−濱田武士『魚と日本人−食と職の経済学』(2016/10、岩波新書)−
https://www.iwanami.co.jp/book/b266373.html
著者は1969年大阪府生まれ。北海道大学大学院(漁業経済学)を修了し、東京海洋大学准教授を経て現在は北海学園大学経済学部教授。
本書は、近所にあった鮮魚店が閉店したことに「まちの暮らしの楽しみが一つ消えた」と著者が嘆く場面から始まります。顕著な「魚離れ」(消費量の減)という「食べる人たち」の現実。日本独自の文化である「魚食」が廃れつつあるのです。
著者の視点は、消費の現場から順番に上流(生産の現場)に向かっていきます。
「生活者に売る人たち」(鮮魚店や料理人)、「消費地で卸す人たち」(仲買人やセリ人)、「産地で捌く人たち」(荷受人や加工業者)、そして「漁る人たち」(漁師)。
日本独自の豊かな魚食文化は、多くの職人たち(著者は「魚職」と呼びます。)に支えられてきたことが明らかにされます。
そして現在、市場経済や効率主義が蔓延することで、命がけで漁をしている人への敬意は薄らぎ、魚職たちの「誇り」も傷つけられているのです。
著者は「魚食と魚職の復権」「魚を取り扱う人たちのネットワークの再生」を提言します。
「食は職が支えている」こと、人が人を頼りにしていることを再認識し、他者に敬意を払うことを大切にすること。魚食と魚職を考えることは、効率化に囚われ過ぎている日本経済を再び豊かにするきっかけになるとしています。
出所:
F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
No.219、2021年6月10日(木)[和暦 皐月朔日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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