−小松理虔『地方を生きる』(2021.1、ちくまプライマリー新書)−
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480683922/
著者の小松理虔(こまつ・りけん)さんは、1979年福島・いわき市小名浜の生まれ。
東京の大学への進学、上海での日本人教師等を経て、高校卒業後10年ぶりに地元に戻り、現在は「ローカル・アクティビスト」として様々な活動をされています。
その中心となっているのが、ウェブマガジンの創刊、オルタナティブスペース「UDOK.」の開設といった「場づくり」です。誰かと出会っていい時間を過ごすことで、様々な課題についての議論の端緒となり、結果として社会との関わりや公共性が生まれるというもの。
その場合に大切なことは、あえて「ふまじめさ」を取り入れて面白がることだそうです。
あらゆる地域は、一朝一夕には解決しない「課題の現場」でもあります。地域の魅力だけではなく課題も引き受け、まずは自分が面白がってプレイヤーとなることが、ローカルをアクティブに楽しむ秘訣とのことです。
2011年3月の原発事故は、著者にとって「食」を根本的に考えるきっかけとなりました。
仲間と東電福島第一原発沖で魚を釣って汚染度を測定し、SNS等で発信するという活動(「うみラボ」)を始めたのが2013年。そして放射性物質がほとんど検出されなくなってからは、地元の食の魅力を発信する活動にシフトしています。原発事故に対する怒りと、福島の海の幸を楽しもうとすることが、著者の中でしっかりと両立しているのです。
著者によると、「ローカルはあなたの人生を楽しむためにこそある」とのこと。
地方では自分のライフスタイルを選び取れる可能性(無駄、余白)が大きいとしています。その一方でローカルの「クソ」な実例(所得の低さ、女性軽視、同質性など)への言及もあります。
また、コロナ禍で「リモート」を体験したことが「ローカル」を問い直す機会となったとも。
さらに、「究極のローカル、究極の現場とは『自分の人生』。ローカルについて考えることは自分の人生を考えること。ローカル・アクティビストとは、人生を楽しもうとするすべての人たちに当てはまる肩書」とも述べています。
個人的には、2018年秋に故・大江正章さん達とともに「UDOK.」を訪ねた時のことを思い出しました。
出所:
F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
No.234、2022年1月17日(月)[和暦 師走十五日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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