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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇
No.84; 2015.12/25(金)[和暦 霜月十五日]発行
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いよいよ2015年も押し詰まってきました。
さる12月22日(和暦
霜月十二日)は冬至。一年で最も夜の長い季節。
この冬至の日を境に、次第に夜は短く、昼の時間は長くなっていきます。
時の流れを体感して頂くため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)
と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は霜月十五
日の配信です。2015年最後の配信となります。
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◆ F.M.豆知識
食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、
あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げ
ていきます。
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経済学に「ぺティ=クラークの法則」という有名な経験則があります。
これは、経済社会の発展に伴い、国民経済(総生産、就業人口等)に
おける第一次産業(農林水産業)の地位は次第に低下し、代わって第二
次産業(製造業)、さらには第三次産業(サービス業)のシェアが高まっ
ていくというもので、先進国、途上国を問わず普遍的にみられる「法則」
です。
日本においても、そのとおりの動きがみられます(リンク先の図42の
上半分のグラフ)。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/42_CSA.pdf
例えば、総世帯数に占める農家の割合は、1960年には29.0%だったの
が2000年には5.0%へ、さらには2013年には2.6%へと低下しています。
同じ期間に、総人口に占める農家世帯員数の割合は36.5%から8.2%、さ
らに4.4%へと大きく低下しています。
つまり1960年頃は、自らは農家でなくとも、実家や近隣に農家や農業
はありふれていたのです。しかし現在は、多くの国民・消費者にとって
農家や農業は縁遠いものになってしまいました。
GDP(国民総生産)に占める農業総生産のシェアも、1970年には4.4%
あったのが最近は1%程度で推移しています。
このように、国民経済に占める農業の地位が低下していることを問題
視する論調があります。しかし、このことは先に述べたように普遍的な
「法則」であるということは別にしても、見方を変えれば、1960年頃は
農家1戸が3.45世帯分(1÷0.29)の食料を支えていたのが、最近は38.5
世帯を支えているという計算になります(図42の下半分のイラストは、
この「生/消割合」を示しています)。
輸入が増加していることを考慮しても、日本農業は目覚ましく生産性
が向上したとみることもできるのです。
さらに見方を逆転させると、仮に農家の経営を消費者が支えていこう
とすると、1960年頃は3.45世帯で1戸の農家を支える必要があったのが、
現在は38.5世帯で1戸の農家を支えればいいということになります。
この辺りの数字をみても、CSA(Community Supported Agriculture、
地域支援型農業)の可能性は、より高まっていることが伺えるのです。
[出典、参考資料等]
農林水産省「平成26年度
食料・農業・農村白書 参考統計表」p.60
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h26/pdf/26_tokei.pdf
FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html
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◆ オーシャン・カレント −潮目を変える−
食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお
られる方達、トピックス等を紹介しています。
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福島県の会津地方、喜多方市山都町(やまとまち)には、開削されて
から約300年にわたり、山間の田畑をうるおし里山に命をはぐくみ続けて
きた用水路「本木上堰(もときうわぜき)」があります。
18世紀半ば、天文年間から延享年間にかけて12年にわたる難工事を経
て開削されたものです。
豪雪地帯にある本木上堰は、冬の間に倒木や落ち葉・土砂が流入し荒
れてしまうため、春の代かきの前に土砂等をさらい、破損した箇所を補
修する必要があります(かなりの重労働です)。
しかし、近年、高齢化と人口減少により、この水路の保全作業に支障
をきたすようになっていました。そこで、地域の有志の方達は「本木・
早稲谷 堰と里山を守る会」を結成し、15年ほど前から「堰さらいボラン
ティア」を募集し、都会の人たちとの交流活動の中で水路の維持・管理
を図っているのです。
また、「守る会」では本木上堰の用水で生産されたコシヒカリとひと
めぼれを「上堰米」と名付け、消費者に直接販売する取組を行っていま
す。
さらに2013年からは、地元の老舗酒造店(大和川酒造)と協力して、
上堰米を使った純米酒「上堰米のお酒」の委託醸造を開始しました。
四合瓶(720ml)1本の純米酒をつくるためには、約400gの米が必要と
されるそうです。米400gは、ご飯茶わんにすると6〜7杯に相当し、なか
なか食べるのは大変ですが、お酒であれば比較的簡単に(?)消費でき
そうです。
そして、守る会の浅見彰宏さんによると、四合瓶1本の純米酒を呑む
ことで、棚田1畳分を守ることにつながるそうです。
2015年の新酒は引き続き募集中とのこと。
すっきりとした味わいです。呑むと、今年7月に訪問した現地の棚田
の光景が脳裏によみがえってきます。
「食べて応援」から「呑んで応援」へ。新しい形のCSAの取組が拡がっ
ています。
[参考]
本木・早稲谷
堰と里山を守る会
https://www.facebook.com/sekitosatoyama
浅見彰宏さんブログより
http://white.ap.teacup.com/higurasi/971.html
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◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント
の開催情報等をお届します。
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▼ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報
○ 高倉ダイコン圃場見学&食事会 @東京・八王子 (12/12)
http://food-mileage.jp/2015/12/12/
○ おばんざいコースの忘年会(新宿の小料理・結) (12/16)
http://food-mileage.jp/2015/12/16/
○ 福島学 in 駒場 第4弾「廃炉編」
(12/17
http://food-mileage.jp/2015/12/17/
○ もやもやフィールドワーク(報告と対話編)第9回 (12/18)
http://food-mileage.jp/2015/12/18/
○ 奥沢ブッククラブ(第3回) (12/20)
http://food-mileage.jp/2015/12/20/
○ 「神保・宮台の恒例年末マル激ライブ2015」 (12/22)
http://food-mileage.jp/2015/12/22/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には
必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
○ 「小料理 結」納会
日時:12月25日(金)18:30〜
場所:小料理 結(新宿区富久町16-10)
主催:小料理
結
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/465292200340424/
○ 忘年会 @ 地域リビング
日時:12月26日(金)17:00〜
場所:地域リビングプラスワン(東京・高島)
主催:地域リビングプラスワン
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/781794018599205/
○ 市民研クリスマス会2015
日時:12月27日(日)料理講座11:00〜13:30、パーティー14:00〜17:00
場所:江東区「総合区民センター」7階(江東区大島4-5-1)
主催:市民科学研究室
(詳細、お問合せ等↓)
http://blogs.shiminkagaku.org/shiminkagaku/2015/10/2015-2.html
○ 第28回全快野菜ちゃん
日時:1月16日(土)9:30〜15:00
場所:品川寺(京急・青物横丁駅近く)
主催:グリーンスマイル
(お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/groups/goma01/
○ 寺田本家酒蔵ツアー【満員】
日時:1月11日(月・祝)8:30池袋駅西口発
場所: 寺田本家品川寺(千葉県香取)
主催:たまにはTSUKIでも眺めましょ
(詳細、お問合せ等↓)
http://ameblo.jp/smile-moonset/entry-11958986821.html
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* 聖夜のコツコツ小咄。
「今からレントゲンを撮りますから、バリウムを飲んで下さい」
「えっ、よりによって今夜ですか?」
「イブ(胃部)ですから」
注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、絶賛(?)投稿中です。
https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7
* 次号No.85は、明年1月10日(日)[師走朔日]の配信予定です。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて
頂いています。いつもありがとうございます。
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方
の部分は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
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◆ 発行者:中田哲也
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