2015年2月15日(日)、日射しは暖かいものの風が冷たい一日は、久しぶりに東京・高円寺へ。
JR高円寺駅北口にほど近い庚申通り商店街は、いつもの賑わいです。
そこに見慣れない看板が。「図書館始めました」。えっ?
見たことのあるタヌキのイラスト付きです。
ここは、魚料理専門店うおこう。
ここは、魚屋さん直営の居酒屋さんなので刺身などは絶品。ご主人の郷里・新潟の地酒なども美味しく頂ける店です。
女将の松井つるみさんは、とにかく活動的な方で、様々なことに興味を持ち実践されています。
その一つが、リブライズ。カフェなど街に点在する本棚を図書館にし、本の貸し借りができるようにする画期的なシステムです。
かねて、うおこう店内の本棚もこのシステムに登録されていることは存知あげていましたが、とうとう店先に看板まで設置されたようです。
その松井さんは、江戸東京野菜の普及にも熱心に取り組んでおられます。
この日開催されたのは「うおこう寄席-江戸落語を楽しみながら江戸東京野菜を食べよう」というイベント。これまでも何度か開催されています。
開演20分ほどに到着。2階の広間の壁には、江戸東京野菜関連のパネルや古布で作った塩引き鮭が展示されています。この時点で20名ほどが集まっています。
結局、30名ほどで部屋は一杯になり、定刻の18時に松井さんの挨拶で開演。
登場されたのは、立川吉笑(たてかわきっしょう)さん。
まだ5年目とのことですが、最近はテレビやラジオへの出演、全国ツアーなど、活動の幅が大きく広がりつつある新進気鋭の噺家(はなしか)さんです。
高円寺に住んでおられること、うおこうに来るたび松井さんから江戸東京野菜の落語を創ってくれとせがまれたこと(「大根屋騒動」という演目を創作されました。)等を、面白おかしくマクラにして楽しませてくれた後、披露されたのは「十徳」。
オーソドックスな古典の演目も、勢いのある吉笑さんが演じると一味違った面白みがあります。
代わって高座に上がられたのは、江戸東京・伝統野菜研究会の大竹道茂さん。
江戸東京野菜の復活・普及の第一人者の方です。
この日は、ネクタイを締めてスライドを使って講演をされるという普段のスタイルと異なり、早稲田カツオ祭り(気仙沼カツオ×早稲田ミョウガ)のシャツに祭り半纏と言う姿。「下足番のよう」と謙遜されていましたが、なかなかお似合いです。
三河島菜や亀戸大根を手に、江戸東京野菜の一つひとつにある「物語」等を紹介して下さいました。
休憩を挟んでの吉笑さんの二席目は、上方落語の大御所と九官鳥にまつわる小咄に続いて新作の「ぞおん」。
一流のスポーツ選手が集中状態になって超人的なパワーを発揮することを「ゾーンに入る」と言うそうですが、定吉が初めて奉公に上がった先の番頭さんが「ゾーンに入っている」という設定の、何とも不思議な噺です。
珍しく関西弁(吉笑さんは京都出身)での語りということもあり、楽しませてもらいました。
吉笑さん自作の創作落語、ますます磨きがかかっています。
引き続いての懇親会では、江戸東京野菜がふんだんに供されました。
亀戸大根と金町小蕪の煮物。練馬大根のたくあんなど。
大竹さんの話を聞いた後で頂くと、美味しさも格別です。
ミョウガタケは、ミョウガに土を盛るなどして軟化栽培したもの。始めて頂きました。シャキシャキとした食感です。
三河島菜と栃尾の油揚げの煮物。
伝統小松菜(後関晩生)は、露地ものとハウスものとの食べ比べも。
もちろん、定番のお刺身の舟盛。何種類もの江戸東京野菜と塩引き鮭の鍋。
香川の管理栄養士・則久郁代先生から頂いたという人参も出して下さいました。
則久先生とは、先日の国立での菌ちゃん食育セミナーでお話を伺ったばかりなのですが、いつの間にか、松井さんも繋がっておられたようです。
日本酒は、朝日酒造(新潟・長岡)の「久保田」と、私の地元でもある豊島屋(東京・東村山)の「十右衛門」など。
宴の半ば、それぞれ参加者から自己紹介など。
吉笑さんのファン(追っかけ)の方がたくさん参加されています。江戸東京野菜のことは知らなかったという人も。一方で、江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座の関係の方も多数参加されていました。
中には、絶滅したといわれているニホンオオカミの鳴き声の録音を聞かせて下さった方も。
吉笑さんの知り合いという、岡大介さんがサプライズで飛び入り参加。
缶に3本の弦を張った三線を弾きながら、「平成カンカラ演歌」を披露して下さいました。なかなか面白く、改めてじっくり聴いてみたいと思う芸です。
気がつくと22時を回っています。心も体もほかほか。
大竹さん始め関係者の皆さんの尽力で江戸東京野菜はかなり知られるようになってきましたが、野菜等への関心が特に高くない一般の方達への浸透は、まだまだ十分ではありません。
さらに普及を進めていくためには、何といっても、まず食べてもらうこと。それに、食や農業とはちょっと違う切り口からの働きかけ(例えば演芸など)が有効です。
その両方を一度に楽しめるのが「うおこう寄席」。次回の開催が楽しみです。
もっとも主催者の松井さん、今回も懇親会の準備などで肝心の落語や大竹さんの話は聴けずじまい。ご自身が一番聞きたかったでしょうに、毎度のことながら申し訳ないような。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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