藤村靖之さんと高坂勝さんのライブトーク

130401_1_convert_20130407082254.png 天候の変動が激しい春です。
 何とか年度末まで保ってくれたソメイヨシノは、駅前の商店会が慌てて花見提灯を吊るすのを見届けたかのように、はらはらと散り、自転車置き場の地面を埋めました。
 枝垂れ桜は、もう少し見頃が続きそうかと思われましたが、今週末の天候不順で見納めとなってしまいました。
 もっとも、ほかに多くの春の花が咲き誇っています。命の萌え出ずる春です。
 さて、年度替わりの4月1日(月)の19時から、紀伊国屋書店・新宿南店3階のイベントスペース「ふらっとすぽっと」において、雑誌『kototoi』創刊一周年を記念したライブトークが開催されました。
130401_4_convert_20130407094423.png 菊谷文庫『kototoi』は、3.11以後「日常に詩を取り戻すために」創刊された和綴じの雑誌です。
 その『kototoi』編集者の菊谷倫彦(きくや・ともひこ)さんを司会役に、創刊一周年記念号(第五号)に執筆されている藤村靖之さんと高坂勝さんをゲストに迎えてのトークイベントです。
 1944年生まれの藤村靖之さんは、発明家です。
 大手メーカーを退職して「非電化工房」を設立、その名の通り、電気を使わない「非電化製品」の発明に力を入れ、国内だけではなく途上国での普及にも取り組んでおられます。『テクテクノロジー革命』(大月書店)など著書も多数。
 1970年生まれの高坂勝(こうさか・まさる)さんは、このブログでも何度か紹介させて頂きましたが、大手百貨店を退職し、池袋の小さなオーガニックバー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」を開業。千葉県匝瑳市等で米や大豆の自給に取り組まれるとともに、多くの都市住民等を受け入れる活動も行っておられます。
 著書に『減速して生きる-ダウンシフターズ』(幻冬舎)等。緑の党共同代表も務めておられます。
130401_2_convert_20130407082322.png 仕事が終わって19時ぎりぎりに駆けつけると、立錐の余地も無いという感じ。3人の話に対する関心の高さが伺えます。
 若い方も若くない方も。性別は、やや女性が多いような。
 以下、トークのうち特に印象に残った部分を記しておきます。
(自ら「買って出て」様々なイベントの録画・配信をされている奇特な方がおられ、全体の様子はこちらからご覧頂けるようです。)
 -まず、「ものづくり」について
藤村さん
 「ものを作ることは楽しい。非電化の冷蔵庫づくりのワークショップなど、文科系のお母さん達がいつも目を輝かせて参加してくれる。本当に楽しそうで、大げさではなく出来上がって涙ぐむ人までいる。
 経済が高度成長する中で、多くの人が消費するだけの「専業消費者」になってしまった。生産者と消費者が分業化され、作る楽しさを奪われてしまっている」
高坂さん
 「日本酒や家など、法律で作ることを禁止されているものさえある。選挙を含めて、消費者は、生産する主役にはとなれないとマインドセットされている。嫌な仕事をしながらお米を買うより、自分で作った方が楽しいのに」
 -経済成長について。
藤村さん
 「高度経済成長は、あまりにきらびやかで、みんな取りこまれてしまった。しかし、物質的には豊かになったけれど、50年前に描いたユートピアは実現しなかった。これは人間の知性の限界」
高坂さん
 「若い世代は、モノだけでは幸せになれないことに気づき、ライフスタイルを選択し始めている。
 テレビも見ない、ブランドものもいらないという若い人たちが増えている。ただ、多くの若い人たちには選択肢が見えにくい。こちらの方が楽しい、ということを提示していきたい」
藤村さん
 「大手企業にいた時は、使えるお金もふんだんにあった。しかし、38歳の時に子どもがぜんそくになり、経済成長は大事なことをないがしろにしてきたことに気付いた。環境、子どもの安全、心の豊かさ等を損うことなく、便利さや快適さを実現する科学・技術を目指すべきではないかと、人生を切り替えた。それで会社を辞めて独立した」
高坂さん
 「池袋で小さなお店を経営しているが、必要以上に儲けないようにコントロールしている。お陰さまで売り上げが増えたので、今は週休3日にして自分の好きなことをする時間を創っている」
130401_3_convert_20130407082352.png -これからのキーワードは「自立力」。
藤村さん
 「私は『自立力』を、自給力と自活力と仲間力と定義している。
 まず、必要な食べもの、住む家、エネルギーは自分で楽しく生み出て自給する。そして、組織に属することなく、仲間とともに楽しく稼いでいく」
 「今、1000年続いたアングロサクソン文明(非論理、分断、依存、競争)が終わりの時期を迎え、文明は転換期にある。
 いま世界中で、同時多発的に多くの人が『知ること、つながること、自分で作る(自立する)こと』を合言葉にするというムーブメントが起こっている。特に指導者やオピニオンリーダーがいる訳ではない」
高坂さん
 「景気回復が言われているが、給料が下がっているのに消費しろ、というのは喜劇でしかない。お金を稼ぐより、人とつながって楽しくつくった方がいい。
 一人ひとりが変革の先を生きる、一歩踏み出す。一輪一輪が咲いていく。それが上から、花畑にみえるようになる」
 会場との質疑応答も含めたイベントは1時間ほど続きましたが、最後まで観客が減ることはありませんでした。
 赤ちゃんをおんぶし、小さな子どもの手を引いた若いお母さんが、あやしながら、最後まで熱心に聞き入っておられたのが印象的でした。
【ご参考】
 ◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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