F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.065

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇

     No.65; 2015.3/20(金)[和暦 如月朔日]発行

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 和暦では如月(きさらぎ)に入りました。明日は春分の日です。

 草が萌え、木々が一斉に芽吹く季節の到来です。もっとも、杉花粉も

最盛期ですが。

 

 時の流れを体感するため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と十五

日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は如月十五日の配

信です。

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  F.M.豆知識

 食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、

あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げて

いきます。

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 今回は、前回に引き続きエンゲル係数を取り上げます。

 おさらいですが、エンゲル係数とは、消費支出に占める食料費支出の

割合。一般に食料は必需財的な性格が強いため、仮に家計が厳しくても

節約するには限界がある一方、生活が豊かになるにつれて「ぜいたく品」

に対する支出が増えることから、エンゲル係数は低下していきます。

 これが「エンゲルの法則」です。

 

 前回は総務省家計調査のデータから、戦後、経済が高度成長を続ける

中でエンゲル係数は大きく低下してきたものの、近年は横ばい、さらに

は上昇に転じつつあることを紹介しました。

 そして、エンゲルの法則に従うなら、私たちの生活は貧しくなりつつ

あると言えるのでは、と問題提起しました。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/22_kakei.pdf

 

 今回は同じデータを、別のグラフの形でお示しします。

 横軸に家計(農林漁家世帯を除く2人以上世帯)の消費支出全体の金額

1月当たり平均)を、縦軸にエンゲル係数をとって描いたグラフが図23

です。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/23_engel.pdf

 

 これによると、全体の消費支出額は、ニクソンショック(1971)、2

のオイルショック(197379)、バブル崩壊(1991)等に見舞われつつ

も、1993年までは一貫して増加しています。

 そしてエンゲル係数も、多少のデコボコはあるものの低下傾向で推移

してきました。エンゲルの法則どおり、グラフは右肩下がりでした。

 ところが、消費支出額は1993年をピーク(33.5万円/月・世帯)に減少

に転じてしまいます。一方、エンゲル係数は低下を続けました。つまり、

1993年から2005年の間は、エンゲルの法則に反する特異な動きがみられ

たのです。

 

 そして2005年以降は、再びエンゲルの法則が当てはまることになりま

した。ただし、かつての動きとは逆に、消費支出額が減少する中でエン

ゲル係数が上昇しているのです(左肩上がり)。

 

 やはり、私たちの生活は貧しくなりつつあるのでしょうか。

 それを確かめるためには、食料費支出の内容を、もう少し詳しくみる

必要がありそうです(次号に続く)。

 

[参考]

 総務省『家計調査』(5.長期時系列データ()、農林漁家世帯を除く結果)

  http://www.stat.go.jp/data/kakei/longtime/index.htm

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

  られる方達を紹介させて頂いています。

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 東京電力福島第一原子力発電所の大きな事故により、現在も多くの

方々が避難を余儀なくされ、福島県産農水産物に対する「風評被害」も

払拭されていません。

 

 あまりに大きな災厄であるだけに、ともすれば、できれば忘れてしま

いたい、考えたくないと思うこともあります。

 しかし、福島第一原発の事故処理作業は現在進行中であり、今も、多

くの作業員の方々が過酷な労働条件のもとで働いておられます。

 

 その原発作業員の方々への支援活動を続けておられるのが、吉川彰浩

さんです。

 吉川さんは1980年茨城県の生まれ。東電学園(注:東京電力が運営し

ていた職業能力開発校で2007年に閉校)高等部を卒業後、東京電力(株)

に入社。福島第一原子力発電所に配属され施設建屋の保守管理・現場監

理に従事された後、2008年に福島第二原子力発電所へ転勤し、ここで20

11年の東日本大震災に遭遇しました。

 第二原発も強い揺れと津波で大きく損傷しましたが、懸命の作業によ

り第一原発のような過酷な事態からは免れることができたそうです。

 

 ご自身も、住んでいた浪江町から避難された吉川さんは、作業員の

方々の過酷な労働環境、東電社員等に対する心無いバッシング等を目の

当たりにする中、20126月に東京電力を退職し、作業員の方々を外部か

ら支援する活動を始められました。

 その後、201311月には、アプリシエイト・フクシマ・ワーカーズ

AFW)を設立。

 

 吉川さんの活動は、当初の作業員の方々に支援物資(防寒機能肌着や

携帯懐炉等)を送るという直接的なことに加え、現在は、原発事故対応

の現場の一次情報を発信することに重点が置かれています。

 

 先日(228日)には、東京・両国の回向院でも講演会が開催されまし

た。

 吉川さんによると、現場の労働環境は、被災当初に比べれば全体とし

て線量が大きく低下するなど大幅に改善しているとのこと。しかしなが

ら、線量の高い区域では現在も作業服やマスクの着用が義務付けられ、

暑さ寒さをしのげず、簡単に休憩も取れないという状況。

 また、民宿やプレハブ等に住み、片道23時間もかけて通勤している

など、過酷な労働環境は変わっていないそうです。

 

