世界農業遺産(GIAHS)と地域ブランディング-宮崎・椎葉村に学ぶ

 梅雨時らしいすっきりしない日が続きます。
 2016年6月22日 (水) の終業後は、東京・西日暮里の From a & e café (フロマエカフェ) へ。
 「東京朝市・アースデイマーケット」が「週末農風」とともに運営する「縁農カフェ」。 オーガニックで美味しい食事を頂けるだけではなく、様々なイベントが開催されています。
 ちなみに、向かいは銭湯です。
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 この日、19時から開催されたのは第8回「いとなみ大学」。
 環境ライター・マーケティングプランナーの箕輪弥生さんが、建築家の黒岩哲彦さんをホストに定期的に開催されておられるイベントです。私は初めて参加しました。
 この日のテーマは「『世界農業遺産』と地域ブランディング-焼畑と自給の山里・椎葉村に学ぶ-」。
 ゲストは大和田順子さん。 一般社団法人ロハス・ビジネス・アライアンスの共同代表で、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科兼任講師、農林水産省の世界農業遺産専門家会議委員等の公職も務めておられます。『ロハスビジネス』(2008、朝日新書)、『アグリ・コミュニティビジネス』(2011、 学芸出版社)など著作も多数。
 個人的には、ふくしまオーガニックコットンプロジェクト(いわき市、広野町)のボラバスに誘って頂くなど、 日頃から大変お世話になっている方です。
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 スライドを映写しながら(時には動画も交えつつ)、大和田さんの話が始まりました(文責、中田)。
 「現在の日本は、人口の高齢化、過疎、耕作放棄地の増加、森林の荒廃、食料・木材自給率の低下など多くの逆境に直面。
 これらを克服するためには、広井良典先生(京都大学)が『コミュニティ経済』として提唱されているように、自然やコミュニティから離陸した資本主義を、もう一度コミュニティや自然とつながる経済に『着陸』」させることが必要」
 参考:広井良典先生が研究代表者を務められた「コミュニティ経済に関する調査研究」はこちら(大和田さんから情報提供頂きました)。
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 世界農業遺産(GIAHS)とは、FAO(国連食糧農業機関)が、伝統的な農業・農法、生物多様性、農村文化・農村景観など『地域システム』を維持保全し、次世代へ継承していくために認定するもの。
160622_4_convert_20160624014051.jpg 制度ができた背景には、近代農業が世界各地で森林破壊や水質汚染等の環境問題を引き起こし、さらには地域固有の文化や景観、 生物多様性などの消失を招いてきたというFAOの問題意識がある」
 「現在、15カ国36地域が認定されており、うち11地域が中国、8地域が日本。北米や欧州での認定はない。
 農林水産省では『日本農業遺産』という独自の取組をスタートさせている」
 「宮崎県高千穂郷・椎葉山地域は『森林保全管理が生み出す持続的な農林業』として、2015年に世界農業遺産に認定された。
 九州のほぼ中央の山間部にあり、木材やしいたけ、和牛、茶、 棚田での稲作など複合経営により生計を立てている地域。
 諸塚村の森林は全村でがFSC(Forest Stewardship Council)認証(適切な森林管理等が行われていることを認証する国際的な制度)を受けており、椎葉村では焼畑を組み合わせ30年単位の森づくりに取り組んで入る」
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 「椎葉村には平家の落人伝説が残り、柳田國男の民俗学発祥の地でもある。 伝統文化の神楽や自治公民館活動等を通じて地域コミュニティの絆も固い。『かてーり』(助け合い)の精神が大切にされている。神楽を舞いたくてUターンする人たちも多い」
160622_6_convert_20160624014128.jpg 「焼畑をされている90歳代の女性を主人公にした『クニ子おばばと山の暮らし』は、NHKや書籍、映画でも取り上げられた。
 共同作業体験場『焼畑粒々飯々(つぶつぶまんま)』では様々な交流活動等を実施しており、美味しい郷土食も頂ける。菜豆腐を買ってきたので、後ほど賞味下さい」
  「地域の課題を解決し豊かになっていくためにはビジネスの観点も必要。
 昨年秋から5 町村で『コミュニティビジネス塾』を開催した。また、焼き畑の継続・拡大のために地元の方達と『焼き畑研究会』も立ち上げ、生きもの調査や商品開発も行う予定」
 続いて、ホストの黒岩哲彦さんからも話がありました。
 自然環境を活かした建築や都市計画に長年かかわっておられる方で、(株)エクセルギーを主宰されています。
 後の懇親会の際、ご著書『エクセルギーハウスをつくろうエネルギーを使 わない暮らし方』 (2014、コモンズ)を求めさせて頂きました。
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  「山裾にしか次の経済は起こらないと確信している。超低温乾燥による高品質の木材生産など、林業の分野でもエネルギーを使わない技術革新が進んでいる」
 「賀川豊彦が提唱した立体農法の普及にも取り組んでいる。長野・飯山の事例では、柿の木の根元からこんにゃくが出ており、冬になってこれらの葉が落ちると大根が生えてくる。この方は1人で30品目ほどを朝市で売っており、売値は市価の7〜8割程度だが、それでもお金は余ってしまうらしい」
 地面近くの共存域と、その下の共生域を攪拌 しないことが立体農業の基本」
 「そもそもエネルギーという言葉は間違って使われている。熱力学の法則から『創エネルギー』などはあり得ない。 太陽温水暖房や雨水冷房などで自然の力を借り、木や生き物が活躍する『エクセルギーハウス』の普及にも取り組んでいる」
 その後は、ビュッフェ形式の軽食を頂きながらの懇談に。
 大和田さんが提供して下さった菜豆腐は、豆乳に季節の野菜を混ぜて固めた椎葉村の郷土料理で、見た目も鮮やな堅めの豆腐です。
 アースデイマーケットのサラダと焼き野菜、自家製のパンには猪肉のパテを添えて頂き ました。いずれも美味です。
 久しぶりに寺田本家の自然酒(純米90・香取)も頂きました。精米歩合90%(10%しか削っていない)と、日本酒のイメージを覆される逸品です。
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 ところで、この日の参加者は30名ほど。
 比較的若い方が多く、大和田さんに椎葉村での生活の様子等についての熱心な質問が相次ぐなど、地方暮らしに関心のある人が増えていることが伺えました。
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 私も推葉村には行ったことがありません。
 できれば火入れの様子(8月初旬とのこと)を見学に行きたいと、強く思った次第。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 (プロバイダ側の都合で1月12日以降更新できなくなっていることから、現在、移行作業を検討中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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