【メルマガ】F.M.Letter No.236

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.236◇
 2022年2月15日(火)[和暦 睦月十五日]配信
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◆ F.M.豆知識  担い手の減少と新規就農
◆ O.カレント  農業をはじめる.jp
◆ ほんのさわり 榊田みどり『農的くらしを始める本』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 立春が過ぎ、だいぶ日が長くなってくるとともに花粉も飛び始めました。一方で新型コロナ感染拡大のペースは鈍化しつつあるようです。
 本メルマガは、時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に、登録下さっている皆様に配信しています。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/mame/

−担い手の減少と新規就農−

1960年頃には1200万人近くいた農業の担い手(基幹的農業従事者数;仕事が主で、農業が主)の数は、長期的に大きく減少し、さらに近年も減少を続けています。
 リンク先の図236の右側が、2010年以降における基幹的農業従事者数の推移です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2022/02/236_sinki.pdf

これによると、基幹的農業従事者数は近年も平均して毎年5万人ほど減少しており、2021年では約130万人と、1960年頃の約1割強の水準となっています。また、65歳以上の者の割合が約7割を占めています。
 かつての高度成長期における担い手の減少は他産業への流出によるものでしたが、現在のは高齢者のリタイアなど自然減少が主要因となっているのです。

担い手を確保していくためには新規就農者の確保が必要です。
 この間の新規就農者数の推移を示したものがグラフの右側で、平均して約5.6万人(うち49歳以下の者の割合は4割弱)が新規就農しているものの、それでも担い手の減少を補える状況とはなっていません。

職業として農業を選択する新規就農者を確保するためには、様々な対策も講じられていますが(次の「オーシャン・カレント」欄はその一例)、将来にわたって農業を「仕事」として担っていく者の数を確保していくことは困難な状況となっているのが現実です。

[資料]
 農林水産省「農業構造動態調査」「新規就農者調査」
    https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kensaku/bunya1.html
 注:1) 基幹的農業従事者とは、仕事が主で、主に自営農業に従事した世帯員。
   2) 新規就農者とは、新規自営農業就農者、新規雇用就農者及び新規参入者の合計。

◆ オーシャン・カレント−潮目を変える−
 食や農の分野で先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/pr/

−農業をはじめる.JP−
 https://www.be-farmer.jp/

新規就農を目指す人のためのポータルサイトで、農林水産省の補助事業により(一社)全国農業会議所が運営しています。
 全国農業会議所とは、全国の市町村で農地の権利移動や転用の許認可等の業務を担っている農業委員会の全国系統組織で、全国新規就農支援センター(相談窓口など)の運営も担っています。

「農業をはじめる.JP」では、職業としての農業に興味を持たれた方や農業を仕事にしたいと考え始めた方が、就農に向けて具体的なアクションを起こしていくために役立つ情報を、分かりやすく、一元的に提供しています。[就農を知る][体験する][相談する][研修/学ぶ][求人情報][支援情報]に分類され、必要な情報にアクセスしやすいように工夫されています。
 また、全国及び各県の新規就農相談センターで行われている相談会や個別の相談業務(対面、オンライン、メール、電話等)、就農イベント(新・農業人フェア)に関する情報も掲載されています。

職業として農業を選択しようとする方だけではなく、農に関心のある方にも参考になると思います。

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなる本を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 https://food-mileage.jp/category/br/

−榊田みどり『農的くらしを始める本−都市住民のJA活用術』(2022.1、農山漁村文化協会)−
 https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54021235/

著者は秋田県生まれ。生協勤務を経て、現在はフリーの農業ジャーナリスト、農政ジャーナリストの会副会長、明治大学客員教授。農水省の核種検討会の委員等も勤められています。

「豆知識」「オーシャンカレント」欄でみてきたように、様々な施策が講じられているものの新規就農者数が十分に確保されていないなか、神奈川・秦野市における先進的・ユニークな取組みはかねて注目されてきたところですが、本書は、その全体像を詳しく明らかにしているルポルタージュです。
 著者が注目しているのは、狭い意味での(農業を仕事とする)「新規就農者」だけではありません。
 若い世代を含む都市住民等の中には、農業に触れてみたい、体験してみたい、自分で野菜を育ててみたい、プロの農家になりたいといった、多様な農に対するニーズが高まっています。しかし現実には、特に都市住民等がプロ農家として農業に参入することについては、法制度を含めて高いハードルがあるのも事実です。

ところが秦野市では、市、農業委員会、JA(秦野市農業協同組合)が連携して2006年に「はだの都市農業支援センター」を創設し、非農家の都市住民が求める農との関わり方のグラデーションに応じて、さまざまな受け皿(バックアップ体制)を用意しているのです。
 例えば、ちょっとだけ農に触れたい人には「農業満喫CLUB」、自ら野菜を作ってみたい人には農業体験農園や市民農園(JAの直売施設で販売することも可能)、さらに本格的にプロ農家を目指したい人向けの「市民農業塾」など。
 また、本書では、農業に留まらない「コミュニティの担い手」として受け入れている様子、制度の縦割りを超えてJAと生協が連携した取組み(共通組合員制度による「いいとこどり」等)なども描かれています。

著者によると、本書は「市民皆農」への仕組みづくりの本とのこと。
 市民農業塾の講師をされている方(県外出身の新規就農者)の「畑が活かされるのであれば、なんでもありかな」という言葉が印象的でした。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 【ブログ】きっかけ食堂−戸倉っこかき(宮城・南三陸町)[2/12]
 https://food-mileage.jp/2022/02/12/blog-363/

▼ 筆者が進行を務める「食と農の市民談話会」の予定です(参加又は動画視聴500円)。
 主催はNPO市民科学研究室。オンラインです。
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeeting02_202201/

○ 第8回 2月15日(火)19:00〜21:00
 「『限界集落』での暮らしとなりわい」(仮題)
 【本日です。参加申し込みが間に合わなくても、後日、アーカイブ動画の視聴は可能です】
 話題提供:赤木美名子さん(新潟・上越市大賀、農業、もんぺ製作所)

○ 第9回 3月15日(火)19:00〜21:00
 「漁協で働くということ」(仮題)
 話題提供:森 歩(あゆみ)さん(兵庫・香美町香住、但馬漁業協同組合(JF但馬)勤務)

▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 第15回国際有機農業映画祭 オンライン上映会
 日時:2月18日(金)〜23日(水)
 (好きな時間に何度でも視聴可能、チケット申込みは16日(水)まで)
 場所:オンライン
 主催:国際有機農業映画祭
 (詳細、問合せ等↓)
 https://www.facebook.com/events/3144024159149567/

○ 第5回小農オンラインセミナー
 日時:2月25日(金)19:30〜
 講師:榊田みどりさん「農的暮らしをはじめる本」(「ほんのさわり」欄参照)
 場所:オンライン
 主催:小農学会
 (問合せ等↓、又は中田まで(本メルマガへの返信))
 https://shounou-gakkai.com/Contact.php

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「節分のお寿司は、ライブ感覚で巻かないとね」
「えっ、どういうこと?」
「ノリ(海苔)が欠かせませんから」

 コツコツ小咄は拙ウェブサイトにも写真入りで掲載しています。
 https://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.237は3月3日(木)[和暦 如月朔日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。いつもありがとうございます。
 https://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しており、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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 ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」
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