2016年12月3日(土)は、うららかな陽気のなか、東京・三鷹市のJA東京むさし・三鷹緑化センター(ファーマーズ・マーケット)へ。
建物の内外には花や植木、野菜が並んでいます。壁には生産者の方々の顔写真。
11時から2階の会議室で開催されたのは「まちなか農家×防災~三鷹野菜の炊き出し鍋をみんなで囲もう~」と題するイベント。
多面的な機能を持つ三鷹の農業にふれながら、災害時を想定して作った炊き出し鍋をみんなで囲んで三鷹野菜を味わおうという趣旨です。
主催は、三鷹・武蔵野の“まちなか”でがんばる農家さんを応援するサイト「まちなか農家」。IT関連等に携わる若い方たちが、SNS等を通じ、生産者と消費者の間の距離を縮めるために運営されています。
まず、JA東京むさし三鷹地区青壮年部の須藤金一会長から、「三鷹農業とJA青壮年部の活動」として、概要、以下のような説明がありました。
「農地面積は約160haで市の面積の1割ほど。ほとんどが生産緑地に指定されている。平均面積は小さいものの野菜など生産性の高い農業が営まれており、後継者も多い。
都市の農地には多くの機能があるが、ゲリラ豪雨時の雨水保持など防災面での役割も最近注目されている。市との協定に基づき避難場所協力農地として登録された場所には看板を設置してあるが、看板がなくても、いざという時はどんどん逃げ込んでもらいたい」
「都市農業は消費者と直接交流できる機会も多く、農業体験の受け入れなど食育にも熱心に取り組んでおり、毎年「農のある風景画」を募集し入選作でカレンダーを作っている。
昨年、都市農業振興基本法が成立・施行されたが、相続税などまだまだ制度面が追いついていない。
多くの方に農家のファンなってもらえるよう、活動を続けていきたい」
なお、JA東京むさし三鷹地区青壮年部は2013年のJA全国青年大会で最優秀賞を受賞されているそうです。
続いて、三鷹市防災課の担当者の方(三鷹に生まれ育ち26年とのこと)から、「都市における農地の災害時の機能」について以下のような説明がありました。
「火災の時、1500平米の空地があれば延焼は防ぐことができ、この面でも都市農地は重要。 避難場所にもなる。
さらには農地としての生産機能も重要。熊本に支援に行ったが、救援物資は炭水化物中心で栄養面の偏りがある。そのような時に地元に野菜があることは心強い。
スライドには『災害時こそ地産地消』と書いたが、『災害時も地産地消』が正しい」等の説明がありました。
説明を聞いた後は、隣接する農業公園で「炊き出し」の実演です。
炊き出し用具(ステンレスのかまど、蓋つき鍋等の一式)は実際に三鷹市の避難所に常備しているもので、一度に50食分のご飯が炊けるとのこと。燃料としては薪や灯油が使えるそうですが(実際に薪を使って着火させました)、都会の中に農業が残っていると、木の枝や杉の葉といった燃料も確保し易いというメリットもあるそうです。
JA青壮年部の皆さんが準備して下さった野菜がふんだんに入った汁物と、備蓄物資であるアルファ米(炊き込みご飯)を準備して下さっている間、 根岸隆好さんに緑化センターに隣接する農地を見学させて頂きました。
露地やハウスで年間50品目ほどの野菜を生産し、全て庭先等で直接販売されているそうです。ちなみに農地は3ヶ所に分散していて移動等に労力がかかるとのこと。また、子ども達の農業体験も受け入れておられるそうです。
その後、緑化センター内を見学(買い物等)しているうちに、ご飯も炊きあがりました。
ブルーシー トの上に車座になって頂きました。 地元産野菜たっぷりの汁物はもちろん、アルファ米も美味です。
参加者から自己紹介と意見交換。
JA青壮年部の須藤会長は14代目とのこと。先日、見学させて頂いた冨澤副会長を含め生産者の方たちからは、都市部で農業を続けることの苦労と、消費者や子ども達との交流することの喜び等について話されていました。
大学の研究者の方からは、都市農地を社会的共通資本として保全していくことの重要性が指摘されました。
しかし、農地はあくまで私有財産です。都市農地に様々な機能があることは事実ですが、それを十分に発揮していくためにはコンセンサスの形成が不可欠であり、この日のようなイベントを含め、農家と非農家が顔を合わせて交流していく取組みが重要です。その意味でも、非常に意義深い(しかも美味しい)イベントでした。
主催者の皆さま、協力頂いたJA青壮年部の皆さま、市役所防災課の方に感謝申し上げます。
14時頃に終了し夕方までの間、太宰治ゆかりの場所をめぐることに。
実は三鷹には社会人1年生の時に半年だけ独身寮に住んでいたことがあるのですが、禅林寺の太宰の墓所を訪ねたのも初めてです。斜め向かいには森鴎外一家のお墓。
「ヴィヨンの妻」等を執筆した下宿(中鉢家)あと。
太宰の写真で有名なJR中央線の陸橋(跨線橋)は、1929年の竣工当時の姿を留めているそうです。橋の上には小さな子どもを連れた家族で賑わっていました(鉄ちゃんも楽しめそうです)。
そして玉川上水。水流は多くありません。
入水したとされる場所近くの道路脇には、太宰の故郷である青森・金木産の玉鹿石(ぎょっかせき)の碑が置かれていました。
江戸東京野菜関係でお世話になった小金井の方と待ち合わせ、蕎麦屋で一杯。
地元の方も合流し、三鷹野菜(カリフラワー、ロマネスコ、大根など)の美味しいお店に案内して下さいました。ここで偶然、昼間のイベントを主催された方たちとも一緒になりました(Yさん、お誕生日おめでとうございます)。
JR三鷹駅北口もクリスマスのイルミネーション。今年も残りわずかです。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
(プロバイダ側の都合で本年1月以降更新できなくなっていることから、現在、移行作業中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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