図7 加賀、能登の食材を使った「ネオ和食」献立(写真)


◆ F.M.豆知識
  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎回少しずつ取り上げていきます。
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5 フード・マイレージ基礎知識
(9) 地産地消の効果測定-3
 前々回、前回と、小金井市で伝統小松菜を用いることを想定したケーススタディにより、地産地消が有する輸送に伴う環境負荷の低減効果を定量的に明らかにしました。
 これらは単一の食材に着目したものでしたが、複数の食材からなる献立 (メニュー) 全体についても同様の試算をすることができます。

 筆者は2008年4月から2年間、石川・金沢市に在勤・在住しました。
 日本の代表的な伝統野菜である「加賀野菜」の産地でもある金沢には、伝統的な食材や食文化を大事にする風土があります。
 今回は、金沢市における加賀野菜等を用いた献立を素材に、地産地消の効果を算定してみます。

 金沢市在住のフードライター・つぐまたかこさん(小誌No.17、2013.4/13発行で紹介させて頂きました。)の監修による献立(ネオ和食) は、「能登豚の野菜巻き」「源助大根のふろふき」「しいたけと春菊の味噌汁」「せりご飯」からなり、栄養バランスが優れているだけではなく、見た目も美しく仕上がっています。

 また、食材は加賀野菜など全て石川県産で、フード・マイレージ(食材毎の輸送量×輸送距離を累積)は16.9kg・km となり、トラック輸送に伴う二酸化炭素排出量は 3.0g と計算されます(ケース1)。

 次は、地元産にこだわらず、普通に出回っている国内産地の食材を用いると仮定した場合(ケース 2)です。例えば、米は石川県産ですが、大根は徳島、にんじんは愛知、ねぎは埼玉産となります。この場合のフード・ マイレージは230kg・km、二酸化炭素排出量は41gとなります。

 さらにケース3は、自給率が70%を下回る食材については輸入品を使用すると仮定した場合で、例えば豚肉はアメリカ、にんじん、しいたけは中国産(最大の輸入相手国)となります。この場合のフード・マイレージは 4,330kg・km、二酸化炭素排出量は133gとなります(大阪港までは船舶で輸送するものと仮定)。

 以上のように、地元産の食材を選択すること(地産地消)により、輸入品を使用する場合と比べてフード・マイレージは約256分の1、輸送に伴う二酸化炭素排出量は約44 分の1に縮小される効果があるのです。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/8_kagayasai2.pdf

 これら3つのケースについては、料理の外見や栄養分は大きく変わりませんが、フード・マイレージという観点からみた場合(地球環境問題を考慮した場合)は、歴然たる違いがあることが分かります。

[参考]
 中田哲也「フード・マイレージ指標を用いた地産地消の環境負荷削減
  効果の計測-伝統野菜等を用いた献立を事例として-」
 『フードシステム研究』第17巻3号、2010
  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2010_FS.pdf

 フード・マイレージ関係資料(F.M.豆知識)
  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data.html

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