◇フード・マイレージ資料室 通信 No.231◇
2021年12月4日(土)[和暦 霜月朔日]配信
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◆ F.M.豆知識 「地域主義」について
◆ O.カレント 大江正章さんを偲ぶ会
◆ ほんのさわり 小口広太『日本の食と農の未来』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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2021年のカレンダーも残り1枚となってしまいました。新型コロナウイルス感染は国内では落ち着いているとはいえ、新しい変異株の出現に不安は消えません。今号は、故・大江正章さんを偲ぶ号となりました。
本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さった皆様に配信しています。
◆ F.M.豆知識
食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/mame/
−「地域主義」について−

大江正章さんが一貫して取り組んでおられたテーマの一つが、「地域主義」でした。
現在、地域主義というと、グローバル化に対抗するEU統合など政治的な動きを指す言葉としても用いられますが、ここで言う地域主義は、それとは若干意味合いが異なります。
玉野井芳郎(元東京大名誉教授、沖縄国際大教授)は、地域主義を「地域に生きる生活者たちが、その自然・歴史・風土を背景に、その地域の共同体にたいして一体感をもち、経済的自立性、政治的自律性(自治)、文化的独自性を追求すること」と定義しています。
この言葉から40年以上が経過した現在、経済や情報(思想や哲学も)のグローバル化が進むなか、人々は拠って立つところ(地域や場)を喪失し、ふわふわと浮遊しているかのようです。情報等には容易にアクセスできるものの自分の血肉とはならず、モヤモヤは募るばかり。コロナ禍もあって人と人との直接的なコミュニケーションも困難になっています(リンク先の図(マンガ?)231参照)。
https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2021/12/231_tiiki.pdf
これに対して、自然・風土・歴史に根差した「地域」を意識し、「場」に足を付けることができれば、人と人とのネットワークが形成され、そのなかで思想や理論を参照しつつ自らの考えを磨き、多くのひらめきが生まれることとなるのではないでしょうか。
大江さんご自身、著書の中で、農山村を中心とした各地域において住民主体で積み重ねられてきた地域づくり活動の様子を取り上げ、「地域には、希望がある」と記されています。
[参考]
玉野井芳郎『地域主義の思想』(1979.12、農山漁村文化協会)
大江正章『地域に希望あり』(2015.5、岩波新書)
https://www.iwanami.co.jp/book/b226334.html
◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/pr/
−大江正章さんを偲ぶ会−

2020年12月15日、出版社コモンズやNPOアジア太平洋資料センタ−等で活躍された大江正章(おおえ・ただあき)さんが逝去されました。地域、農と食、アジアと日本の関わりなど幅広いテーマについて、編集者・ジャーナリストとして多くの現場に足を運んで取材し、深い考察を重ねてこられました。
大江さんが亡くなった後、多くの友人・知人たちが「呼びかけ人」となって計画・準備してきた「偲ぶ会」が、大江さんが亡くなってから約1年後の12月18日(土)に、以下により開催される運びとなりました。
多くの方のご参加、あるいはご賛同をお待ちしています。
日時:2021年12月18日(土)13:00〜17:30(予定)
開催方法:基本的にオンライン(申し込み不要)
プログラム(予定):
有機農業、アジアとの連帯などテーマ別セッション
グループに分かれての質疑・議論
追悼集の紹介、大江さんの講演映像紹介 等
(終了後、希望者によりオンライン交流会を予定)
詳細は以下をご覧下さい。
「大江正章さんを偲ぶ会−ご参加とご賛同のお願い」(NPOアジア太平洋資料センタ−HP)
http://www.parc-jp.org/freeschool/event/211218.html
◆ ほんのさわり
食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
(過去の記事はこちらに掲載)
https://food-mileage.jp/category/br/
−小口広太『日本の食と農の未来−「持続可能な食卓」を考える』(2021.9、光文社新書)
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334045609

著者の小口広太(おぐち・こうた)さんは1983年長野・塩尻市生まれ(実家は農家)。日本農業経営大学校専任講師等を経て、現在は千葉商科大学人間社会学部准教授(博士(農学))。
あとがきには「本書の執筆を決意したきっかけは大江正章さんが亡くなられたこと。本書は大江さんの遺志を引き継ぎたいという決意表明」と記されています。学生時代から可愛がられ、一緒によく飲み、議論したとのこと。本書に掲載されている事例の多くは、大江さんと一緒に歩いた「現場」だそうです。
本書の問題意識は、現在の日本の食と農は、グローバル・フードシステムの下で「食の海外依存」「国内農業の荒廃」という二重の脆弱性を抱えていることにあります。
私たちの食卓は地球環境問題ともつながっていますが(「フード・マイレージ」も紹介して下さっています。)、気候危機等のリスクが高まるなか、「食と農のつながりの再構築」が必要と訴えます。そして、そのための有機農業やローカル・フードシステムの意義等について、幅広いデータを引用しつつ、分かりやすく解説されています。
また、大江さんとも一緒に歩いたという、多くの事例(現場の新しい動き)も紹介されています。
著者は「国レベルの自給率は結果でしかなく、大切なことは日々の食卓を豊かにしていくこと。手の届く範囲の自給は、日本農業の多様性を支え、持続可能な社会の実現にもつながる」と主張しています。
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。
▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 食と資本主義の歴史(平賀 緑さん、第6回 食と農の市民談話会)[11/22]
https://food-mileage.jp/2021/11/22/blog-347/
○ 2つの読書会のことなど[11/23]
https://food-mileage.jp/2021/11/23/blog-348/
○ CSまちデザイン市民講座 2題[12/2]
https://food-mileage.jp/2021/12/02/blog-349/
○ アフガニスタン 現地報告会(追記・陸高 人生横丁)[12/4]
https://food-mileage.jp/2021/12/04/blog-350/
▼ 縮小社会研究会(京都市)で、フード・マイレージについて話題提供させて頂きます。
第60回研究会「フード・マイレージについて」
日時:2022年1月17日、19:30〜21:00
場所:オンライン
(詳細、問合せ等↓)
http://shukusho.org/data/60announcement.pdf
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい(リアルのイベントが増えてきました)。
○ 趣味のお漬け物作り
日時:12月5日(日) 9:30〜14:00
場所:山梨・北杜市高根町
主催:白倉 篤さん(裏山公開版)
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/664461024519823
○ 今夜もご機嫌@銀座で農業
日時:12月6日(月) 18:30〜
場所:京橋環境情報センター(東京・中央区)
主催:Slow Food Ginza
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/836109680404931
○ 奥沢ブッククラブ第74回
遠藤周作『わたしが・棄てた・女 』
日時:12月13日(月) 19:00〜21:00
場所:オンライン
主催:奥沢ブッククラブ
(詳細、問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/950736792179328
〇 大江正章さんを偲ぶ会
(再掲・12月18日(土)、詳細はオーシャン・カレント欄をご覧下さい。)
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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「野菜や土って、いいにおいがするんだね」
「臭覚(収穫)体験だからね」
練馬区で開催された収穫イベントは、子ども達には貴重な体験となりました。
コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
https://food-mileage.jp/category/iki/
* 次号No.232は12月18日(土)[和暦 霜月十五日]に配信予定です。
より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
https://www.lunaworks.jp/
* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
発行者:中田哲也
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バックナンバー
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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
https://food-mileage.jp/category/blog/