【ブログ】宮沢賢治研究会・第297回例会

2018年2月1日(木)、いよいよプロ野球のキャンプイン。昨年の悔しい思いを晴らしてくれるでしょうか。
 ちなみに久米川駅(西武新宿線)前にあるお好み焼き屋さんには、地元の英雄・オコエ瑠偉選手の色紙やレプリカ・ユニフォームが飾られています。

その日の夜から雪になりました。翌2日朝は、またも一面の雪景色です。

3日(土)の節分の日は、東京・渋谷へ。
 渋谷駅とその周辺は、いつまでも再開発中。コンクリートに囲われている渋谷川(童謡「春の小川」ゆかりの地だそうですが)。
 氷川神社は、長い石段もある立派な境内です。

その近くにある氷川区民センターで、13時30分から宮沢賢治研究会の2月第297回例会が開催されました。

参加者は30名ほどです。

前半は、お茶の水女子大・大学院博士後期課程の黄毓倫(こういくりん)さんによる「宮沢賢治と浅草オペラ(続)-詩「函館港春夜光景」を例に-」と題する報告。

大正時代の大衆演芸・浅草オペラに着目しつつ賢治のテクストを探り、賢治の心境との結び付きについて考察しようという内容です(以下、文責は中田にあります)。

「賢治の『函館港春夜光景』(春と修羅第2集)には、浅草オペラ関連の記述がある」として、賢治の詩に登場する浅草オペラの役者達(田谷力三、高田正夫、安藤文子ら)について、スライドを映写しつつ説明されました。

そして、浅草オペラの「エロス的要素」が、妹・トシを失った賢治の苦悩や葛藤とも結び付いていると結論付けられました。

この報告に対しては、会場から、研究の方法論を含めた批判的なコメントも出されました。
 プロの研究者同士の真剣勝負の場(学会の雰囲気)です。 

休憩と事務局からの報告に続き、後半は宮川健郎氏(武蔵野大学教授、大阪国際児童文学振興財団理事長)による「賢治童話の『絵本化』は可能か」と題する報告。

「賢治童話を『絵本』にすることには否定的。最初の『絵本化』である『セロひきのゴーシュ』(1956年、茂田井武・画)では賢治のテクストは再話されていたが、10年後に再刊された時は賢治のテクストに戻っている。つまり『絵本』ではなく挿絵のある『絵童話』になっている」

「絵本とは、絵が語る視覚的なもの。ページをめくることによって展開する」とし、その理想形として、持参されたレオ・キレーニ『あおくん と きいろちゃん』、松谷みよ子/瀬川康男『いない いない ばあ』、柿崎一馬『はるにれ』は理想形ではないか」等を掲げ、朗読して下さいました。

「今も賢治作品の『絵本化』の試みは盛んに行われている。視覚的、聴覚的イメージの豊かな賢治のテキストが画家たちを駆り立ててやまないのだろう。しかし、絵本化を阻んでいるものは、賢治のテクスト(原作)そのものではないか」
 というのが、宮川先生の結論でした。

学生時代に友人に勧められて『稲作挿話』を読んで以来、宮沢賢治の(ゆるい)ファンになった私ですが、より深い学問の対象として、賢治を愛する方達による研究会が開催されていることを知ったことは、貴重な経験となりました。

テーマによっては、また参加したいと思います。