【豆知識 No.231】「地域主義」について

大江正章さんが一貫して取り組んでおられたテーマの一つが、「地域主義」でした。
 現在、地域主義というと、グローバル化に対抗するEU統合など政治的な動きを指す言葉としても用いられますが、ここで言う地域主義は、それとは若干意味合いが異なります。

玉野井芳郎(元東京大名誉教授、沖縄国際大教授)は、地域主義を「地域に生きる生活者たちが、その自然・歴史・風土を背景に、その地域の共同体にたいして一体感をもち、経済的自立性、政治的自律性(自治)、文化的独自性を追求すること」と定義しています。

この言葉から40年以上が経過した現在、経済や情報(思想や哲学も)のグローバル化が進むなか、人々は拠って立つところ(地域や場)を喪失し、ふわふわと浮遊しているかのようです。情報等には容易にアクセスできるものの自分の血肉とはならず、モヤモヤは募るばかり。コロナ禍もあって人と人との直接的なコミュニケーションも困難になっています(リンク先の図(マンガ?)231参照)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/12/231_tiiki.pdf

これに対して、自然・風土・歴史に根差した「地域」を意識し、「場」に足を付けることができれば、人と人とのネットワークが形成され、そのなかで思想や理論を参照しつつ自らの考えを磨き、多くのひらめきが生まれることとなるのではないでしょうか。

大江さんご自身、著書の中で、農山村を中心とした各地域において住民主体で積み重ねられてきた地域づくり活動の様子を取り上げ、「地域には、希望がある」と記されています。

[参考]
 玉野井芳郎『地域主義の思想』(1979.12、農山漁村文化協会)
 大江正章『地域に希望あり』(2015.5、岩波新書)
  https://www.iwanami.co.jp/book/b226334.html

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.231、2021年12月4日(土)[和暦 霜月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
 (購読(無料)登録もこちら↑から)

 (バックナンバーはこちら↓に掲載)
  https://food-mileage.jp/category/mame/