福島復興!今だからこそ大交流会「ほんとの幸」 @ フロマエカフェ(西日暮里)

 2015年10月11日(日)。
 広尾でのヴァイオリン演奏の余韻とワインに酔った体と頭で、18時前に西日暮里へ。
 駅から歩いて3分ほどのところにあるのが from a&e café(フロマエカフェ)。
 東京朝市・アースデイマーケット週末農風と協力して9月にオープンしたばかりの「縁農カフェ」です。
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 軒先には稲穂が飾られています。
 今日のイベント関連の資料、各種書籍や雑穀等の商品も並べられています。
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 この日、18時から開催されたのは「福島復興!今だからこそ大交流会『ほんとの幸』~農業・避難・子ども・支援 それぞれの今を分かち合う交流会~」と題するイベント。
 震災から5年目(この日は、ちょうど4年と7カ月目)を迎える今も、福島県産農林水産物に対する風評が根強く残る一方で、震災の話題に対する風化という課題を抱えているなか、専門家による解説を交えながら都市での暮らし方を振り返って考えてみよう、いう趣旨です。、
 なお、一部は福島県「チャレンジふくしま若い力による風評対策提案事業」の委託事業とのこと。
 コーディネータの鈴木亮さん(東日本大震災支援全国ネットワーク福島担当、すずめの未来市主宰)の進行で開会。
 
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 冒頭、NPO法人元気になろう福島代表の根本二郎さんから挨拶。
根本さんは、新宿にある復興に向けた情報発信・交流の拠点でもある「小料理・結」のオーナーでもあります。
東日本大震災から4年7カ月、風化させる訳にはいかないと訴えられました。
 続いて国際環境青年NGO「A SEED JAPAN」の西島香織さんから、きぼうのたねカンパニー(福島・二本松市)の野菜など今日の食材等の紹介。
 さらに、調理を担当された塚越尚美さんからこの日の料理の説明。パプリカの詰め物、プチトマトのマリネ、ふくしま野菜のバーニャカウダ、ポテトとかぼちゃのセミフライ、「たなつもの」の十六穀入り玄米等のプレートが、お好みの飲み物とともに配られました。
 なお、後半には「大豆なプロジェクト」のお味噌汁も。
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 食事を頂きながら、プログラムがスタート。
第1部は「農業・避難・子ども・支援の今」と題する有識者等からの報告(以下、文責・中田)。
 最初の報告は、たなつもの屋の廣田拓也さん。
 「雑穀等の加工を扱っているが、震災後、一時売り上げが50%減。プランディングの必要性を痛感した。野菜や果実の生産者からも相談を受け、ドライフルーツを使ったサングリア、乾燥野菜を使ったピクルス等の新製品を開発し、付加価値をつけた販売に取り組んでいる。いいものを安く届けることは大事だが、生産者が再生産できなければ本末転倒。高くても納得してもらえる消費者に販売していきたい。昨年の米価下落により廃業する生産者が増えている。付加価値のつけ方を提案していきたい」
 「『食べて応援しよう』の取組は生産者にとって良かった面もあるが、通常に戻る時のことを忘れないことが必要」
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 続く報告は、セーブ・ザ・チルドレンの佐々木未央さん。
 「元高校教諭で昨年4月から職員に。福島は広い。私が直接関わったことをもとに話したい。
東日本復興支援として行っている活動は、まず、子ども達の放射能リテラシーを高めるための活動。当事者意識を持って自分の言葉で語れるようになるため、基礎知識を伝えるだけではなく、身近な場所での計測等も行っている。放射能に起因する社会問題についてのワークショップも開催。いわき市に避難している中学校では帰還についてロールプレイ等を行った。
 「大人の考えを押しつけるのではなく、一緒に学び、考えることが大切と考えている」
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 さらに、ふんばろう福島の矢内寿さん。
 「福島・楢葉町出身で現在は東京・豊島区在住。
原発事故による放射能汚染等により9万人以上の人々が避難生活を余儀なくされているなか、『ふくしま避難者の集い in 早稲田』など首都圏での広域避難者支援活動に加え、仮設住宅支援、こども支援などに継続的に取り組んでいる。無料法律相談のほか、盆踊りなど季節の行事を東京等で行ったりもしているが、参加者は減っているのが現状。借り上げ住宅など、避難先でのコミュニティの支援も続けていきたい」
