茨城・那珂への小旅行の翌日・2016年10月30日(日)は、すっかり秋の気配の井の頭公園を抜けて、森の食卓(東京・三鷹市)へ。
ホトトギスが満開です。
この日、午前10時から開催されたのは第8回「森の読書会」。
今回の参加者は6名。何度か参加されている方ばかりのようです。
冒頭、主催者のTさんから「3月から毎月開催しているが、月1回でも大好きな本の話ができるのが楽しい」等の挨拶で開会。
参加者一人ひとりからの自己紹介に続き、この日のテーマ「旅」にまつわるオススメ本の紹介。
ウェブ制作関連階者にお勤めというIさんの紹介はガイド本の「ことりっぷ 沖縄」。
遺跡めぐりが趣味だそうで、ソーキそばなど美味しいものもあり、ぜひ、沖縄に行ってみたいのだそうです。
この本にはアプリもあり、クチコミなど最新情報を得るのに便利とのこと。一方、本はすぐに取り出してみることができる、全体を把握しやすい等のメリットがあり、IT関連に携わるようになって改めて紙の本の良いところが分かったそうです。
本の流通会社に勤務しておられる男性のオススメは、村上春樹『雨天炎天』。
30年ほど前のカメラマンと2人でのギリシャ、トルコ辺境旅行記。全編にわたる「愚痴」に、トルコに対する作者の愛着を感じられたとのこと。
三鷹駅前で「本のある居場所・まちライブラリー」を運営され、この読書会の共催者でもある女性は、20代のころは旅行が大好きだったそうです。
結婚、出産と子育てで旅に出られず寂しい思いをしていた頃、旅の本を読むことが慰めだったとのこと。
紹介されたのは2冊のインド本、たかのてるこ『ガンジス河でバタフライ』と中谷美紀『インド旅行記』。
介護関係の活動をされているシニアの男性。体調を崩される前は5万分の1の地図を携えてよく旅行されていたそうです。
旅とはちょっと違うけど、と紹介して下さったのは岡檀『生き心地の良い町』。自殺率が全国一低い徳島・(旧)海部町では、赤い羽根の募金は少ないものの、目に見える回りの人を支援する気持ちは強いそうです。
最後に主催者のTさんからはヨシダナギ『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』。
マサイ族にあこがれてアフリカに渡った女性写真家は、同じ格好になった瞬間に受け入れてもらえたとのこと。
もう1冊は小林せかい『未来食堂ができるまで』。これは「寄贈本」としてIさんの手許へ。
「旅」をテーマにしつつ、幅広い内容に及んだ2時間ほどの読書会。今回も楽しい時間を過ごさせて頂きました。
次回は12月11日(日)を予定しているとのことです。
さて、この日の読書会で私から紹介させて頂いたのは森絵都の短編集『風に舞いあがるビニールシート』。
先日、難民支援に携わっておられる方の話を伺い、世界には6000万人以上が望まない「旅」を強いられていることを知りました。
以来、難民問題の入門テキストを探していたところ、国連UNHCR協会のウェブサイトで紹介されていた本の1冊がこの本です。
外資銀行から国連難民高等弁務官(UNHCR)事務所に転職した主人公と、UNHCRの専門家として現場を回るアメリカ人男性との短い結婚生活と破局の物語。難民問題に正面から取り組むことの苦悩と誇りが描かれ、深刻な内容ながらも好転する未来を予感させてくれる好著です。
この本を読書会で紹介した時、「大きな問題すぎて・・・」という感想が出されました。
その時に紹介すれば良かったと後で思ったのが、同じ短編集に収録されている『犬の散歩』です。
主人公は捨て犬の「仮親」ボランティアをしている専業主婦。世の中の悲惨な事件や難題から目を背けていた主人公は、友人の紹介で捨て犬・迷い犬の収容センターを見学したことで、長く閉ざしていた瞼を開かされます。
「その時、目の前に現れたのは寝たきり老人や虐待される子ども、遠い国の難民ではなく、人間に捨てられ捕えられた無数の犬たち」だったのです。
私たちの社会には様々な問題がありますが、身近なところ、自分の手の届くところにも(自分ができることも)あるのです。
同じような活動をされている知人がいることもあり、心に響いた短編でした。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
(プロバイダ側の都合で本年1月以降更新できなくなっていることから、現在、移行作業中です。)
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