【ブログ】CSまちデザイン市民講座 2題

コミュニティスクール(CS)まちデザインは、「食」「農」「地域」をつなぐことを柱に積極的に活動しているNPO法人。その一環として様々な市民講座も実施しています。
 もっとも、残念ながら新型コロナウイルス禍により、飲食を伴うイベントは中止され、その他の講座もオンライン形式に変更して行われてきました。

CSまちデザインのホームページより。

しかし、このところ感染が落ち着いてきているなか、2021年11月23日(火、勤労感謝の日)には、久しぶりにリアルのイベント「野菜がもっと好きになる! 収穫体験」が屋外で開催されました。
 親子対象の人気の講座で早々に満席となっていたのを、「スタッフのお手伝い」という名目で参加させて頂いたのです。

会場は、東京・練馬区大泉町の白石農園
 練馬区発祥の農業体験農園「大泉風のがっこう」という名称でも知られています。

朝8時40分頃に西武池袋線・大泉学園駅に到着。「あしたのジョー」達が出迎えてくれました。大泉はジャパンアニメーション発祥の地だそうです。

 日ごろの運動不足もあり、ぶらぶらと歩いて向かうことに。幸い前日の強い雨は上がりましたが、雲が多く肌寒い朝です。
 9時半頃に現地に到着。ちょうどCSの近藤惠津子理事長はじめ3名の方たちと同じ時間となりました。体験農園では作業されている家族連れの姿も。
 早速、集合場所のハウスの前で受付けの準備など。このイベントは早々に満席となっていたのですが、スタッフのお手伝いという名目で参加させて頂いたのです。

農園主の白石好孝さん(CS関係の講座等では何度もお世話になっています。)と最終的な進行の打合せなどしているうちに、集合時間(10時30分)のかなり前から熱心な参加者の方たちが集まり始めました。
 未就学児から小学生と、お母さん・お父さんのなど親子が20組以上、50名ほどの大人数です。

定刻となり、近藤理事長の開会挨拶に続いて、白石さんからこの日のスケジュールの説明。
 なかなか充実した内容のようです。

まずは、徒歩数分ほどの「練馬区立 中里郷土の森」 へ。
 5代130年続いた旧家の屋敷林を、区が自然観察センターとして整備した場所だそうです。

 解説員の方から練馬区にいる生きものなどの説明。生きた小さなヘビを手にとって見せてくれた時には、子どもたちから歓声も(悲鳴も)。
 貸し出し用の虫捕り網や双眼鏡なども常備されており、手ぶらで自然観察に来ることができるようになっています。

続いて屋外の観察。清流にはヤゴやホタルの幼虫も。蝉が産卵した跡なども説明して下さいます。
 説明よりも、ドングリ拾いに熱中する子ども達も。

近くの畑に移動し、ここで最初の収穫体験です。
 カブ、ラディッシュ、春菊、小松菜、水菜、ルッコラなどを、ビニール袋に山盛り詰め放題 (!)とのこと。1袋で足らなければ200円の追加でもう一袋分を収穫できます。
 子ども達はもとより、大人たちも歓声を上げて、前日の雨で少々ぬかるんでいる畑に入って収穫。

 「野菜がかわいそうだから僕はとらない」と言う男の子には、スタッフの人が「たくさん食べてあげることが野菜のためにもなるんだよ」と声を掛けていました。
 (私も200円で春菊など山盛り収穫させて頂きました。有難うございます。)

次はブロッコリの畑です。晴れ間が広がり、陽が射して暖かくなってきました。
 白石さんと農園スタッフの方が大きなナイフを使って収穫し、畑の中に並ぶ子どもたちに1個ずつ手渡し。
 自分の頭くらいの大きさと、ずっしりとした重さに、子ども達が驚いています。

