和暦のある暮らし @三軒茶屋・カフェオハナ

 2016年2月6日(土)。
 朝は晴れていましたが次第に曇ってきた午後は、まずは早稲田大学へ。入学試験の日でした。
 職場の上司に誘って頂いた統計関係の研究会。実際に国勢調査の調査員を務められた方お2人(いずれも大学の先生です。)からの体験談の報告。なかなか興味深い内容でした。
 終了後、世田谷区の三軒茶屋へ。
 東急・三軒茶屋駅の南口から徒歩数分、軒先にも雑貨等が並べられているのがふろむあーすカフェ・オハナ
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 オーガニックのドリンクやフードを頂けるカフェで、店内にも様々な雑貨や食料品が所せましと並べられ、独特の雰囲気の空間です。ライブやワークショップ等のイベントも、随時、開催されています。
160206_2_convert_20160211100750.jpg この日、開催されのは、「和暦のある暮らし~センス・オブ・ワンダー・・・生物多様性、自然農、小さな声を聴く~」と題されたトークイベント。
 今年で4年目、恒例のとなった和暦新春スペシャルトークだそうです。
 開始20分前に到着した時には、さほど広くない店内は既にほぼ満席状態。厚かましくも、ステージに一番近い席に割り込ませて頂きました。
 お話は、高月美樹さんと冨田貴史さん。
 高月さんは和暦手帳『和暦日々是好日』の製作者。2010年12月、NPO市民研のクリスマス会で初めてお話を伺って「和暦」の素晴らしさを知り、その後、何度か講演等を聞かせて頂いています。
 冨貴工房(大阪・中津)代表で海旅Camp共同代表でもある冨田さんは、全国各地で暦、エネルギー、手仕事等にかかわるイベントやワークショプを開催されている方。
 2012年8月に荻窪で開催された高月さんとお2人のトークイベントでお話を伺って以来です。
 予定の19時30分に開会。満席です。
 ゆったりと始まったトークは、13年目になるという「和暦日々是好日」最新刊の紹介から始まりました。和暦に沿ったダイアリーで、歳時記が素敵なイラストで紹介されているなど、見ているだけでも楽しい手帳です(私も毎年愛用しています)。
160206_4_convert_20160211100833.jpg 高月さんによると、毎年、マイブームのようなテーマに沿って編集しており、今年のテーマは「小さな生き物」とのこと。
 表紙をめくると、江戸時代の書物から取られた蝶や小鳥のイラストが描かれています。みつばちの1年にも触れているとのこと。高月さんが生まれた東京・三鷹には、今も畑や雑木林がたくさんあるそうです。
 これについて冨田さんからは、
 「七十二候とは正に自然観察記録。暦を意識することは、自然に対する畏敬の念や謙虚さを思い出させてくれる」
 高月さん
 「例えば、第五十一候『こおろぎ、戸口で鳴く』は、今年は長月十八日(10月18日)。こおろぎは、寒くなるに連れて次第に家の近くで鳴くようになる。昔の人たちは、最盛期ではなく、消えゆく虫の声、終わりゆく命に心を動かされた。そのことに気付き、自らも体験することで、季節がめぐること、命も繰り返されることの有難さを感じることができる。
 暦とは目安に過ぎない。大事なことは、自分で感じ、腑に落ちる体験を続けていくこと」
160206_3_convert_20160211100807.jpg 冨田さん
 「私たちは自然の循環の中で生かされ、生態系から多くのギフトを頂いている。暦は自然と向き合う気付きや作法を教えてくれる。
 現代の私たちは近視眼的で右肩上がりばかり意識している。しかし時の流れとは直線的なものではない。円環で時間が進んでいるという感覚が大事。死滅と誕生は繰り返されるもの」
 高月さん
 「雑草と共存することの重要性を説く自然農の方もおられる。矢野智徳さんの『風の草刈り』を今年の手帳で紹介させてもらった。生命力の強い雑草ほど根こそぎ刈ると逆に勢いを増す。そうではなく、風の通り道になる先端部分だけ刈ることで作物とも共存できる」
 冨田さん
 「自分は大阪の都会の古い商店街の中で味噌作りをしている。九州から有機大豆を仕入れているが、生産者の方と直接話をすると、色々と分かることがある。販路さえ確保できるなら自然農をやりたいという人が周りには多いらしい。
 自分自身も造ることのプロセスに関与していきたい。都会の中でも味噌や梅干しは作れる。大豆の脱穀もできる。輸送距離の長短だけではなく、生産物に対する想像力や有難みが失われていることが問題ではないか。関係性を取り戻すことが必要。フェアトレードもその一つの手段」
160206_7_convert_20160211100932.jpg 高月さん
 「日本版のダーチャ計画を推進したい。耕作放棄地が増えている。都会の人たちが、休日だけでも耕作放棄地に繰り出して耕すようなことができないか。移住までしなくても、援農に行くなど色んなやり方があるのでは」
 冨田
 「アーバン・パーマカルチャーやゲリラガーデニングという言葉があるように、都会の中でもできることはいくらでもある」
 高月さん
 「現代は、有機野菜なども手に入れようとすればネット通販等で簡単に手に入るようになってきた。ここ数年、一気にパラダイムがシフトしていく潮目にあるのではないか、という予感がする」
 
 21時を回り、会場の参加者との間で意見交換。
 1人ずつマイクが回されました(冨田さん自作の味噌も、回して試食させて下さいました。深く優しい味です)。
 日本­在来種みつばちに関わる活動をされている女性。
 10年以上の在外経験のあるご夫妻(ご主人は証券会社勤務)は海外で和暦手帳を知ったそうです。
 来月、島根に移住することを決めたという若い男性。
 東京に10年暮らした後、実家の熊本に帰って野菜作りをされている女性。
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 子どもの頃に生きものと対話していたことを思い出して懐かしかったという男性。
 パソコン相手のプロダクトデザインの仕事を辞め、板前修行をされているという女性。
 自分も都会の中で何かを作っていきたいと思ったという若い女性、等々。
 それぞれ、今日のトークで色々と触発されたところが大きかったようです。 
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 この日、『和暦日々是好日』最新版を求めさせて頂きました。
 このなかで高月さんは、「私たちも自然の一部として循環できる存在になること、そんな未来が実現することを心から願っています」と記されています。
 2月8日(月)は睦月朔日、和暦でも新しい一年がスタートしました。
 今年も一年、この手帳を手もとに置き、時の流れを意識しながら過ごしていきたいと思っています。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 (プロバイダ側の都合で1月12日以降更新できなくなったことから、現在、移行作業中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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