年が明けたかと思うと、あっという間に1月は過ぎてしまいます。
2015年1月31日(土)は、前日の雪模様から、風は強いものの晴天に恵まれました。
東京・国立市にある谷保駅(JR南武線)に下りたのは14時30分ころ。
北口を出て踏切を渡り、狭い路地を進むと、左手に「みんな畑-コミュニティガーデン」という看板。地面は雪で被われています。
さらに進むと、その先にみえてきたのが「やぼろじ」。
江戸時代からの旧家が10年以上空き家になっていたのを、地主さんや地域の方達が協力して大規模改修。現在はカフェ、工房、ギャラリー等が入居する地域に開かれた拠点となっています。
随時、様々なイベントも開催されています。
この日、開催されるのは、「誰もが持つ生きる力を引き出す食育セミナー・おいしい元気を食べよう育てよう」。
中に入ると、木造住宅の懐かしい雰囲気。広間には椅子と座布団が並べられ、すでに多くの人が集まっています。
15時に開会。
まず、主催者である母めし健康食堂(株)やまもり代表の大久保久江さんから挨拶。
民間会社の経営幹部だった頃、従業員達に安心できるご班を提供したいと社員食堂を始められたのが、食との関わりのきっかけだったそうで、現在は、「『母めし』で社会を元気に」をスローガンに、社員食堂やレストランの設営・運営のコンサルタント事業を展開されている方。
やぼろじでは、「やまもりカフェ(母めし健康食堂)」を運営されています。
大久保さんからは、「定員を上回る参加者に自分もワクワクしている。講師の吉田さん、則久さんと出会い話を伺った時、大きな感動を頂いた。その感動を、今日は皆さんと分かち合いたい」等と挨拶。
続いて、同じく主催者の東京NEO・FARMERS(ネオファーマーズ)の大塚弘さんから挨拶。
非農家出身の新規就農者、就農を準備している人たちの集まりで、月1回、ここで勉強会を開催されているそうです。
この日のセミナーは2部構成。
前半の講師は、管理栄養士・食育指導士(医療法人社団岐山会・篠原記念病院)の則久郁代先生です。香川・丸亀市から来られました。
テーマは「子ども達を元気にするための食生活」。
現在、低体温の子ども達が増えているとのこと。体温が下がると体内酵素の活性が低下し、様々な病気の原因となるそうです。
香川県のある小学校では、生徒の30%以上が低体温だったのが、給食を変えることによって体温が上がったという事例を紹介して下さいました。
「核家族化の進行等を背景に、子ども達の食生活は大きく変化」
「野菜が不足する一方で、砂糖や添加物は過剰摂取。すぐキレるなど、ストレスと上手に付き合えない子どもが増えているのは、ミネラル不足など現代版栄養失調が原因と考えられる」、とのこと。
「市販の加工食品や総菜はミネラル不足。たまに食べるのはいいけれども、いつもいつもにならないように気をつけましょう」、と。
他にも、旬によって野菜の栄養価は全然違うこと、ファイトケミカルが含まれる野菜の茹で汁や、だし、いりこを摂ることの重要さ等についても説明がありました。
さらに、子ども達を元気にするためには「まず、しっかり噛もう」。
そして「親が一緒に落ち着いて楽しく食べることが、一番大事。一日一食でも、家族団欒を」と訴えられました。
則久先生、明日は日野市でご講演だそうです。
先生が関わっておられる香川県での取組は、NHK全国放送等でも取り上げられるなど注目されています。
休憩時間には、やまもりカフェの皆さんが豚汁を出して下さいました。
食材には、ネオファーマーの皆さんの野菜も使われているそうです。
ホットカーペットを敷くなど暖かくして下さっていますが、まだ庭に雪が残るなか、古い木造民家は日が傾くに連れて肌寒くなってきました。
熱々の豚汁の美味しさが、腸と心に沁み込んできます。
ところでこの日のセミナーには、子どもを連れたお母さん達もたくさん参加されていました。
小さな子ども達も、講演中は静かに一人遊びしていたりして、むずかって大声で泣き出すような子どもがいなかったのが印象的でした。
さて、後半に講師として登場されたのは、吉田俊道さん。
NPO法人「大地といのちの会」(長崎・佐世保市)代表として、生ごみリサイクルによる元気野菜づくりと、食改善と元気からだづくりの活動に取り組んでおられる方です。
個人的には、10年近く前、九州農政局在勤中に食育関係の協議会の委員になって頂いたのがご縁で、その後も、東京に来られた時など何度かご講演を聞かせて頂いています。
