F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.091

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信 ◇◆◇

     No.91;2016.4/7(木)[和暦 弥生朔日]発行

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 和暦では弥生(やよい)に入りました。

 草木がいよいよ生い茂る弥栄(いやさか)の月。東京では桜は盛りを

過ぎましたが、さらに多くの花々が咲き揃う季節を迎えます。

 

 時の流れを体感するため、和暦の毎月一日(朔日=新月の日)と十五

日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は弥生朔日の配信

です。

 

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  F.M.豆知識

  食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、

 あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げ

 ていきます。

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 「東京蟻地獄論」2

 引き続き、都市と地方の人口問題について。

 これまで日本の「一票の格差」の現状、一極集中の国際比較、2000

代に入って人口の東京圏への一極集中が先鋭化している状況等について

述べてきました。

 

http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/44_kakusa.pdf

http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/45_daitosi.pdf

http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/46_kokucho.pdf

http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/47_kanto.pdf

 

 そして前回、この状況は「都市アリ地獄論が現在に甦っているように

もみえる」と書きました。

 

 「都市アリ地獄論」とは、歴史人口学者の速水融(はやみ・あきら)

が唱える説です。

 これは、江戸期の日本の人口が全体として停滞している中で、関東地

方と近畿地方では人口が減少していることに着目したものです。江戸や

京都・大阪という大都市を抱えているこれら2地域では、大市場向けの商

品作物の栽培が増加し、醸造業等の手工業が発達していることから、当

然、人口が増大したはずなのに、逆に減少しているというのです。

 

 この理由として、速水は、住みにくい都市は死亡率が農村より高く短

命であることから、周辺の農村部から大量の人口を受け入れることで人

口を維持していたため、地域全体の人口は増えなかったとしています。

 そして、全く同様の状況は中世のヨーロッパにおいてもみられるとし

ています(ヨーロッパの歴史人口学者は「都市墓場説」と呼んでいるそ

うです)。

 

 さて、リンク先の図48は、2015年における東京への移住者数(移動前

の地域別)を示したものです。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/48_tokyoinyuu.pdf

 

 これによると、東京への移住者が最も多いのは東京圏とされる埼玉・

千葉・神奈川ですが、関東地方のみならず、全国から東京に移住する人

がいることが分かります。

 仮に「都市アリ地獄論」が現代に当てはまるとすれば、その対象地域

は江戸時代の関東地方に留まらず、全国に及んでいることが伺えるので

す。

 次回に続きます。

 

[出典、参考資料等]

 総務省『住民基本台帳人口移動報告 平成27年(2015年)結果』

  http://www.stat.go.jp/data/idou/2015np/kihon/youyaku/

 

 速水融『歴史人口学の世界』((岩波現代文庫)

  https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/6002720/top.html

 

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について、先進的かつユニークな活動に取り組んでお

 られる方達、トピックス等を紹介しています。

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 納所二郎(のうしょ・じろう)さんは、1944年のお生まれ。

 大手広告代理店に在勤中から、趣味で野菜作りや野菜のイラスト描き

をされていましたが、退職された後はこれら活動を本格化されるととも

に、より幅広い社会的な活動にも取り組まれるようになりました。

 

 その一つが、NPO法人ミュゼダグリの設立に関わられたことです。

 ミュゼダグリ(Mesee
d’agri
)とは、フランス語で「農文化の博物館」

という意味。農業を始めとする一次産業が新しい文化産業へと転換し活

性化することを目指して、都市農地を活用した交流活動等に、先駆的に

取り組んでこられました。

 

 その後、納所さんの活動のターゲットは、東京の伝統野菜である江戸

東京野菜に重点化されるようになりました。

 江戸東京野菜とは、江戸期から昭和中期までのいわゆる在来種、ある

いは在来の栽培法により生産されている野菜のことで、現在、42種類が

認定されています。

 最近でこそ江戸東京野菜の知名度は上がってきましたが、その普及の

中心的な役割を担われた方の1人が、納所さんなのです。

 現在、納所さんはNPO法人江戸東京野菜コンシェルジュ協会の理事長も

務めておられます。同協会は、随時、各種講座の開催等を通じ、江戸東

京野菜の普及とそれによる地域振興に貢献する人材づくりに取り組んで

います。

 

