2018年9月30日(日)の午前中、福島・喜多方市山都町の長谷川浩さん(福島県有機農業ネットワーク理事)から豚肉が届きました(予想以上に大量!)。
耕作放棄地に放され、地元産の餌で育てられた「幸せだった豚」とのこと。豚肉の部位や脂身の活用法など、長谷川さんらしく詳細なメモも付けて下さっています。
「豚主」(1口オーナー)の1人として、山都を思いながら美味しく頂き(写真右はナス、栗と揚げ・煮付けたもの)、幸せを分けてもらっています。有難うございました!
その日の深夜から未明にかけて台風24号(チャーミー、Trami)が関東地方を通過。ものすごい風の音です。
翌朝、雨戸を開けてみるとベランダは悲惨な状況ながら、週始めは台風一過の青空。職場近くの日比谷公園の地面には大量の銀杏。
農家には大きな被害が出たようです。お見舞い申し上げます。
10月2日(火)の終業後は東京・神田駿河台の連合会館へ。
「幸せな暮らしと怠ける権利一働き方を変えるために」と題するトークセッションが開催されました。
『幸せのマニフェスト-消費社会から関係の豊かな社会へ』日本版(中野佳裕先生訳)が出版社・コモンズから刊行され、著者のステファーノ・バルトリーニ先生(イタリア・シエナ大学准教授)が来日されているのに合わせて開催されている連続講座の3回目です。
参加者は30 名ほど。
18時45分過ぎ、主催者のコモンズ代表・大江正章さんの司会により開会。
まず、小谷敏先生(大妻女子大学教授)から、今回の著書についてのコメント(以下、文責は全て中田にあります)。
「著書を拝読し、自分と共通している主張が多いことに驚いた。日本人も働き過ぎ」
「様々な幸福度の指標づくりが進められているが、上位を占めるのは経済的には貧しい国ばかり。アメリカの幸福度は主要中最低。成長万能主義により人間関係は弱体化し、都市空間や環境は荒廃」
「リーマンショックは市場万能主義の終焉を告げるものだった。『国家』と『市場』に代わって21世紀を導く新しい原理は見つかっていない。トランプ現象や欧州の移民排斥、日本の復古主義はそのために生じた混乱では」
続いてバルトリーニ先生がマイクを取られました。
中野佳裕先生(早稲田大学次席研究員)が逐語通訳して下さいます。
「経済成長とは、農業社会から工業社会に移行する過渡期で起こった一時的なもの。確かに貧困から解放してくれた。自分たちの世代は、その経験を親から聞かされてきた」
「1980年代のレーガン、サッチャー政権から始まったネオリベラリズムは、経済成長を押し進めるように社会を作り変えてきた。私たちの社会(年金、公的債務等)は経済が成長することを前提に設計されている。
しかし、経済成長はある段階を超えると様々な問題を解決できなくなる。マスメディアの広告は消費を刺激し続け、人々はオーバーワークになり、人間の社会関係は破壊されて幸福度が低下している。若い世代はそのことに気づき始めている」
「成長が望めない社会で無理に成長を求めようとしているため、座標軸が失われて恐怖が広がり、自分たちを守ろうとしてナショナリズムが広がっている。
そうではなく、より人間的な社会を作るために取り組んでいきたい」
これに対して小谷先生から、
「バルトリーニ先生とはほぼ同世代で、同じ敗戦国として似たような経験をしている。私も両親から戦後の苦労話を聞かされてきた」
「しかし今の学生達は、生まれた時から不景気で質素、倹約が身についている。ぜいたくには批判的で、経済成長は終わったことを体感している」等のコメント。
10分ほどの休憩を挟み、再びバルトリーニ先生が発言。
「自分もシエナ大学で似た経験をしている。私の授業は必修ではないが、履修した学生の多くが興味を持ってくれる。私たちの世代は何でもお金を出さなければ商品を買えなかったが、今の学生はインターネット等のフリーのサービスに慣れているなど、資本主義のメンタリティを有していない」
会場からは、ジェンダー、資本主義をどうするか等について質問が出されました。
これらに対してバルトリー二先生からは、
「幸福度は女性の方がより大きく低下している。フェミニズム運動が失敗したのは、女性を男性と同列にしようとしたため。そうではなく、女性的な価値観(ケア、スロー等)をより重視する社会に変えていくという視点が重要」
「資本主義を打倒するのではなく、経済の中の一つのピースと位置づけ、人々が幸せになるためにできることをさせれば良い」等の回答。
最後に中野先生からお2人に対して、「大江さんもオーバーワーク。救って下さい」と投げかけられたのに対して、バルトリーニ先生は笑いながら「自分も働き過ぎで助言はできない」。
小谷先生は「自分は息子から、いつも家でゴロゴロしている自称・社会学者と思われていたらしい(笑)」等の発言。
大江さんは苦笑交じりに、
「小谷先生の『怠ける権利! 』には漫画家・水木しげるの『なまけ者になりなさい』という言葉が紹介されているが、その意味は「好奇心の赴くままに生きよ」とのこと。であれば、自分も怠けられているのかも知れない」等と発言。
和気葛々とした雰囲気のうちにセッションは終了しました。
本ブログ執筆時点では、この日求めたバルトリーニ先生、小谷先生の著作ともに読了していません。誤解あるいは理解不足の点もあるかとも思われます。
しっかりと読んで勉強したいと思います。