【ブログ】脱成長MTG12「次の時代を、先に生きる」

2017年2月19日(日)。
 暦は前日から雨水、春一番も既に吹きましたが、この日は肌寒い一日です。

東京・江戸川橋のピープルズ・プラン研究所(PP研)へ。
 民衆(ピープル)の目線から、20世紀の世界がゆきついた「持続不可能」な状況へのオルタナテイブを探求する研究所(開かれたグループ)です。

この日、13時30分から開催されたのは、脱成長ミーティング(MTG)の第12回公開研究会
 「脱成長社会」の構想をより魅力的で説得力のあるものに練り上げるための公開MTGも、12回目を数えます。

この日のテーマは、研究会の発起人の一人・髙坂勝さん(オーガニックバー「たまにはTSUKIでもながめましょ」(たまTSUKI)オーナー)の新著「『次の時代を、先に生きる』を読んで~脱成長の豊かさとは?」

冒頭、やはり発起人のお一人・白川真澄さん(PP研)から、「本ミーティングも12回目。これからは経済成長できても、たかだか1%。資本主義に代わる次の社会の具体的なイメージを想像力を働かせながら作り上げていきたい」等の開会挨拶。

この日はまず、3名のゲストから髙坂さんの新著についてコメントを頂きました。

最初は田部知江子さん。
 ハンセン病やホームレス問題など人権・平和問題に関わって活動されている弁護士の方で、(一社)日本アンガーマネージメント協会のファシリテーターもされています。

「たまTSUKIを初めて訪ねたのが2006年1月。髙坂さんと自己紹介し合い、お酒の美味しさにも衝撃を受け、翌日の寺田本家酒蔵ツアーに参加。その後は常連のようになった」

「髙坂さんの新著の印象は『情緒的過ぎず、堅すぎず』。多くのエビデンスが引用され説得力があり、自分が楽しむことと社会を変えるために動くこととの両立を目指している。弁護士としての自分の活動とシンクロする部分も多い」

「2014年からはSOSAプロジェクトに参加し、本当にお米が20日の作業でできることを知った。お米と大豆を自給できれば生きていけると実感。無心で雑草抜きをしていると、脳はフル回転して多くの着想がある」

2人目は石崎大望さん。
 整体師として被災地のボランティア活動や東京の町づくり活動に取り組んでおられる方です。

「すごい、すごいと共感しながら読んだ。自分も次の時代を生きているつもり。特に『手放せば、入ってくる』という言葉が印象的だった」

「高坂さんの4歳年下だが、この差が実は大きい。大学入学のため上京してきた年にバブルが崩壊。そして就職氷河期。 今も経済成長の幻想の中にいる中高年層には、言葉で気づきを提供し続けていくことが必要。一方、経済成長の感覚すらない若者には実践で示していくしかない」

「高坂さんは移住を推奨しているが、都市のなかでも農業ができるような提案も必要では。自分が働いているなないろ畑(神奈川・大和市)はCSAを標榜しており、地域の80世帯ほどが参加している」

3人目は浅野健太郎さん。
 フリーライターで、1000人の読者がいる「脱貧困ブログ」の管理人です。

「映画関係の学校を卒業し1年間ADとして働いた後、フリーのライターに。派遣村のニュースをみて、自分も1歩踏み外していたら同じ境遇になるのではとショックを受けた。その後、貧困問題や労働問題に取り組んでいる」

「正社員として就職することは、まるで椅子取りゲーム。それが社会の構造であって、仮に就職できなくても自己責任では無い。発想を変える必要」

「自分は35歳だが、同世代にはやっぱり頑張らなきやという人もたくさんいる。自分と違う意見の人を切り捨てるのではなく、向き合い、どうやったら一緒にやっていけるかを考えることが必要」

続いて中田からも、短い時間で「脱成長をめぐる言説と事実確認」と題して報告させて頂きました。

休憩を挟んだ後は、高坂さんからのプレゼンとリプライです。
 「『脱成長』という言葉についての疑問が呈されたが、自分ももっといい言葉はないかと探している。(共同代表を務めていた)緑の党の中でも工夫が必要という議論がある」

「今の20代は車や服など新商品に関心はない。供給過剰で商品があふれている現代には、限定商品(ホンモノ)を適量・適正に生産するという考え方が必要。売上拡大は目指さず売り切れ御免の商品。小さな市場のなかで、ほどよい競争や切礎琢磨を。
 必要なところに金は使っていいし、地域で活発に循環すれば安心して幸せに暮らすことができる」

「移住を推奨しているのは、多くの人を田舎に導きたいという私の戦略から。都市部での取組を否定しているわけではない。自分の地元である練馬区では商店街をリノベーションして街づくりをしているなど、都市部でも様々な取組みがある」

引き続き、パネリスト及び参加者との間で意見交換。

年配の男性からは「自分が働いていた頃の会社と、現在の息子の会社とでは職場環境が全く違う」との意見。
 白川さんからは「日本では教育、住宅、病気等でお金が必要という強迫観念が強い。社会全体で支える仕組みが必要ではないか」との意見。
 イノベーション(AIなど)と経済成長に関する議論もありました。

高坂さん「移住が成功するかどうかは本人の問題意識次第。島根県など行政が間に入ることによってスムースに進んでいる地域もある」

ゼネコンを退職し独立された若い建築士の方からは「とてもゼネコンにいた頃ほどは稼げない。下請け構造が問題ではないか」との発言。
 4歳の子どもがいるシングルマザーの方は「正社員のこともあったが拘束時間が長く、自分は派遣の仕事を選んでいる」と話されました。
 「知人が会社を辞めて介護の仕事をすると言った時、回りからは『舞台から降りたね』と言われていた。このような感覚が現実」というエピソードを紹介された男性。

白川さんから高坂さんへの「地方への移住は健康でなければ難しいのではないか」との質問に対しては、高坂さんから「実感として田舎に行くと健康に対する不安感は少なくなる。医療や福祉面で取組事例も各地で増えてきている」等の回答。

最後に3人のゲストから。
 田部さんからは「国賠訴訟等に関わるなか、広報戦略の重要性を痛感することもある。 メディアにも響くようにしていくことも重要では」との提案。

浅野さんは「聞く耳を持ってもらうためには歩み寄ることが必要。敵にしてはいけない。違う価値観を持つ人に、どうやったら脱成長が楽しいということを伝えていけるか、諦めず腰を据えてやっていきたい」と決意を述べられました。

最後に石崎さんから「自分の体や健康を意識することから、自分自身を大事にするということにつながっていけばいいと思う。脱成長は必然であり議論する時期は終わっている。これからは実践。多様な価値観を包摂しつつ、色んなアイディアを出していきたい」とのコメント。

終了後は、近くの(いつもの)中華料理店に移動し、3人のゲストの方も交えての懇親会。
 日曜の夕方でしたが、ほとんど満席で賑わっていました。
 なお、次回の脱成長MTGは5月頃を予定しているとのことです。