「桜若葉の間に在るのは、切つても切れない むかしなじみのきれいな空だ」
高村光太郎「あどけない話」(『智恵子抄』所収)より
ソメイヨシノも散り果て、季節は行きつ戻りつしつつも急ぎ足で初夏に向かっています。
そんな2017年4月23日(日)は、東京・六本木のハリウッドビューティープラザへ。
「熊本地震復興支援コンサート~あれから一年~ in 東京」が開催されました。
昨年7月のチャリティーコンサート以来の2回目。会場はほぼ満席です。
司会は、今朝、熊本から来られたフリーアナウンサーの風戸直子さん。
10年も前になりますが、熊本在勤・在住中に色々とお世話になった方です(昨年と今回のコンサートは、風戸さんから紹介頂いたものです)。
演奏は Fairy Flower の皆さん。
昨年の地震直後、熊本出身の実紗さん(ソプラノ)の呼びかけで結成されたクラシック演奏者によるユニット。東京近郊や熊本で復興支援コンサートを継続されています。
プログラムの最初は、ピアノとチェロの伴奏で「グリーンスリーブス」(イングランド民謡)、「歌に生き恋に生き」(プッチーニ『トスカ』より)等。
ソプラノのお2人による澄んだ歌声が会場に響きます。
続いてゲストにお迎えした佐藤泰弘さん(バス)が登場。豊かな音声で「憧れを知る者のみが」(チャイコフスキー)等を披露されました。
さらに、佐藤さんと Fairy Flower の皆さんで「ふるさと」(岡野貞一作曲)を合唱。懐かしいメロディーと歌詞に、会場の空気が柔らかくなります。
朗読活動をされている飯島晶子さんも登壇されました。
熊本市立城東小学校の皆さんが作った「歌にのせて」の歌詞を朗読。熊本城に隣接し震災直後は避難所として利用されていた小学校の生徒達が作った歌だそうです。
続いて風戸さんと二人で、「くまモンあのね」(小山薫堂)を朗読。
地震直後から、ツイッターのハッシュタグ「#くまモンあのね」に寄せられた熊本の人たちの想いと、被災者の方達を気遣う熊本県外の方達のメッセージをまとめたものです。
熊本で被災された人たちの投稿を風戸さんが、熊本を想う県外の方達の投稿を飯島さんが交互に読んでいきます。
水を打ったような会場では、涙をぬぐう人も。
休憩後には葉祥明阿蘇高原絵本美術館の葉山祥鼎館長が登壇。
南阿蘇村にある美術館も大きな被害を受け長期間の休館を余儀なくされたこと、地震から1年が経って枯れ始めた木があるなど、地震の影響が続いている南阿蘇の状況について紹介して下さいました。
スクリーンに美術館の素晴らしい光景を映写しつつ、「庭の道は人が歩くうちに自然にできたもの。自然は最もふさわしい道を私たちに教えてくれる」等の言葉も。
後半の演奏は、にぎやかに春の唱歌メドレーから。
「サンバおてもやん」(森岡賢一郎作曲)、「くまもとサプライズ」(ボンボ藤井作曲)では、会場の子どもたちもステージに出てきて踊り、走り回ります。
佐藤さんも加わり、全員でマイウェイ(フランサワ、ルヴォー作曲)を熱唱。
そして最後は、熊本応援ソング「いつまでも」(タイチジャングル作詞作曲)。
熊本で演奏活動をされている方も交え、会場の参加者とともに合唱です。私は昨年7月に初めて聴きましたが、改めて素晴らしい曲です。
「目を背けたい、涙でもう何も見えない もどかしい、何もできない だから伝えたい」
「それでもかわらない熊本の広い空を どんなに離れていてもいつも思っています
いつでもどんな時も いつまでも」
歌を口ずさみながら、昨年8月、葉祥明阿蘇高原絵本美術館を訪ねた時のことを思い出しました。
翌日から再開するという慌しい時だったにもかかわらず、スタッフの方は準備中の建物に入れて下さり、庭からは素晴らしい南阿蘇の光景を眺めることができました。忘れられない思い出です。
熊本地震から1年が過ぎましたが、仮設住宅に住んでおられる方、自宅は崩れたままの方、建物は無事でも中の片付けは終わっていない方など、まだまだ被災は継続しているとのこと。
素晴らしいコンサートでした。
「あの日、あの時があるから今があります。今日のコンサートが新しいスタートです。ぜひ熊本に遊びに来て下さい」
風戸さんの言葉を、しっかりと胸に刻んでおきたいと思います。