環境物理学からみた里山資本主義

 2014年10月11日(土)。
 先週に続いて台風が接近しているそうです。しかも今回の19号はかなり大型とのこと。しかし土曜日の段階では、その予感もない好天です。
 午前中は、自宅近くに借りている市民農園へ。
 綿は、たくさんのコットンボールが連なり重そうです。毎週、収穫できています。
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 玉ねぎは緑濃い芽が伸びてきました。残り少なくなってきたインゲンは、カメムシ達のご馳走のようです。
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 2月の日本橋でのイベントで頂いてきた亀戸大根、自家採種した伝統大蔵大根(元は野口種苗研究所から購入)の種を先週、播いたのですが、かわいい芽が出てきました。
 落花生も地面を掘り返してみると、だいぶ肥っていました。これはもう少し我慢。
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 昨シーズンに植えた長崎・雲仙コブ高菜と山形・温海かぶの種を採っておいたのを、この日、播きました(いずれも、元は野口のもの)。
 もっとも、畑の脇には、こぼれ落ちた種から既にたくさんの芽が出て育ちっています。
 少々、摘み取ってこの日のお昼ご飯に。
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 午後から都心に向かいました。
 文京シビックセンター地下1階「アカデミー文京」で14時から開催されたのは、市民科学講座「環境物理学からみた里山資本主義」。
 主催はNPO・市民科学研究室(市民研)。市民の問いかけから出発し、「市民にとってよりよい科学技術とは」を考え、提言するNPOです(私も少し前から会員です)。
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 市民研代表の上田昌文さんの進行・コーディネートにより、定刻に開会。参加者は20名ほどです。
 この日の講師は、理学博士の加納誠先生(東京理科大学)。上田先生とは、昔から家族ぐるみの付き合いとのことです。
 
 「環境物理学」という言葉は初めて聞いたのですが、太陽からの熱物理学(いわゆるエントロピー論?)を基本として、地球システム、物質循環・生命系、エネルギー・資源、廃棄物・環境汚染・放射能、環境教育等を対象(キーワード)とする学問のようです。
 その加納先生は、藻谷浩介氏の『里山資本主義』(2013、角川書店)を読まれて非常に共感され、ご自身が経験・実践されてきたことと多くの共通点も見出されたとのこと。
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 加納先生は、東京から山口東京理科大学(山陽小野田市)に赴任された際に、四季の自然の中で、お年寄り達を含む人との交流を通じ、都会での生活にない豊かさを実感されたそうです。
 そして、家の前の休耕田を借り受けてゼミ生たちと稲作を始めたとのこと。無謀と言われながらも地域の人たちが助けてくれ、最初はあまり興味を示さなかった学生達の多くも手伝ううちに興味を持ったそうです。 
 これも、「環境科学リテラシー」実践の一環とのこと。また、地元自治体等とも連携し、「地球環境緑蔭塾」も立ち上げられたそうです。
 一方、3.11以後、科学者の専門知に対する信頼性が失われつつある現状の下、身近な環境問題についても、今、ここまでは言えるということを提供することが自分たちの義務である。そして、事実の共有に基づく意思決定(Evidence-Based Decision)が必要である、と。
 例えば、人為的な温暖化はかなりの確率で起こっており世界的な異常気象を招いている。数万年のスケールでは寒冷化に向かっているとも言えるが、子や孫の世代のことを考えると温暖化対策は必要というお考えだそうです。 
 
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 そして、加納先生が強調されていたのは「環境科学リテラシー」の確立が必要ということ。
 そのためには専門家と市民社会との間での科学技術コミュニケーションを構築することが重要であり、市民参加型の自治体との協働することは、有効な施策にも発展させていく可能性が高いことを、ご自身の経験を踏まえて説明して下さいました。
 そして講演の最後には、難しいことばかり話してきたが、と前置きされ、
 「日の出とともに起き、日の入りとともに帰宅し、生産者の見える安心・安全・新鮮な食事で家族団欒を過ごすという当たり前の生活を求めていくことが一番幸せなんだということが当たり前の結論。それを求めていくための身近な方策は、里山資本主義や環境物理学から少しずつ見えてくるであろう」というものでした。
 後半は、参加者が質問や意見、自分が実践していること等について付箋に書き出し、1人ひとりが簡単に発表した後、加納先生を含めて意見交換するというワークショップ形式です。
 上田先生が付箋を受け取ってホワイトボードに貼っていき、テーマを整理しつつ、さらに関心や興味や引き出していきます。
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 蓄電池の普及と電線の地中化、ごみや歩行振動等による発電、衣類の自給など様々な話題が出されました。参加者も、埼玉県の三富新田で環境教育を実践されている方、有機食品の宅配会社にお勤めの方、下水道や微生物の関係が専門の方など、環境問題に実際に関わっておられる方もおられます。
 自由な意見交換の中で加納先生からは、自治体との連携が必要だが大都市では難しい。首長や担当者の理解があれば、地元自治体と協働することで専門家の提言はかなりの部分を活かすことができる。
 しかし、学者や専門家だけでは力不足。市民が後ろにいて、草の根的に進めていくことは可能。労働組合やJAの役割にも期待できる。
  『里山資本主義』には、地域で豊かな生活をしている事例がたくさん紹介されている。
 これが直ちに「マネー資本主義」にとって代わるわけではないが、世の中を変えていく潜在力はある。一つずつ、実践例を示しながら進めていくしかない。
  
 環境物理学はこれからの学問。専門的な議論と一般市民との接点を探っていきたい、と締めくくられました。
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  『里山資本主義』は大きなブームとなり、循環型社会の実現に向けた様々な議論が巻き起こっています。しかし、それらの議論の多くは、経済学的な観点から、あるいは環境教育やライフスタイル面からのものに限定されているように思われます。
 これらももちろん重要な観点ですが、さらに、物理学など自然科学の観点から循環型社会実現の必要性が証明され、さらに分かりやすく一般市民にも浸透していくこととなれば、非常に意義の大きいことと思われます。
 まずは私も、ネットで閲覧できる加納先生の論文(例えば「環境物理学と熱物理」)から読んで勉強してみようと思っています。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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