 さらには、廃炉には40年かかるといわれているが、そもそもデブリ

(溶け落ちた核燃料)を回収するためには新たな技術開発を待つ必要が

あるなど、厳しい状況が続いているとのこと。

 最近、新たに汚染水が外洋に流出していることも明らかになりました。

 

 吉川さんが強調されていたのは、マスコミやネットの2次情報ではなく、

自ら最新の情報を入手することの重要性でした。つまり、良いことも悪

いことも自分で確認して、「正しく恐れる」ことが必要とのことです。

 

 そのため、吉川さんは、実体験に基づく情報をAFWのウェブサイトや

SNSで発信されているほか、全国各地での講演会で直接伝え続けられてい

ます。

 この一環として、一般の民間人による福島第一原発視察の取組も始め

られました。まずは地元・福島の方達を対象にして、216日に実施され

たそうです。

 

 現在の吉川さんとAFWの活動は、これら原発作業員への支援と原発関連

情報の発信に留まりません。

 「次世代に託せるふるさとを創造する」ことを活動の理念として、地

元の方々を対象とした廃炉と向き合うための学習支援、旧避難地域への

帰還や定住人口増加に向けた様々な活動に取り組んでいます。

 例えば福島第一原発から20kmほど南にある広野町では、地域の方達と

協働して、オリーブを植えて里山を再生するという取組も行っておられ

ます。

 

 私たちの社会は、過酷な原発事故を起こしてしまいました。

 長期にわたる収束・廃炉作業を確実に進めていくことが、福島・浜通

りのみならず、将来の私たちの社会を創っていくための前提条件である

という現実に、目を背けてはなりません。

 さらには、過酷な労働環境の下で今日も地道な作業に取り組んでおら

れる作業員の方々に敬意を表し、感謝の念を忘れないことも、私たちの

義務といえます。

 

(参考)

 アプリシエイト・フクシマ・ワーカーズ(AFW

  http://a-f-w.org/

 

 吉川彰浩さんブログ(ハフィントン・ポスト)

  http://www.huffingtonpost.jp/akihiro-yoshikawa/

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 ささやかな東北への旅 (03/08)

  http://food-mileage.jp/2015/03/08/

 

 東日本大震災を忘れない3.11のつどい(新宿にて) (03/13)

  http://food-mileage.jp/2015/03/13/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 第6回「脱成長ミーティング」公開研究会−置賜自給圏構想−

 日時:321日(土)13:0017:00

 場所:ピープルズ・プラン研究所(メトロ江戸川橋駅
徒歩5分)

 講師:菅野芳秀さん

 主催:脱成長ミーティング

 (詳細、お問合せ等

  http://www.peoples-plan.org/jp/modules/news/article.php?storyid=471

 

 2015年東京ゴマ01スタート〜今年はへんぼりだよ!全員集合

 日時:321日(土)10:30 JR武蔵五日市駅集合

 場所:東京・檜原村人里(へんぼり)地区

 主催:グリーンスマイル

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/874491425947332/

 

 第二回『落語&ジャズ』の会

 日時:321日(土)13:0015:00

 場所:SOL BIANCA(渋谷区桜丘町8-17 シャレー渋谷)

 主催:SOL BIANCA

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/604193216380346

 

 共奏キッチン♪ 52@自由が丘シェア奥沢

 日時:323日(月)18:0022:00

 場所:シェア奥沢(世田谷区奥沢2-32-11

 主催:共奏キッチン

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1566170943630494/

 

 神田香織 ライブでKODAN ! フクシマを忘れない

 日時:326日(木)18:30

 場所:阿佐ヶ谷LOFT A(杉並区阿佐谷南13616B1

 主催:AMプロジェクト

 (詳細、お問合せ等

  http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/30323

 

 第13 聞き書き甲子園フォーラム

  −「聞く」ことからはじまる。私たちの一歩−

 日時:328日(土)

    10:0012:20(映画上映)13:1516:30(フォーラム)

 場所:東京大学弥生講堂一条ホール(メトロ東大前駅
徒歩1分)

 主催:認定NPO法人共存の森ネットワーク

 (詳細、お問合せ等

  http://www.foxfire-japan.com/program/forum.html

 

「再エネ×金融×電力自由化」シンポジウム

  〜ドイツとカナダ・オンタリオ州の事例から見る日本への示唆〜

 日時:328日(土)13:0016:20

 場所:FORUM8 663会議室(渋谷区道玄坂2-10-7 新大宗ビル)

 主催:国際青年環境NGO A SEED JAPAN

 (詳細、お問合せ等

  http://www.aseed.org/2015/02/3271/

 

 自然と共生する農業−ネオニコチノイド系農薬から考える

 日時:42日(木)18:3021:00

 場所:四谷地域センター11
集会室2+3(メトロ新宿御苑前駅
徒歩5分)

 登壇:岡田幹治さん(ジャーナリスト)、

    菅野正寿さん(福島県有機農業ネットワーク)

 主催:ソーシャル・ジャスティス基金(SJF

 (詳細、お問合せ等

  http://socialjustice.jp/p/20150402/

 

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* 「ホント花粉症、何とかならないかな」

  「悲願(彼岸)だね。春分だけに」

 

* 次号No.66は、43日(金)[如月十五日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997

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  発行者:中田哲也

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