 2016329日(火)〜30日(水)、東京・小金井市の武蔵野画廊にお

いて、「納所二郎の絵と文字で綴る江戸東京野菜大図鑑展」が開催され、

これまで納所さんが描き溜めてこられた(この個展のために新たに描か

れたものも含め)多くの江戸東京野菜のイラストや書が展示されました。

 初日の夕方に開催された懇親会(祝う会)には、江戸東京野菜に関わ

NPOや生産者・生産者団体の方、学校で野菜を栽培するなど食育活動を

されている方、イラストレーターや野菜ジャーナリスト、書道具を販売

されている方など、多彩な方達が集まりました。

 

 また、テーブルには、近隣の飲食店(フォレスト・マム)をはじめ、

野菜ソムリエや料理研究家の方達が腕をふるわれた東京ウド、伝統小松

菜、のらぼう菜など江戸東京野菜を使った様々な料理が並びました。

 

 納所さんの人を魅了する暖かいお人柄と、これまで取り組んでこられ

た活動実績により、小金井では江戸東京野菜を核にした新しいコミュニ

ティが発展しつつあることを実感しました。

 

[参考]

 NPO法人江戸東京野菜コンシェルジュ協会公式ブログ

  https://www.edo831.tokyo/

 

 NPO法人江戸東京野菜コンシェルジュ協会フェイスブックページ

  https://www.facebook.com/edo831/ http://satoyume.com/

 

「はじめての江戸東京野菜講座江戸東京野菜には物語があります」

 日時:528日(土)13:0016:00

 場所:新宿御苑インフォメーションセンター(東京・新宿区内藤町)

 主催:特定非営利活動法人江戸東京野菜コンシェルジュ育成協会、

    一般社団法人国民公園協会新宿御苑

 講師:大竹道茂さん、上原恭子さん

  https://www.edo831.tokyo/wp-content/uploads/2016/04/74441998935d389525ca9c5da46c90a5.pdf

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 福島との縁を紡ぐふくしまオルガン堂の閉店など (03/25)

  http://food-mileage.jp/2016/03/25/

 

 奥沢ブッククラブ(第6回) (03/26)

  http://food-mileage.jp/2016/03/26/

 

 納所二郎さんの江戸東京野菜大図鑑展 (03/30)

  http://food-mileage.jp/2016/03/30/

 

 対話のための読書会(第1回)&対話ラボ(第5回) (04/02)

  http://food-mileage.jp/2016/04/02/

 (注:あと1本で500号です!(それがどうした))

 

 奥沢ブッククラブ特別編「本の桜祭り」 (04/06)

  http://food-mileage.jp/2016/04/06/

  (祝:記事500号です!)

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 在来種のジャガイモ「ネガタ」の種イモ植えと西原のマチュピチュ・

  わさび田ハイキング

 日時:410日(日)8:30 JR中央線上野原駅発(バス)

 場所:山梨県上野原市西原(さいはら)地区

 主催:しごと塾さいはら

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/473542076171107/

 

 2016 US.Peaceファーム農業体験会(第1回・夏野菜の定植)

 日時:410日(日)9:40 東武東上線・小川町駅前集合

 場所:横田農場(埼玉・小川町青山)

 主催:US.Peaceファーム

 (詳細、お問合せ等 )

  http://uspeace.jp/user_data/event.php#taikenkai

 

 福島復興!震災支援の軌跡を振り返る交流会(結イレブン)

 日時:411日(月)18:3020:30

 場所:国際青年環境NGO  A SEED JAPAN(東京・台東区上野5-3-4

 主催:結イレブン

 (詳細、お問合せ等 )

  https://www.facebook.com/events/953546934720845/

 

 共奏キッチン

 日時:415日(金)18:00

 場所:シェア奥沢(東京・自由が丘)

 主催:共奏キッチン

 (詳細、お問合せ等 )

  https://www.facebook.com/events/1152662528110245/

 

 脱成長ミーティング第10回公開研究会

  古沢広祐さん(國學院大学教授)「脱成長論を歴史的に振り返る」

 日時:417日(日)13:3017:00

 場所:ピープルズ・プラン研究所(メトロ有楽町線・江戸川橋 徒歩5分)

 主催:脱成長ミーティング

 (詳細、お問合せ等

  http://umininaru.raindrop.jp/datsuseichou/tuo_cheng_zhangmitingu/ci_hui_kai_cui_jiang_zuo.html

 

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* 今号のコツコツ小咄。

 「この時期、訪日観光客が急増だね」

 「お目当ては開花(外貨)だからね」

 

 注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、絶賛(?)

  投稿中です。

  https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7

 

* 次号No.92は、421日(木)[弥生十五日]の配信予定です。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也