================================================================
◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇
No.46; 2014.6/12(水)[和暦 皐月十五日]発行
================================================================
さる皐月九日(6月6日)は二十四節気の芒種(ぼうしゅ)。芒(のぎ)が
あるイネ科作物の種を播くとの意。カマキリが生まれ、蛍が光を放ち、
梅の実が黄ばむともされる時候です。
昨十四日(6月11日)は入梅。東京地方は平年より5日早い6月5日に梅
雨に入ってから、何日も強い雨の日が続いています。お陰で市民農園の
水不足は解消しましたが、毎年、気候が荒々しくなってきているように
感じられます。
時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と
十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は皐月十五日
の発行です。
—————————————————————-
◆ F.M.豆知識
フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎
回少しずつ取り上げていきます。
—————————————————————-
5 フード・マイレージ基礎知識
(9) 地産地消の効果測定-4 (牛肉と飼料)
これまで、地産地消が有する輸送に伴う環境負荷の低減効果について、
東京・小金井市における伝統小松菜、金沢市における加賀野菜等を用い
た献立についての2つのケーススタディを紹介してきました。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/5_komatuna.pdf
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/8_kagayasai2.pdf
今回は牛肉についてのケーススタディを紹介します。
これまでと違うのは、畜産の場合はその産地だけではなく飼料(エサ)
がどこから来ているかについても考慮して計算していることです。
阿蘇山の東北麓に位置する熊本・産山村(うぶやまむら)では、自給
牧草を中心として「あか牛」(熊本の伝統和牛)が飼養されています。
産山村で肥育されたあか牛は、いったん菊池市の畜産センターに輸送
されてと畜・解体された後、産山村で部分肉に加工され、熊本市(消費
地)に出荷されます(なお、牧草畑から牧場までの距離は5kmと仮定)。
この場合(図7のケース1)の総輸送距離は183km、牛肉1kgを輸送した
場合のフード・マイレージは037t・km(トン・キロメートル)、輸送に
伴う二酸化炭素排出量は66.1gと試算されます。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/9_ubuyama.pdf
なお、この計算では、牛の生体から牛肉への歩留まり率(45%)、牛
肉1kgを生産するために必要な飼料の量(飼料要求量、11倍)を考慮して
います。
それでは、同じように産山村で飼養されたあか牛であっても、仮に輸
入飼料(アメリカ産とうもろこし)により飼養された場合(ケース2)は
どうなるでしょうか。
飼料畑(アイオワ州)から輸出港(ニューオーリンズ)、輸入港(博
多港)を経て産山村までのとうもろこしの輸送距離は約2万kmにもなりま
す。産山村から熊本市への経路と輸送距離はケース1と同じです。
このケース2(輸入飼料を用いた場合)の牛肉1kgのフード・マイレー
ジはケース1(地元の牧草で飼養した場合)の588倍、輸送に伴う二酸化
炭素排出量は133倍と試算されます。
つまり、同じ産地で生産された牛であっても、地元で自給できる飼料
を用いた場合と輸入飼料を用いた場合とでは、輸送に伴う二酸化炭素排
出量には非常に大きな差が出るのです。
ところで、飼料を自給することの効果は、地球環境への負荷を低減す
ることだけに留まりません。日本のカロリーベースの食料自給率が39%
と諸外国と比べて低いのは、飼料の自給率が26%と特に低いためです。
飼料自給率の向上は、食料自給率全体の向上のために不可欠です。
さらには、有名な阿蘇の草千里は、永年にわたる家畜の放牧により形
成されたものです。なるべく飼料を自給することは、国内の環境や景観、
地下水を保全するという面でも大きな意義があるのです。
[参考]
中田哲也『フード・マイレージ−あなたの食が地球を変える』
(2007、日本評論社)
http://www.nippyo.co.jp/book/3137.html
フード・マイレージ関係資料(F.M.豆知識)
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data.html
—————————————————————-
◆ オーシャン・カレント −潮目を変える−
食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組
んでおられる方達を紹介するコーナーです。
—————————————————————-
大和田順子さんは、非常に幅広い分野で活躍されている方です。
肩書きとしては、例えば一般社団法人ロハス・ビジネス・アライアンス
(LBA)共同代表、認定NPO法人JKSK(女性の活力を社会の活力に)理事長、
立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科「サステナブル・コミュニティ
論」兼任講師などを務めておられます。
独立される前は、百貨店や民間シンクタンク、環境コンサルティング会
社等に勤務された経験もあります。
大和田さんの名前が最初に広く知れ渡ったのは、2002年、LOHASを最初に
日本に紹介された方としてでした。
LOHAS(ロハス)とは“Lifestyles of Health and Sustainability”の
頭文字をとったもので、健康や環境に配慮し持続可能な社会を志向するラ
イフスタイルのこと。
このアメリカ発祥のコンセプトは、大和田さんの著作等をきっかけに日
本でも広く知られることとなったのです。
そのような著名な大和田さんに、最初、個人的に面識を頂いたのは、20
10年、埼玉・小川町で開催された「30世紀につながる町づくり塾」を受講
した時、講師の一人であった大和田さんに色々と教えて頂いたことがきっ
かけでした。
各地での活動をベースにした豊富な事例を引用されながらの講座は、大
変、興味深いものでした。
