今年2013年の梅雨入りは5月29日(水)。平年より10日も早いそうです。
それでも今のところ雨の日は少なく、気持ちのいい日が続いています。
猫の額のような市民農園の一画にも、様々な作物がぐんぐんと伸びてきました。
左からステラミニトマト、加賀太きゅうり、だだ茶豆、長岡巾着なす。これらは在来種の種を植えたものです。
福島ひまわり里親プロジェクトのひまわりも、力強く芽を伸ばしています。
6月1日(土)は、東京・渋谷に出かけました。
国連大学前では恒例のファーマーズ・マーケットが開催され、多くの人たちで賑わっています。
消費者と生産者の失われたつながりを再生し、相互理解のもとでより良い農業と食生活を目指して毎週土日に開催されているこのマーケットも、すっかり定着してきたようです。
さて、この日13時から国連大学に隣接する東京ウィメンズプラザにおいては、「野菜の学校」特別講座「伝統野菜はおもしろい!~なぜ守るのか、なぜ伝えるのか~」が開催されました。
主催はNPO法人野菜と文化のフォーラムです。
会場の壁際には、日本各地の伝統野菜も展示されています。
クサマヒサコさんの進行、大澤敬之校長の挨拶で特別講座は始まりました。
講演の一人目は、山形大学農学部准教授の江頭宏昌先生です。
山形在来作物研究会の会長も務められており、ドキュメンタリ映画「よみがえりのレシピ」に出演されたことで、知名度は一気に全国的に拡がったという方です。
江頭先生の講演は「伝統野菜との出会い」から始まりました。
品種改良の研究に携わっていた学生時代、科学の向かう先はこのままでいいのかと悩んでいた時に、川喜田二郎『想像と伝統』という本に出会い、問題を創造的に解決するための方法(書斎科学、野外科学、実験科学の組合せ)を学ばれたそうです。
さらに、元山形大学農学部教授の青葉高氏の著書(『野菜』等)に出会い、自分がやることは「わっ、これだ」と直感されたとのこと。
そして山形で、焼き畑でつくられているという藤沢カブや野菜の芸術品と言われる雪菜との衝撃的な出会い(「度肝を抜かれた」そうです。)を経て、現在のように、伝統野菜に深く関わられるようになったとのことです。
文献、野外、実験科学を組み合せたご自身の研究の一例として、カブの種子は焼畑農法とセットでヨーロッパから伝播したのではないか、との仮説を提示されていました。
また、山形における具体的な取組の事例について、「宝谷かぶ主」の集い、鶴岡食文化女性リポーター、「カブリツキAWARD」等の具体的な取組についても紹介がありました。
そして、「伝統野菜のこれから」として、伝統野菜や在来野菜は地域の魅力(シンボル)になり「誇り」を生み次世代に伝えるのに役立つ。近年の全国の伝統野菜復興運動は地域づくりにもつながっており、今後、ブームで終わらないようにするには何が必要かを考えていきたい、と締めくくられました。
続いて「やまけんの伝統野菜見聞記」と題して、農産物流通コンサルタントの山本謙治さんからの講演。
全国を(世界中も)歩いておられる山本さんは、「今、食の関心は中央から地方の食文化に移っている」としつつ、日本各地で栽培されている伝統野菜について、豊富な写真とともに紹介して下さいました。
例えば日野菜(滋賀)、札幌八行(とうもろこし、北海道)、雲仙こぶ高菜(長崎)、ねずみ大根(長野)、黒崎茶豆(新潟)等々。
質疑応答・意見交換の時間では、会場の参加者から具体的な質問等が活発に出されました。
江頭先生の今後の具体的な活動の方向についての質問に対し、江頭先生は、体験して感動しないと人には伝えられないとし、そのような具体的な事例を作っていくことの重要性を強調されていました。大学としても色々と取り組まれているようです。
また、社員食堂で伝統野菜を出したが調理してしまうと伝統野菜の良さが伝えられない、どうしたら良いか、との質問に対しては、山本謙治さんから、普通の野菜と食べ比べをすれば分かる、とのアドバイス。
この日は、江戸東京・伝統野菜研究会の大竹道茂先生も参加しておられ、東京での取組の紹介と、まとめ的な発言を頂きました。
江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座の紹介もありました。7、9月の入門編に続き、秋には講座がスタートする予定です。
プログラムの最後は、事務局の方から「食でおいしさを知る-野菜の学校2013」の紹介。
ここ3年取り組んできた「日本の伝統野菜・地方野菜」は2013年度が最終のシリーズになるそうです。
7月から来年3月にかけて全9回、新潟、最上、福井、能登・加賀など、毎回、各地の伝統野菜をテーマに、専門家の講演+食べくらべ+試食で構成される講座で、現在、受講生を募集中とのことです。
この日の特別講座でも、伝統野菜の試食がありました。
お皿に盛って頂いたのは、生ワラビ、干しワラビ、うるしのインゲン(以上、山形)、毛豆(青森)、しゃくし菜(埼玉)。
それぞれに味にも食感にも個性の感じられる野菜たちでした。
さて、江頭先生が講演で紹介されていた青葉高先生の『日本の野菜』という本を、後日、読んでみました。
その冒頭の節のタイトルは「文化財としての野菜」。
在来品種の特性(遺伝子)の調査をされていた青葉先生、調査を続けるうちに以下のように気付かれたそうです。
「各地に残されている在来品種は、それがその地に伝わり、一つの品種として成立した歴史を秘めている生き証人であることに気付いた。この意味で在来品種は生きた文化財として価値が高いものであると思う。」
「いみじくも英語では文化と耕作とに同じカルチュアー(culture)という語をあてている。」
この青葉先生の著作の初版から約30年を経て、現在、全国各地で伝統野菜や在来作物に関わる取組が盛んになっています。
貴重な保護すべき「文化財」に注目し、体験し感動を拡げていくことは、地域の活性化はもちろん、ひいては循環型の持続可能な社会(文明)づくりにも貢献していくものと期待されます。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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