-本当に「物の豊かさ」より「心の豊かさ」か-
前回は、日本の経済成長が低迷する中で格差が拡大している状況を紹介しましたが、関連して、今回は内閣府「国民生活に関する世論調査」を紹介します。
本世論調査では、毎回、「今後の生活において、これからは心の豊かさか、まだ物の豊かさか」についての問いがあります。
最新の2016年調査においては、「物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい」(『心の豊かさ』)と答えた者の割合が60.2%、「まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい」(『物の豊かさ』)と答えた者の割合が31.3%となっています。
これを時系列でみると、1972年の時点では『物の豊かさ』が40.0%と『心の豊かさ』(37.3%)を上回っていましたが、その後、両者は逆転し、1982年以降は一貫して『心の豊かさ』が『物の豊かさ』を上回って推移しており、2016年には両者のポイント差(『心の豊かさ』-『物の豊かさ』)は28.9ポイントと、相当大きなものとなっています(リンク先の図67)。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2017/02/67_yutakasa1.pdf
この結果から、もはや日本は物質的に豊かになったのでこれ以上の成長を目指す必要はなく、ゆとりある生活をすることを重視したいのが国民の総意であるかのように言われることがあります。
しかし、これを年齢別にみると状況は異なります。
2016年においては、両者のポイント差は20~29歳層においては10.2ポイント、30~39歳層においては6.8ポイントと、若年層では比較的小さな値に留まっているのです。これに対し60~69歳層では37.8ポイント、70歳以上層では42.9ポイントと、特に高齢層で『心の豊かさ』を重視する者が多いことが分かります。
さらに、若年層の数値(ポイント差)は、近年、低下傾向で推移しており、『物の豊かさ』をより重視するようになっている傾向がみられるのです。
これは、経済が高度成長した時代の果実を手にしている高齢者層とは異なり、若年層には現在も相対的に経済的な事情が厳しく、経済成長や所得増加を求めている者が増えつつある状況を反映している可能性があります。
ちなみにこのポイント差(『心の豊かさ』-『物の豊かさ』)は地域別にも差がみられ、大都市では34.2ポイントとなっているのに対して小都市では25.9ポイント、町村では27.2ポイントと相対的に小さくなっており、地域間でも異なる様相を示しています。
[参考]
内閣府「国民生活に関する世論調査」(2016年7月調査)
http://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-life/2-2.html