【ブログ】たまごのひみつ〜福島で育てる1パ ツク830円の卵のはなし〜

2018年1月14日(日)。
 シェア奥沢(東京・自由が丘)での「こどものための名画おはなし会」の後は、有楽町の無印良品へ移動。

14時からOpenMuji(3F)で開催されたのは、「たまごのひみつ~福島で育てる1パック830円の卵のはなし~」と題するトークイベント。

無印良品の方と「日本食べる通信リーグ」工藤明恵さんによる挨拶で開会。
 「生産者のこだわりを知って食べるとより美味しい」という趣旨のイベントが、東京の真ん中で継続的に開催されているそうです。

この日の進行役は成影沙紀さん。
「食べる通信の取組を知って衝撃を受け、今年4月に前職を辞めて東北開塾に就職した。熱い思いを持った生産者が多いが、そのなかで本日は、昨年(2017年)11月号で特集した菊地将兵さんに来て頂いた」等と菊地さんを紹介。

大野村農園(福島・相馬市)の代表で、採卵鶏と野菜を経営。
 1パック830 円(!)の「相馬ミルキーエッグ」は好評だそうです。

菊地さんの話が始まりました(文責・中田)。

「東日本大震災の時は横浜にいて、母親が働いていた旅館が津波で流される映像をテレビでみた。ようやく数日後に連絡がついて無事が確認された」

「それまでも農業をやりたいと思っていたが、大震災で決心がついた。
 みんなには無謀ではないかと言われたが、5月に郷里の福島・相馬市に戻り、アルバイトをしながら畑を借りて農業を始めた」

「20カ所、3haほどの畑を借りている。朝早くからタ方遅くまで畑に出るなどして、次第に信頼して貸してくれる人が増えてきた。ノミニケーション(お酒の付き合い)も大事(笑)」

スライドには、ニワトリを抱いた幼い男の子の姿が映し出されました。4歳になるご長男だそうです。

「原発事故後、子ども達は土にも触れられなくなり、どんどん自然から切り離される方向になっている。子ども達のためにニワトリ小屋を開放している。
 一般的な効率優先の鶏舎ではなく平飼い。農業体験の受け入れは、子ども達に免疫を付けてもらうという意味もある」

「ヒナは、生後すぐのもの(国産の卵肉兼用種)を導入。
 エサは自給。米ぬか、くず米、魚のアラ等を卵と交換で分けてもらい、今まで捨てられていたものを資源として循環させている。これは自分が考えたことではなく、先人達が当たり前に行っていたこと」

「ビタミン補給のため、夏には草を刈って与えている。冬場は鶏のエサ用として白菜やキャベツを栽培」

一般的にスーパーで売られている卵(1パック130円)とミルキーエッグ(830 円)を割り、見比べさせてくれました。

「見たとおりスーパーの卵の黄身の色は濃く、赤みがかっている。この色は、消費者の好みということでパプリカで着色されているもの。それに比べると私の卵は白っぽい。薄い黄色はキャベツの色素。見栄えでなく中身で売っている」

「いい育て方をした卵は、黄身自体がパワーを持っている」と言って、手で黄身を持ち上げて見せて下さいました。

会場の参加者からは、養鶏の規模等について質問が出ました。

「養鶏は最初100羽からスタートして今は600羽ほど。自然卵養鶏は、地域の資源を循環させる観点から1000羽が限界と言われている。規模拡大するつもりはない」

「採卵が終わった鶏は、全て自分たちで掘いている。ワンシーズンに100程度だから自家で消費できる数。最近は『命の授業』等として自分たちで捌いてみたいという人も増えてきている」

「ナタを持って固まってしまった人、ぶるぶると震えていた人も、最後は美味しいと言って食べてくれる。自分の手で命を奪うことは貴重な体験になる。ある体験会の後、参加者が『人はなんで戦争するんだろう』と語り合っていた」

「ミルキーエッグは、昨年、770円から830円に値上げした。50円分は母子家庭や施設等への寄付金に充てている。海外の金持ちはオーガニックを食べて貧しい人はジャンクフードといった話も聞くが、貧しい人は良いものを食べられないというのは大問題。活動に賛同してくれている人も多い」

「母子家庭などの子ども達の受け入れもしている。農家は家で仕事をしているため、受け入れやすい環境にある。研修生は年間20~30人。期間は問わない」

「農業は人を助けることもできるのではないかと思っている。食育などという言葉は昔は無かった。子ども達は家業を手伝うことで、自然に命の大切さなどを学んでいたのだと思う。うちの子どもも器用に卵を拭いてくれる」

「地元では、今も学校給食に地場産のものを使うことに反対する声がある。同じものなら、少しでも被ばくの心配のない県外のものを使おうと。理屈は分かるが悔しい。
 それであればと、地域のサトイモ・土垂(どだれ)の栽培を復活させた。相馬にしかない伝統野菜を作り、学校給食にも使ってもらえるようにしたい」

お土産に「東北食べる通信」の2017年11月号(菊地さん掲載号)と、ミルキーエッグ2個を頂きました。

「大野村農園のハッピースマイルライフ・鶏(とり)かえっこで生きていく」という見開き2ページの記事は、楽しいイラストつきで、「モノもヒトも巻き込んでぐるぐる回っている」様子が描かれています。

 別に1パック購入させて頂きました。

割ってみると、黄身だけではなく白身も盛り上がっています。
 こんなに濃厚な卵を食べたのは、初めてかもしれません。