ここ数日、冬晴れの日が続きます。
自宅の近くでも、ケヤキの紅葉や柿の橙、柑橘の薄黄色が、冷たい青空に映えています。
さて、東京・新有楽町ビル1階にある「自然環境情報ひろば・丸の内さえずり館」では、「自然保護・環境保全」をテーマとしたパネル展示やイベント・セミナー等が、随時、開催されています。
2013年11月1日(金)から12月20日(金)の間は、「渡り鳥からのメッセージ~蕪栗沼・ふゆみずたんぼ~」と題する企画展示が行われています。
主催は、蕪栗沼(かぶくりぬま)ふゆみずたんぼプロジェクト(NPO法人田んぼ、NPO法人蕪栗ぬまっこくらぶ、大崎自然界部、大崎市)。
総務省「緑の分権改革調査」事業を活用し、宮城・大崎市にあるラムサール条約湿地「蕪栗沼・周辺水田」を中心に、震災復興と地域活性化に取り組むプロジェクトです。
11月21日(木)18:30からは、関連セミナーの2回目として「津波被災水田の再生~ふゆみずたんぼの世界」が開催されました。
講師は、NPO法人田んぼの理事長の岩淵成紀(いわぶち・しげき)さんです。
宮城県出身の岩渕さんの専門は生物学。
小中学校の教諭等を経てNPO法人を立ち上げられ、田んぼの生きものなど環境と共生する農業の普及に取り組んでおられます。
18時半過ぎに着くと、プロジェクトの一員でもある大和田順子さん(NPO法人女子教育奨励会理事)の司会の下、すでに講演は始まっており、スクリーンには、おびただしい数の渡り鳥が乱舞する様子が映写されていました。
10万羽以上が飛来するという、美しくも迫力ある光景に圧倒されます。
「ふゆみずたんぼ」(冬期湛水(たんすい)水田)とは、冬の間も田に水を張り、田んぼに生きるイトミミズや水鳥など多様な生きもの(生態系)の力を借りて、無農薬、無化学肥料で米作りを行う農法です。
夏でも、ふゆみずたんぼにサギが集まるのは、ドジョウやイトミミズが慣行田の5倍もいるためとのこと。
江戸時代の会津地方の農書には「田冬水」との記述があるそうです。
一方、近代農法は、農薬・化学肥料の使用と機械化により増産と労力軽減には成功したものの、エネルギー生産性はかえって低下しているとのこと。
話は震災からの復興の取組に移ります。
東日本大震災の津波は大きな災禍をもたらし、一帯の水田も海水を被り、がれきに覆われてしまいました。
プロジェクトでは、ボランティアの協力も得て手作業でがれきを除去するとともに、生態系の復元力、ふゆみずたんぼの抑塩メカニズムを活用して復興に成功しました。そして、津波が微量栄養素等を運んできたことにより、逆に生産力は上がったのだそうです。
そして収穫された米は、「福幸米」として販売されているとのこと。
今後は、水田の生物多様性を世界へ発信するべく、「生物多様性エコ農業アジアモデル」をさらに展開していきたいとの説明で締めくくられました。
なお、この取組は、この度、第三回生物多様性日本アワード(公益財団法人イオン環境財団)グランプリを受賞(2013年10月29日発表)されたそうです。
後半は、大和田さんの進行による意見交換。
最初に指名されたのは、保険企業グループの女性の方。
社会貢献事業の一環として田んぼ復興のボランティアに参加し、熊手まで使ってガラス等も除去したとのこと。現在は手弁当で、田植えや稲刈り等に継続して参加している社員が多いそうです。
また、社員食堂では毎月、「復興米」を食べる日を決めているとのこと。
続いて、一ノ蔵酒造の方からは、ふゆみずたんぼで収穫された米を使った日本酒が紹介されました。慣行栽培米に比べてもろみの変化が早いなど、杜氏の自然の力に驚いたそうです。
なお、ラベルは葦(ヨシ)を原料に作っているとのこと。
絵本「渡り鳥からのメッセージ」も紹介されました。
エネルギーが専門の早稲田大・岡田久典先生からは、蕪栗沼の葦(ヨシ)をペレット化してバイオマスエネルギーとして活用する取組に期待している旨の発言がありました。
会場の参加者との熱心な意見交換が続き、20時過ぎにセミナーは終了。
ふゆみずたんぼのお米までお土産に頂き、帰途につきました。
生物多様性を重視し自然と共生する持続的な社会の形成は、農業に限らず、今後の社会全体が目指すべき方向と思われます。
それを、抽象的なものではなく、具体的なかたちとして実際に取り組まれている「ふゆみずたんぼ」の活動は、ますます注目されていくものと思われます。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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