坪枕 -坪山を登りながら、こう考えた-

坪山を登りながら、都会と農村について考えた。
ジニを計れば格差が明らかになる。市場効率に掉させばさらに拡大する。限界集落を維持しようとすると窮屈だ。とかくに都会と農村の問題は難しい。
今の格差社会を作ったものは神でもなければ鬼でもない。政治家でもない。向こう三軒両隣のただの有権者である。ただの人の世が住みにくいからとて、人でなしの国はなお住みにくかろう。
2015年4月26日(日)、山梨・上野原市西原(さいはら)の坪山を訪ねました。
前回、予定していたのが生憎の天候で断念(雨の日の活動も楽しかったです)したのを、幹事のRさん発案によるリベンジ企画です。
幸い、この上ない好天に恵まれました。
JR上野原駅からのバスは50分ほどかけ、9時20分頃にさいはらに到着。
びりゅう館は、都心ではすっかり終わってしまった桜に、まだ包まれています。
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新緑の中で水車が回っています。
館内ではワラビなどの山菜や野菜、炭などが販売されています(すみこさん、ワラビ美味しかったです!)。
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しごと塾さいはら」で使わせて頂いている畑へ。
前回、植えたジャガイモの芽が出ていました。
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渓流沿いの道から登山道に入ったのは、10時30分頃。
山はまさに春のよそおい、笑うがごとく。
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坪山の魅力は、たくさんの花たちが目を楽しませてくれることです。
ところが道中はすでに散っており、遅かったかなと残念に思いつつさらに登っていくと、山頂近くになって光景も気持ちも一変!。
お目当てのヒカゲツツジの群落が、待っていてくれました。
清楚な薄黄色の花は○○さんの面影です(注:○○には、好きな人の名前を入れて下さい)。
紫色は、ミツバツツジ。
時ならぬ4月の雪で多くの花たちが被害を受けたそうですが、何とか咲いて待っていてくれました。
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たくさんのイワカガミも出迎えてくれました。
可愛らしいピンク色の花は、つつましやかに下を向いて咲いています。
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山頂近く、急坂が続きます。
坪山ハイキングコースは距離は大したことないのですが、ザイルをつかんで登るところもあり、なかなか侮れません。
ここまで和気あいあいとおしゃべりしながら登って来ましたが、次第に口数が減り、冒頭のような思索(妄想?)に落ち込んでいきます。
そして13時20分、ついに山頂に到着。標高1102.7メートル。
絶景を前に、それぞれ持参のおむすびなどの昼食。日射しは暖かく、気持ちのいい風に吹かれていると眠たくなります。
春は猫はネズミを捕ることを忘れ、イベントへの集合時間を忘れる人もいます。
私は、自分の魂の居所さえ忘れつつあるような気分でした。

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山頂からは、うっすらと富士山の稜線も見えました。
幹事のRさんが企画したからこそ見られた素晴らしい眺望です。ナイス企画に感謝!
もっとも景色というものは、「腹の足しにもならぬ、月給の補いにもならぬ」と漱石が言う通り、その価値はおカネには換算できません。
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40分ほど山頂の景色を楽しんだのち、下山へ。
下るだけではなくアップダウンがあります。山だけではなく、次第に膝も笑い始めます。
初めて坪山に登った4年前、この辺りで「しごと塾さいはら」の主要メンバー・Sさんが話してくれたことを思い出しました。
山道で急に足がだるくなって歩けなくなるのは、妖怪・ダルの仕業だそうです。
そのSさん、このたびケッコンして移住される和歌山の山間部はダルの本場。やはりSさんはダルの仲間だったことが判明。
たしかにこの辺り、妖怪がいそうな奇妙な形をした巨木が並んでいます。
今は穏やかですが、風や雪が厳しいのでしょう。

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足元には、気をつけないと見逃しそうな可憐な花たち。ヒトリシズカやイカリソウ。
「ソースがないと・・・」とギャグを言ったのですが、誰からも反応はありませんでした(涙)。
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次第にバイクや車の音が大きく聞こえるようになり、15時30分頃、人の世(現実世界)に戻ってきました。
西に傾きつつある陽に照らされた向こう側の山肌が、美しく輝いています。
雑穀名人・Nさん宅に立ち寄り。庭先にタカキビが干してありました。
不便で厳しい面もあるのでしょうが、豊かな山村の生活を送っておられるように感じられます。さいはらには、そのような生活を求めて、都会から移住された若い方もいらっしゃいます。
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同行者・Hさんの車に同乗させて頂き、さいはらに分かれて小菅村へ。
3月末にオープンしたばかりの道の駅は、木材をふんだんに使った素敵な建物です。
この日の締めくくりとして温泉を堪能。むろん、那古井で漱石が入ったような混浴ではありません。
素晴らしい一日でした。
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翌27日(月)からは、いつもながらの「人の世」の日々が戻ってきました。
夜は久しぶりに神田・なみへいへ。
偶然にも小菅村と飛騨高山市の特集でした。
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よちよちヤマメの唐揚げ、なみへいオリジナルのわさび鍋などを美味しく頂きつつ、昨日の山梨の光景と空気を思い出しました。結果、月曜日から呑み過ぎ。
都心にいながら「ふるさと」を思い出させてくれる貴重な場所です。ご馳走さまでした。
「世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、くつろげて、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ」
「明暗は表裏のごとく、日のあたる所にはきっと影がさす。喜びの深きとき憂いいよいよ深く、楽しみの多いなるほど苦しみも大きい」
夏目漱石『草枕』より。
【ご参考】
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