【ブログ】「Present Tree in ひろの」交流イベント

2017年11月26日(日)。青空の下、1台のバスが新宿駅西口を出発しました。行き先は福島・広野町。
 「Present Tree in ひろの」の活動の一環としての交流イベント(日帰りバスツアー)です。

プレゼントツリーとは、大切な記念日に樹を植えることで森林再生と地域振興につなげるプロジェクト。
 主催は認定NPO法人環境リレーションズ研究所です。

事務局長の平沢真実子さんからの行程等の説明に続き、鈴木敦子理事長から、
 「被災地の復興をお手伝いする活動をしているが、避難指示が解除されたばかりの町村もある中、広野町は復興が進んでいる。
 お陰で2年目の「Present Tree in ひろの」は里親様も満員御礼。復興のモデルの一つとなることを期待している」等の挨拶。

常磐自動車道・友部SAでの休憩の後、30名の参加者に一人ひとりにマイクが回され自己紹介など。
 初めての方もおられますが、このプレゼントツリーの関係を含めて何度か浜通りを訪ねておられるリピーターの方が多いようです。

渋滞も無く、順調に予定の10時半に最初の目的地(浅見川沿いのオーガニック・コットン植栽地)に到着しました。ここでコットンの収穫作業を行います。
 NPO法人広野わいわいプロジェクトの皆さんと、広野町の遠藤智町長さんが出迎えて下さいました。
 (私も1年振りの訪問・再会です)。

遠藤町長さんからは、
 「これまでの皆さんの支援に感謝。10年間の協定に基づいて防災緑地でプレゼントツリーの植樹祭を行った昨年3月が、大きな飛躍の時期と重なった。浜街道(県道)が開通し、常磐道の拡幅工事も始まり、広野火力発電所には最新の施設(IGCC)が設置されることが決まった。
 震災前の人口5500人のうち4000人が帰町。避難されて来ている方や復興作業に従事している方達も一つの家族として、日本一の村を作り上げていきたい。これからも皆さんとともに歩んでいきたい」
等の丁寧な挨拶を頂きました。

わいわいプロジェクトの根本賢仁理事長からも歓迎の挨拶を頂き、鈴木理事長からは「いつも私たちの方が元気を頂いている。これからも通い続けたい」等のお礼の挨拶。

続いて、磯辺吉彦事務局長が収穫の手順等を説明して下さり、早速、作業に取り掛かりました。

今年は天候不順で生育は良くなかったそうですが、それでも多くのコットンがたわわに稔っています。コットンボールが弾けて垂れ下がっているものも。

ビニール袋を2つ渡され、木から直接収穫したきれいなものと、地面に落ちてしまったものを分けて集めていきます。

素晴らしい青空。作業をしていると汗ばむほどの陽気です。
 参加者の中にいた2人の小学生の女の子は初対面だったようですが、たちまち仲良くなり、5年生のお姉さんが小さな子の面倒をみつつ、楽しそうに収穫しています。たちまち袋は一杯に。

畑の脇には浅見川の清流が流れています。
 鮭が遡上するそうですが、震災から6年目の今年は数は少なかったそうです(この辺りの事情は、午後、木戸川漁協で詳しくお聞きすることができました)。

正午前に作業は終了。それなりに大量の収穫です。
 防災緑地の脇を歩いて集会施設へ。地元のお母さん達が中心になって昼食の準備をして下さっていました。

熱い汁物(地元産の野菜たっぷり)に、これも地元産の新米。漬物やりんごも。
 そして特別メニューは鮭のちゃんちゃん焼き。味噌味と塩味の2種類。木戸川で水揚げされた貴重な2尾の鮭を準備して下さっていました(いかに貴重なものかは、午後に判明)。

心づくしの暖かい昼食を頂きながら、根本理事長と磯辺事務局長から広野町の復興の様子や、わいわいプロジェクトの活動状況等の説明を伺いました。

いわき市からは、ふくしまオーガニックコットンプロジェクトの方も来て下さり、人形などの販売も。

昼食後は、歩いてすぐの防災緑地の一画にあるプレゼントツリー植栽地へ。
 昨年3月の植樹祭で植えた苗木は、ほとんどが根付いているようです。1本1本にはシリアルナンバーが付されて折り、自分達の樹の前で記念写真を撮る新婚カップルの方も。

雑草は多くはありませんが、ヤナギなど根や茎が硬いものも生えてきていて、鎌でもなかなか切れません。

1時間ほど除草しながら斜面を登っていくと、海が見えてきました。
 冬の陽光に輝き、波の音が聞こえます。6年8ヶ月前に大惨事があったとは、とても想像できない穏やかな景色が広がっています。

