2017年5月6日(土)も好天(畑は水不足気味です)。東京・世田谷へ。
典型的な都会郊外の私鉄駅・小田急成城学園駅から二子多摩川駅行きのバスに乗り換え。バス停を降りた一帯は外環東名ジャンクションの大規模な工事中です。
ネットで調べ、主催者の案内地図よりて1つ手前のバス停で降りたのですが、これが失敗。工事に伴う通行止めの道路が多く、遠回りしてようやく会場に。
この日、開催されたのは「世田谷区の屋敷林 お別れ製材ワークショップ」。
多くの家族連れ等が集まりつつあります。私は初めてでしたが、この日の参加者は50名程度、子どもが10人以上いました。
主催は、町で伐られた木を活かす活動に取り組んでいるマチモノ(街の木を活かすものづくりの会)です。
9時半を回って、マチモノ代表の湧口善之(ゆぐちよしゆき)さん(建築家、木工家、緑地コンサルタント、株式会社建築と木のものづくり研究室代表取締役)からの挨拶でスタート。
「この辺りの屋敷は南側以外はシラカシが植えられ、北風を防ぎながら、農具の柄や薪に使われていた。街中の木は色んな理由で伐られてしまうが、それで終わりということではなく、みんなで製材し物を作ろうというワークショップ等を開催している。
今日も面倒な手作業が中心だが、みんなで力を合わせて一緒に一日作業することで、街の記憶を共有し、将来につないでいきたい」
一緒に活動されているというグリーフサポートせたがや の方からも挨拶。
見慣れていた景色を突然失った時の喪失感は、グリーフケア(身近な人と死別し悲嘆に暮れる人を支援すること等)に通じるところがあるとのこと。
事務局長の横山恵さん(イラストレーターをされているそうです。)からスケジュールの説明を受けた後、さっそく作業に取りかかりました。
最初の作業は、数日前に伐ったというシラカシの丸太を木挽台(作業台)の前まで移動すること。区の農業公園に設置するベンチに加工するそうです。
レール代わりの丸太をかませ、力を合わせてずらすように移動させます。早速の力仕事です(ちなみに私はほとんど見学でした。すみません)。
500kgほどはあるそうで、シラカシほど堅くて重い木はなく、ゲンノウ(玄翁)など工具の柄にも使われているとのこと。
さらに、みんなで声を合わせつつ作業台の上に持ち上げます。
断面の木目を確認し回転させてからクサビを打ち込んで固定。皮むき器やノミ等を使って樹皮を剥いていきます。堅くてすべり、これもなかなか力がいる作業です。
根元の方は中が腐って空洞になっているため、70cmほどを切り落とします(丸太を切ることを「玉切り」といいます)。刃の部分にギザギザの隙間がある「まどのこ」を使います。「窓」は切り屑を吐き出しやすくする機能があるとのこと。
湧口さんが実演しながら、使う道具や使い方、注意点などを説明して下さいます。
手本を見せてもらってから、みんなで交代しながら少しずつ鋸を引きます。腰を使って体全体で引くようにするといいそうです。
平行して樹皮剥きの作業も続けられます。
そして約1時間をかけ、ようやく丸太が切断されました。最後の鋸をとったのは女の子。拍手が湧きます。
ところが、断面をみると空洞が続いており、さらに40cmほど切ることに。
今度は湧口さんがチェンソーを使用。説明しながらわずか5分ほどで切断。これも丸椅子で使えそうです。
削り取った樹皮は集めて草木染に使います。
カマドに入れた水に浸して沸かし、色素を煮出します。
染め液は濃い茶色から紫色。これに水洗いした布やTシャツを10分ほど漬け込みます。熱いので割り箸なども使用。
さらに、色素を固定させるために媒染液に浸した後に水洗いし、拡げて洗濯紐に並べて干しました。なかなか良い色に染まったハンカチ等が、初夏の風にはためきます。
一方、樹皮を剥き終えた作業台の上の丸太は、横に切断する作業に取り掛かります。
ここで使うのは「おが(大鋸)」。
幅が広いのは平らな断面を確保するため。そのため刃面に歪みが生じないように丁寧に扱う必要があるとのことで、普段は木の箱に入れて保管し「おがさま」と呼んでいるとのこと。
水平に切れるように添え木を当て、墨付けした線に沿ってゆっくりと刃を動かしていきます。力を入れないのがコツのようです。小さな子どもたちも「おがさま」を抱えるようにして挑戦。
これも交代しながら、少しずつ少しずつ、丁寧に切っていきます。
正午を回ってお昼の時間に。
地元・世田谷でとれた野菜をふんだんに使った お弁当を準備して下さいました。
フキ、みょうが、たけのこ、新玉ねぎ、小松菜、葉大根。くき菜のコロッケ。ジャコご飯など。
13時過ぎに再開。
丸太は、引き続き交代しながら丁寧に切っていきます。
その間、湧口さんが別の丸太をチェーンソーで縦切りにし、いくつかの工具を使って切断していまきます。
歪みが生じないように板を切り出していきます。
生木なので、真っすぐにみえてもすぐに歪みが生じるとのこと。いくら平らな板にしても時間が経って乾燥すると変形するそうです。見せて頂いたもの(見本?)は自然に反って、ペン皿か器のようになっていました。
湧口さんが切り出した長い板を、今度はみんなで寸法を測って20cmほどに切断していきます。
子どもたちも器用に木工用の鋸を使います。切った板は1枚ずつ、記念に頂きました。紙やすりをかけて角をとり、表面を滑らかにしていきます。
この間、作業台の上の丸太切りの作業は続けられています。
何人かで民家(これも間もなく取り壊されます。)の裏側に回ってみました。多くの若木が生えているのをシャベルやスコップで掘り出し、希望者は持って帰って植えることに。
丸太の縦切り作業はだいぶ進んできました。途中、節のある箇所は堅いようです。
この辺りで16時を回り先に失礼することにして、残念ながら最後まで見届けることはできませんでした(その後、見事に切れたそうです。大鋸で切った断面はチェーンソーではできない滑らかさとのことで、現在も銘木等は手作業で切っているそうです)。
この日のイベントは、スタッフの方達を含めて参加者の皆さんの笑顔、何より積極的に作業する子ども達の姿が印象的でした。
頂いてきたシラカシの板、草木染めしたガーゼハンカチ。
シラカシとケヤキ(たぶん)の苗木は庭に植えてみました。日当たりが良くないのが心配です。
街には、道路工事など様々な理由で切られてしまう街路樹や屋敷林の木が沢山ありますが、多くは廃棄物として処分されているのが現状とのこと。
「マチモノ」は、それらの木を活かすために、この日のような製材や木工を中心としたワークショップや勉強会を通じて、木のことや物作りの技術を学ぶ活動をしているのです。
私も機会があれば、また参加したいと思っています。
スタッフの皆さま、有難うございました。