この日は、前半の則久先生の話を受けて栄養素の話から始まりました。
「栄養素をグループ分けすると、活動エネルギーの素となる炭水化物や脂肪、体の材料となるタンパク質やカルシウム等のほかに、生命の部品となるものがある。微量だけれども、大事な、ふだん忘れているもの。それが微量ミネラル、ファイトケミカル、微生物など。科学的には十分証明されていないものもある」
「例えば、クロレラはCGF(クロレラ・グロス・ファクター)という生理活性物質を含んでいる」
「熊本県のある保育園では、生ごみリサイクルで元気野菜作りを始め、給食を見直したところ、インフルエンザにかかる子どもが減り、感染もしにくくなった。たくあんの古漬けなど、長期発酵食品は体にいい」
「お腹にいる微生物のお陰。保育園では、お腹を手で回すようにさすって、微生物に感謝している」
「最近、福岡のある大学と共同で、雑草を取り除かずに土に埋めてシートを掛けておくと、団粒構造を持ついい土ができるという実証研究を始めている。雑草も敵ではない」
「微生物(菌ちゃん)の力は素晴らしい。微生物は弱ったものだけ食べて分解し、生命を蘇らせる」
「虫も健康な野菜にはつかない。本当に美味しいニンジンには、キアゲハは来ない。健康な野菜にはファイトケミカルが多く、虫は食べることができない。
微生物も虫も、敵ではない。生物界の奇跡。宮崎駿の『風の谷のナウシカ』にも描かれている世界」
「私たちは大きな循環の中で生かされている。自分達が元気になるためには、地球が元気になることが必要。
生きものさんは、毎日を必死で生きている。野菜が生きようとする力、全力で子孫を残そうとする意志を感じることが必要。本気で食べものさんに感謝して食べると、人生が変わる」
「命を頂くということを、それぞれが子ども達に伝えていって欲しい。
そのためには、私の話の受け売りではダメ。庭でも小さな畑でも、プランターでもいい。自ら実践すれば、全ての生きもの、命が循環していることを実感できる」
最後は、参加者の皆さんが行動するよう、強く訴えられました。
いつもながら、パワフルな講演です。
しかも内容は、お聞きするたびに「進化」しています。何より実践に裏付けられ、科学的な分析やデータ収集もされているだけに、説得力があります。
お母さん達も熱心にメモを取っておられました。
また、突然、マイクが向けられ質問されるので、聞いている方も油断はできません。
ちなみにこの日も、下ネタが何度も爆裂。
そのたびに笑いに包まれ、気がつくとあっという間に1時間半が過ぎていました。
20名ほどか残り、吉田先生、則久先生を囲んでの懇親会。
やまもりカフェのスタッフの方が手づくりの料理を出して下さり、ビールで乾杯。美味しいお味噌汁や玄米ご飯も。
東京ネオファーマーズの皆さんも残られ、色々と話を伺いました。
就農している若いご夫妻、中学生の頃から農業が夢で研修中という女性など。地元の人に食べてもらいたいと、小麦作り体験会を開催されている方も。
江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座の受講者の方もおられました。
東京は、農業をするには土地条件等で不利な面がある一方、近くに消費者がたくさんいるというメリットもあります。様々な苦労をし悩みながらも農業に取り組んでいる若い方達、就農を目指して研修されている方達の話を直接伺うことができたのは、貴重な経験でした。
他にも、日野で生ごみを活用したコミュニティガーデンの活動に取り組んでおられる方、国分寺で発酵カフェをされている方など、吉田さんのご縁で色々な方と知りあうことができました。
気がつくと21時を回っています。吉田さんは明日は新潟で講演とのこと。
元気野菜作づくり取組が全国的に拡がっていくに連れて、吉田さんご自身は、ますますご多忙になっている様子です。ぜひ、お身体には気をつけて頂きたいと思います。
そして今日の吉田さんの 「自分一人では微力。ぜひ、皆さん、できることから実践して、回りに広げていって下さい」との言葉を、自分もしっかりと受け止めたいと思います。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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