今年(2014)5月から理事長を務められている認定NPO法人JKSK(女性の
活力を社会の活力へ)では、2011年3月の東日本大震災を受けて「女性の活
力を最大限活かした日本復興プロジェクト(略称:結結プロジェクト)」を
立ち上げ、様々な支援活動を行ってきました。
ここから生まれたプロジェクトの一つが、ふくしまオーガニックコット
ンプロジェクトです。震災と原発事故の風評被害に苦しむ福島で綿を栽培
し、製品化して地元の就業と現金収入の機会の場を確保しようというもの
で、昨年からJKSKが運航しているボランティアバスには、私も何度か参加
させて頂いています。
大和田さんも毎回参加され、他の参加者と一緒に汗を流されています。
さらに大和田さんは、総務省「緑の分権改革」事業の関連で宮城県大崎
市の蕪栗沼・ふゆみずたんぼプロジェクトや、富山県南砺市におけるプロ
ジェクトにも携わっておられるほか、最近は被災地の「巨大防潮堤」問題
にも関わっておられます。
これらの活動を通して大和田さんが進めようとしているのは、都市と農
山村との交流による持続可能な社会づくりです。交流のベースにあるのは
信頼関係。それを大和田さんは「縁需」と名付けられました。
食べものもエネルギーも、顔の見える人から購入するのが良いと大和田
さんは強調されます。
このように既に多くの実績を上げられ、多忙に全国を飛び回っておられ
る大和田さんですが、今春からは大学院の博士後期課程に通われているそ
うです。
大和田さんの柔軟な発想と行動力、それに向上心には、いつも学ばせて
頂いています。
参考
LOHAS(ロハス)& サステナブルスタイル
認定NPO法人 JKSK女性の活力を社会の活力に
『アグリ・コミュニティビジネス−農山村力×交流力でつむぐ幸せな社会』
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1280-4.htm
—————————————————————-
◆ 情報ひろば
食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各
種イベントの開催情報等をお知らせします。
—————————————————————-
▼ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報
○ 「ふくしま再生の会」報告会 @ 東京大学 (05/30)
東京の研究者等の有志ボランティアによる活動3周年を記念する報告会。
飯舘村の方たちと協働して様々な活動を続けられています。
http://food-mileage.jp/2014/05/30/
○ 「協同研」24回目の総会 (06/03)
埼玉・浦和を拠点に活動するNPO「生活文化・地域協同研究会」の24回
目の総会。自治体問題研究所の池上洋通先生からの記念講演も。
http://food-mileage.jp/2014/06/03/
○ ふくしまオーガニックコットン・ボラバス2014(第1回) (06/05)
今年もJKSK(女性の活力を社会の活力に)が主催するボラバスが、福島
・いわきに向けて出発しました。
http://food-mileage.jp/2014/06/05/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
○ 2014年度日本フードシステム学会大会
日時:6月14日(土)9:30〜15日(日)17:00
場所:東京大学農学部
主催:日本フードシステム
(詳細、お問合せ等↓)
○ お茶づくり体験&大豆の苗植え」
日時:6月14日(土)〜15日(日)9:15現地集合(日帰りも可)
場所:山梨県上野原市西原
主催:しごと塾さいはら
(詳細、お問合せ等↓)
http://shigotojyuku-saihara.jimdo.com/
○ 共奏キッチン♪ 〜ポコ・ア・ポコ農園スペシャル☆〜
日時:6月14日(土)第一部13:30〜15:30、第二部16:00〜21:00
場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢2-32-11)
主催:共奏事ム局
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/504397096327022/
○ 第45回想続塾「悲しみを生きる力に〜愛する家族を亡くしたあなたへ〜」
日時:6月23日(月)14:00〜16:00
場所:赤坂区民センター(東京都港区赤坂4-18-13)
講師:入江杏氏(ミシュカの森)
主催:一般社団法人日本想続協会
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/553379471446685/
○ 杉本鉞子『武士の娘』から異文化交流を考える会(第1回)
日時:6月23日(月)19:00〜20:45
場所:東京都障害者福祉会館(港区芝5-18-2)
(詳細:追ってFBに投稿します。)
○ IJUcafe in 東京 <そうだ!田舎へ行こう!>
日時:6月28日(土)14:00〜17:00
場所:品川宿交流館(品川区北品川2-28-19)
企画・運営:リアルマック(鳥取県倉吉市)
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/741497125873033/
○ 「国立文庫」出版記念パーティー de おかんめし。
日時:6月29日(日)13:00〜21:00
場所:くにたち公民館
主催:おかんめし。
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/243137045887873/
—————————————————————-
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方
の部分は、全て筆者の個人的なものです。
* 次号No.47は6月27日(金)(和暦 水無月朔日)の配信予定です。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて
頂いています。いつもありがとうございます。
================================================================
F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
================================================================
◆ 発行者:中田哲也
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/