です。
このような方達の活動が拡がっていくことこそが、世の中を変えていくことにつながるもの確信しています。
仲間に入れてもらい、手を携えつつ、より良い「食」の実現を通じて「世直し」を着実に進めていくこと。
それが当面の私の夢です。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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