 「楢葉出身者としては、正直、自分でも現在の故郷の様子を見たくない気持ちもあるが、ぜひ、福島に来て現地の様子をみてもらいたい」
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 最後の報告は、一般財団法人CSOネットワークの黒田かをりさん。
 「企業とNPOの連携という観点からは、セーブ・ザ・チルドレン等も熱心に取り組んでおられる。
 福島県の酪農業や有機農業の復興と再生に関わっている。福島県有機農業ネットワークと連携した『耕せ!ふくしまプロジェクト』は、市民・企業の有志の皆さんに種まきから収穫、加工まで、1年を通してプロセスを体験してもらい、新しい自給農園や企業ファームのありかたを考える自給プロジェクト。「だいず(大豆)なプロジェクト」もこの一つ。
 ミネロファームなど、企業グループの支援により避難者している酪農家による共同牧場も開設されている。郡山の障がい者支援センターの製作所では、岡山からデニムの端切れを送ってもらい素晴らしい製品ができている。製粉会社の技術指導により取り組んでいるスペインのお菓子が人気になっている事例も」
 「東京に住んでいる者の1人として、現地に足を運ぶことの重要さを痛感している。これからも、都市農村交流を通じた時速可能な社会づくりに取り組んでいきたい」
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 会場の何人かからもコメントを頂きつつ、後半のフロアディスカッションへ。
151011_11_convert_20151012201347.jpg まず、コーディネータの鈴木さんから、「ほんとの幸」を考えるに当たって、地域循環型社会の構築、経済成長優先主義から脱成長へ、故郷への思いの継承等の切り口が提示されました。
 その後、4~6名で自己紹介しつつ、福島との関わり、「風評」、東京からできるアクション等についてフリーディスカッション。
 福島に移住して土壌スクリーニング等のプロジェクトに携わっておられた方、会津で自然エネルギー開発に取り組んでおられる方、ふくしまオルガン堂(下北沢)の運営に関わっておられる方、環境経済学を専攻し何度も福島を訪ねておられる大学院生など、色々な方がおられます。
 続いて、農業、避難、子ども、支援という大まかなグループに分かれての意見交換が行われました。
 終了後、各グループでの議論の概要等について数名から報告。
 「再生産可能な農業の重要性は分かるが、価格が高くなりすぎて豊かでない人が買えなくなってしまうのは問題では」
 「風評という言葉を使うことによって対立が生み出されいるのではないか」
 「胸を張って素晴らしいものを生産していくしかないのではないか」等、様々な意見が出されました。
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 最後に、会場を提供して下さった from a&e café(フロマエカフェ)の冨山普さん(アースデイマーケット事務局長)からも挨拶を頂きました。おいしい食事を提供するだけではなく、田畑に行くきっかけ作りの場にもするため、9月1日にオープンされたとのこと。
 なかなか雰囲気のいいお店です。これからも足を運びたいと思います。
151011_13_convert_20151012201429.jpg そして最後の最後、共催の福島県有機農業ネットワーク事務局長の浅見彰宏さん(喜多方市)から、「今日の会合のように本音を語り合うことが『風評被害』の克服にも繋がる」等の挨拶を頂いて閉会。
 大震災から5年目も半ば以上を過ぎましたが、原発被災からの復興がまだまだ途上にある一方、東京等では「風化」が進みつつあることは否定できません。
 しかし、この日、継続して取り組んでいる方達からの報告を聞き、さらに他の参加者との意見交換等を通じて、東京から被災地に思いを馳せることができました。特に大学生、大学院生など若い方達が何度も被災地に入り、この日も積極的に意見交換等に参加している様子には、心励まれる思いでした。
 このような会合が、今後も継続的に開催されていくことの重要さを感じた次第です。
(なお、本記事執筆中の15日、鹿児島・川内原発2号機が再稼働とのニュース。)
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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