最初のハウスに戻って一旦休憩した後は、白石さんによる野菜クイズの時間です。
 葉っぱを見て野菜の名前を当てたり、白菜の葉っぱは何枚あるかの3択クイズなど(正解は約90枚だそうです)。
 白石さんの優しく、興味を逸らさないような語り口に、子ども達は目を輝やかせ聞き入っています。さりげなく日本の自給率の話なども織り込みます。
 野菜や農業に興味を持つ子ども達が(親も)、この日、確実に増えたようです。

さらに、アスパラガスのハウスを見学。見慣れないアスパラガスのジャングルに、子ども達の眼が丸くなっていました。
 そして、いよいよメインイベント・大根の引っこ抜き体験です。

家族毎に、青首大根と練馬大根のどちらかを1本を選んで収穫。
 青首大根の方は子どもの力だけでも簡単に抜けましたが、練馬大根には四苦八苦。引っ張ってもびくともしません。お母さんやお父さん、さらには白石さんや農園スタッフの方にも手伝ってもらって、何とか引っこ抜きました。
 コツをつかんだのか、他の家族の分の手伝いをしてくれる少し大きな男の子も。

 土の中から引っこ抜いた練馬大根は、真っ白で、長さ1mを優に超えていそうです。かなりの重量もありますが、子ども達は誇らしげに頭の上に掲げる子ども達の表情が印象的です。

 青々とした葉っぱも新鮮でおいしそうです。
 スーパー等では鮮度保持のために落としてしまう葉っぱも持ち帰れるのも、畑での収穫体験の醍醐味です。

この日のプログラムは、これで終了です。
 最初のハウスに戻って近藤理事長と白石さんから閉会の挨拶。
 白石さんからは「今日はこれで終わりではありません。収穫した野菜を持って帰って、料理をして、美味しく食べることまでやって、はじめて終わりになるんだよ」との言葉。
 ふだん野菜嫌いの子どももいたかも知れませんが、自分の手で収穫した野菜は、きっと美味しくたくさん食べられることでしょう。

昼食のサンドイッチをお配りする間に、参加者の方々にはアンケートを書いて頂きます。
 サンドイッチは、ハウスの中や畑の脇で食べたる家族、持って帰る家族も。

参加者全員をお見送りしてから、私たちスタッフも白石さんと一緒に昼食。
 サンドイッチは、農園に隣接する「La 毛利」の特製です。パンも手作り、野菜は全て白石農園のものだそうです。白石さんは、お茶と庭先で獲ってこられたミカンを差し入れて下さいました。
 ミカンは酸っぱい中に甘みがあり、懐かしい美味しさです。

 白石さんからは、11月1日から配信が始まったアプリ「とれたてねりま」も紹介して下さいました。農産物直売所や練馬産農産物を使用している飲食店が調べられます。早速インストールしました。

 白石さん、今回も大変お世話になりました。

タクシーで別の駅に向かう3人と分かれ、再び徒歩で大泉学園駅へ。
 途中、小泉牧場に立ち寄ってみました。都区内唯一の牧場として有名ですが、私は来たことがなかったのです。

 ちょうど軽トラで作業されていた方(たぶん経営主の方)に、見学などは受け入れてないのですかと聞いてみると、どうぞこちらの方へと誘って下さいました。
 牧場内に入ってみると、何組かの親子連れのグループが熱心に仔牛を見ていました。都会の中で、野菜や家畜と触れ合うことができる機会は貴重です。

さて、11月28日(日)の14時からは、CSまちデザイン主催の市民講座「脱炭素のためにも有機農業!」にオンライン参加。
 講師の吉野隆子さん(オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村 村長)も、名古屋からのリモート出演です。

(CSまちデザイン、朝市村のHPより)

近藤理事長からの「今日は有機農業を広げるために消費者にできることを考えたい」等の開会挨拶に続き、榊田みどり理事(農業ジャーナリスト)の進行により、吉野さんの話が始まりました(以下、文責は中田にあります)。