防災緑地の堤上に整備された東屋の脇で、広野町の光景を見ながら、根本理事長がこれからの展望等について話して下さいました。

すぐ眼下にみえる鹿島神社も津波で甚大な被害を受けましたが、地域の方達の尽力により本殿等は修復されています(流された鳥居はまだ再建されていません)。

そして、震災後途絶えていた浜下り神事(地元では「たんたんべろべろ」と呼ぶそうです。)を、いよいよ来年4月に復活させる構想があるそうです。

ご自身も自宅や農地を津波に流された根本さんですが、未来を語る明るい表情に、心励まされる思いがしました。

集会施設への帰り道、「笑顔さんさん農場」に立ち寄りました。
 災害公営住宅等に住んでおられる方たちに区画貸し(市民農園)もされているそうです。大きな大根や白菜を収穫させて頂きました。子どもも大人も大喜びです。

お母さん達に見送られながら(ご馳走様でした!)、バスで出発。
 磯辺事務局長が同乗し、沿道の様子等をガイドして下さいます。

Jヴィレッジ(サッカーのナショナルトレーニングセンター)の脇を通りました。
 震災後、原発事故収束の拠点として利用されていたのですが、来年夏の一部再開、2019年4月の全面再開に向けて、天然芝の張りなおし等の工事が行われています。

楢葉町に入ると、車窓の光景が一変。
 除染廃棄物の仮置き場の姿が目に飛び込んできました。積んだフレコンバッグが緑色のビニールで覆われています。
 昨年11月から稼動を始めている臨時焼却(減容化)施設も見えました。

やがてバスは、木戸川漁業協同組合に到着。
 孵化場長の鈴木謙太郎さんが、木戸川(やな場)を見下ろす堤防の上で説明して下さいました(以下、中田のメモに基づくので数字など不正確な部分があるかもしれません)。

「木戸川は、震災前は本州でも有数の鮭が遡上。毎年7~10万尾を捕獲して約1500万尾の稚魚を放流し、7千尾位が帰って来ていた。そこに津波と原発事故で大きな被害を受け、事業は中断した。つらいことも一杯あったが、一昨年から事業を再開している。孵化施設も昨年復旧」
 「2015年に帰ってきたのは8443尾、昨年は7329尾だったが、今年は3413尾に落ち込んでいる」

すかさず平沢さんから「その貴重な2尾を、お昼に頂いたんですよ」と紹介がありました。

鈴木さんは穏やかに語られます。
 「鮭は放流してから3~5年位で帰ってくるから、今年の数が減った原因は放流事業の中断であることは明らか。一方で、今年帰ってきた鮭は全て天然のもの。人の手を掛けなくても、それなりに帰ってきたという自然の力に感動した」

その後、孵化場内を見学させて頂きました。
 パネルで説明を伺った後、実際に孵化させている鮭の卵を見せてもらいました。ふだん食べるイクラよりは大ぶりに見えます。

よく見ると、黒い点のような目ができているものもありました。
 発眼期と呼ぶそうで、これから1ヶ月後位で孵化して「仔魚(しぎょ)」となり、さらに2ヶ月ほど飼育した「稚魚(ちぎょ)」を川に放流するのだそうです。

ちなみに今年の放流数は、震災前の一日分とのこと。
 シーズンは過ぎているとはいえ、ほとんどの設備は空いています。

最後に、鈴木さんを主人公にした本(奥山文弥『サケが帰ってきた!』 )を求めさせて頂きました(サインまで頂きました。有難うございました)。

木戸川漁協を後にしました。
 離れた国道からも、除染廃棄物の緑色のビニールシートが望めます。

道の駅よつくらに立ち寄ってお土産や軽食を求め、一路バスは東京へ。

友部SAでの休憩後、再びマイクが回されました。
 「1年ぶりに来て町の変わりよう、賑わいに驚いた」「地域の方達とは親戚のような気がしている。皆さんが元気な様子が嬉しかった」「今回も暖かい気持ちになった」「大災害を経て復興に立ち向かっている精神力の強さに感じ入った」等の感想。
 「お母さん達ともっと交流したかった」との意見も。

行きのバスの中では緊張気味だった参加者の皆さんは、帰りは総じて饒舌でした。。

若干の渋滞はあったものの、予定の20時を大きく過ぎずに新宿駅西口に到着。
 それぞれに感じたものを胸に収め、帰途に着きました。

今回も現地の皆さまには温かい心遣いを頂きました。有難うございました。スタッフの皆さまの丁寧なコーディネートにも感謝申し上げたいと思います。

次回の「Present Tree in ひろの」スタディツアーは、明年4月に予定されている浜下り神事に合わせて実施する計画とのことです。