【ほんのさわり No.231】小口広太『日本の食と農の未来』

小口広太『日本の食と農の未来−「持続可能な食卓」を考える』(2021.9、光文社新書)
 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334045609

著者の小口広太(おぐち・こうた)さんは1983年長野・塩尻市生まれ(実家は農家)。日本農業経営大学校専任講師等を経て、現在は千葉商科大学人間社会学部准教授(博士(農学))。

あとがきには「本書の執筆を決意したきっかけは大江正章さんが亡くなられたこと。本書は大江さんの遺志を引き継ぎたいという決意表明」と記されています。学生時代から可愛がられ、一緒によく飲み、議論したとのこと。本書に掲載されている事例の多くは、大江さんと一緒に歩いた「現場」だそうです。

本書の問題意識は、現在の日本の食と農は、グローバル・フードシステムの下で「食の海外依存」「国内農業の荒廃」という二重の脆弱性を抱えていることにあります。
 私たちの食卓は地球環境問題ともつながっていますが(「フード・マイレージ」も紹介して下さっています。)、気候危機等のリスクが高まるなか、「食と農のつながりの再構築」が必要と訴えます。そして、そのための有機農業やローカル・フードシステムの意義等について、幅広いデータを引用しつつ、分かりやすく解説されています。

著者は「国レベルの自給率は結果でしかなく、大切なことは日々の食卓を豊かにしていくこと。手の届く範囲の自給は、日本農業の多様性を支え、持続可能な社会の実現にもつながる」と主張しています。

出所:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
 No.231、2021年12月4日(土)[和暦 霜月朔日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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