「もともと一人の消費者として有機農産物を買う立場だったが、販売を手伝ったり、大学で学ぶ中で、販路がないために有機農業をやめていく人が多いと聞いて何か手伝いできないかと、ずっと思ってきた。
 縁があって名古屋に引っ越し、名古屋駅近くの公共施設(オアシス21)を活性化したいという相談もあって、有機農業で新規就農した方たちが集まって販売する場(朝市)を開催するようになった。今年で17年目になる。
 2015年度には第45回日本農業賞(食の架け橋の部)大賞を受賞」

 「昨年はコロナ禍で来客数は減ったものの、農家ごとの売り上げは増加した。野菜セットなど宅配も増えている。
 月1~2回だとイベント的になってしまうが、毎週(土曜日)に開催することで、毎日、有機野菜を食卓に並べることができる。
 出店できるのは有機農業に取り組む新規就農者(有機JAS認定は求めないが、ベテラン生産者と事務局が生産現場を確認)だけで、本人が自分が育てた野菜等を顔を合わせて会話しながら消費者に直接販売するスタイル。
 机1本2000円という出店料だけで運営しており、消費者ボランティアも運営に関わっている。朝市村は畑の入り口という位置づけで、農業体験の受け入れも行っている。
 2009年からは新規就農相談窓口も開設」

2017年6月に朝市を見学させて頂いた時の、盛り上がった雰囲気が思い出されました。

(右は当日の吉野さんのご講演資料より)

「朝市を活用して、有機農業を広げるために色んなことができると実感している。
 例えば、飲食店など販路の開拓・マッチング、生産者と都市の消費者との交流(朝市村は畑の入り口で、体験を受け入れ)、安売り合戦の回避、生産者同士の切磋琢磨による技術の向上、新規就農者の育成など。ボランティアとして関わった子どもは食に関心を持つ」

「今年5月に農水省が公表した『みどりの食料システム戦略』は、現在は0.5%に過ぎない有機農業の面積シェアを2050年までに25%に拡大する目標を掲げるなど、びっくりするような内容。
 有機農業が重視されること自体には期待しているが、実際にどのように達成するのか。スマート農業の推進やゲノム編集などが前面に押し出されていること、自分たちがどのように関わっていけるかなど、有機農業関係者の間には戸惑いも大きい」

「有機農業推進のために消費者ができることは、まずは食べ支えること。どこでどんな風に栽培されたか、生産者の思いを意識して食べることが大切。
 次に、近くの有機農家とつながり支援すること。CSA(地域支援型農業)のような形もあるが、朝市に出店している生産者の多くは、消費者(客)から声を掛けてもらえるだけで励みになると言っている。つながることは双方にとって楽しい。
 さらには、有機農産物の給食を実現すること。現在、色んな地域で(生産者ではなく)お母さんたちが活動している。地元の農業、農家を大切にすることにもつながる」

(当日の吉野さんのご講演資料より)

14時30分過ぎからは、参加者との間で質疑応答です。
 有機の学校給食の広め方(お母さんたちが行政や地方議員のキーマンに直接働きかける等)、朝市のお客さんはリピーターが多い理由など、様々な質問に真摯に答えて下さいました。
 リモートとはいえ、対面でやりとりできる講座の醍醐味です。

「なぜ日本の消費者は、有機農業や気候危機への関心が低いのか。国立環境研究所の江守正多氏は、日本人の気候変動に対する危機感が低いのはもともと災害が多いから等と分析されていたが」との質問には、
 「ヨーロッパと全然違うのは本当に不思議。朝市のお客さんへのアンケートでも、野菜がおいしいこと、日持ちがすることを最も重視していて、有機農産物であることはその次。さらに環境問題との関りについて意識している人は本当に少ない。
 有機農業は環境負荷の小さな農法であることについての情報発信を、これからも続けていきたい」等のご回答。

 20年近くにわたって実践を続け、実績を上げておられる方だけに、中身の濃い興味深い講座でした。
 有機農業や環境問題に関心のある市民を地域で増やしていくという面も含めて、これからも吉野さんの取組みに大いに期待し、学んでいきたいと思いました。
 吉野さん、有難うございました。