【ブログ】身近なところに農があることの有難さ

令和元(2019)年度も残りわずかとなりました。
 様々な桜のほか、ベニバナトキワマンサク、アセビ等も咲き誇っています。1年のうちで、最もわくわくとし、心踊る季節のはずなのですが。

ところが今年の春は、新型コロナウィルス禍の暗雲が世界を覆っています。
 3月26日時点で世界で50万人近くが感染、2万人以上が死亡。

 このことは世界の経済にも大きな影響を与えています。
 下のグラフは、本年に入ってからの日本の輸入額の状況。

財務省「貿易統計」によると、本年1月の輸入額は前年同月に比べて3.6%減、2月は14.0%減(速報値)。

 特に、新型コロナウイルスの感染拡大が早かった中国からの輸入は、5.7%減、47.1%減と大きく落ち込んでいます。機械類等だけではなく、食品についても3割以上減少しています。

こちらは、日本の食料の海外依存率(1-自給率)の推移。
 カロリーベースでみた食料の海外依存率は、1960年には20%(自給率80%)だったのがほぼ一貫して上昇傾向で推移、2019年には63%(自給率37%)となっています。
 金額ベース、穀物の海外依存率も、同様に右肩上がりで推移しています。

 このように、私たちの食は大量・長距離輸送された輸入食料に依存していることは、諸外国と比べて突出して大きいフード・マイレージにも現れています。
 (ちなみに中国の輸入食料のフード・マイレージは計測していませんが、総量では日本を上回り、1人当りでは下回ると思われます。)

海外からの食料輸入の減少は、食料の安定供給に支障を及ぼす恐れがあります。
 特に3月以降、新型コロナの感染が、穀物等の主要輸入先である米国等に広がっていることは、大きなリスク要因です。
 都知事が会見で週末(今日、明日です)の外出自粛を要請した時には、スーパー等で食料の買いだめが起こり、一時的に品薄になるという現象も生じました。

このようななかで、心励まされるいくつかの情報発信に接することができました。

 ひとつは、ポケットマルシェ(ポケマル)の高橋博之さんのSNSへの投稿
 ポケマルとは、生産者と消費者を直接つなぐアプリ。スーパー等の大量流通システムに代替する自律分散型の物流の試みです。

 「パニックにならず、ひとりでも多くの人に代替策があることを知ってほしい。スーパーは品切れでも、畑にはある」と高橋さんは発信されています。

もうひとつは、3月24日付けの日本農業新聞に掲載された小谷あゆみさん(農業ジャーナリスト)のコラム

 「農業・農村は、一極集中した都市の不安を救う『心の疎開先』としての役割を果たしてきた。都市が農の本当の価値に気付き、存在価値を見直すことが、都市も農村も強くするはず」と主張されています。

さらに、大竹道茂さん(江戸東京・伝統野菜研究会)が、ご新著『江戸東京の物語』を寄贈して下さいました。

 江戸東京野菜の由来といった物語だけではなく、都市化で消えつつある伝統野菜の復活に取り組む生産者、事業者、NPO、学校関係者、野菜ソムリエ等の方たちの奮闘記でもあります。

本書を拝読すると、農の役割とは単に農産物を供給するだけにとどまらず、その地域の歴史や風土、伝統を次代につないでいく役割も担っていることも理解できます。

 身近なところに農地があり、そこを耕す生産者の方がおられるということは、他には代えがたい、お金では買えない大切なことなのです。

 新型コロナ禍の1日も早い収束を祈りつつ、私も消費者の1人として、身近に農があることの有難さを改めて噛み締めている週末です。