【ブログ】きっかけ食堂-戸倉っこかき(宮城・南三陸町)

2022年2月10日(木)から11日(金)にかけては、南岸低気圧の発達により東京地方も積雪との予報も出ていましたが、幸い、先月のような大雪とはならず。
 自宅近くの河川敷には、コロナ禍のなか花を植えて下さっている方がいます。小さなビオトープ(?)も。
 11日(金)は青空が広がりました。

その11日(金)の19時から開催されたのは、「きっかけ食堂@京都・愛知 宮城県南三陸町『戸倉っこかき』特集!」

きっかけ食堂」とは、東日本大震災の被災地のことを考える「きっかけ」をつくるために、生産者のもとに足を運んで仕入れた東北の食材を使った料理やお酒を楽しもうという「食堂」。
 2014年5月から毎月11日、東京、愛知、京都、仙台等で開催されているそうです。

 私は2019年12月に東京で開催された陸前高田関係のイベントの際、参加者の中にきっかけ食堂を運営されている方がおられ、名刺交換して初めて知り、興味を持ちました。
 しかしその後、コロナ感染拡大もあってイベント等には参加できていなかったのですが、今回、オンラインのイベントに初めて参加させて頂いたのです。

戸倉っこかき」とは、宮城・南三陸町の南部にある志津川湾に面した戸倉(とぐら)地区の殻付きブランドかき。2019年度の農林水産祭天皇杯(水産部門)を受賞されています。
 また、2016年には日本初のASC国際認証を取得されているとのこと(後述)。

写真は、戸倉っこ牡蠣生産グループHPより。https://toguraquest.com/

私もFBでの案内を受けて、購入させて頂きました。緑色のASCマークも付されています。
 1年物(通常は2~3年養殖)だそうですが、身は十分に大きくプリプリです。イベントに先立って、生とフライで頂きました。美味!(ご馳走様でした)。

19時に開会。参加者は30名ほど。
 主催者(進行役、産地を訪ねられた方など)を含め学生や若い社会人が多く、他の類似のイベントに比べると平均年齢は低いようです。チャットにはSNS感覚で続々と投稿されるなど、楽しく、くつろいだ雰囲気で進んでいきます。

 この日のゲストは、県協志津川支所・戸倉出張所のカキ部会で部会長を務められている後藤清広さん(後藤海産代表、62歳)。
 丁寧で穏やかな語り口で、産地や生産者の方たちの取組みを紹介して下さいました(文責は中田にあります)。

東日本大震災では大きな被害を受け、全ての養殖イカダを失ったとのこと。
 そこから後藤さん達は話し合いを重ね、単に旧に復するのではなく、震災前までの過密養殖(質より量を目指す)を見直し、資源を分け合い、将来にわたって持続可能な生産方式を目指すこととされたそうです。

 そのために養殖イカダの数を3分の1に削減。
 すると栄養分が行き渡って1年で立派な牡蠣に成長することが分かったそうです。
 養殖期間の短縮と品質向上により、生産量は2倍、生産額は1.5倍となる一方、コストや労働時間は4割以上削減でき、Uターン者など後継者の確保にもつながっているそうです。

さらに2016年には、海のエコラベルであるASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)国際認証を日本で初めて取得しました。
 ASC国際認証は、養殖による環境(湾内の生態系など)への負荷を軽減し、養殖業にかかわる人や地域社会に配慮した「責任ある養殖物」であることを証明する仕組みとのこと。

後藤さんによると、「当初は費用や手続きが面倒等の理由で反対者も多かったが、注文が増えることで、仕事に誇りが持てるようになった。いいものを作りたいという気持ちはみんな持っている。国際認証の取得は環境だけではなく人も変えた」とのこと。
 認証の経費等については最初こそ町の支援を受けたものの、その後(3年ごとの更新が必要とのこと)は積み立てを行うなど自分たちで負担しているそうです。

後藤さんは、養殖業も持続可能性に配慮する必要があると強く訴えられました。実践し、実績を上げられている方の言葉だけに重みがあります。

後半は、参加者との間で質疑応答と意見交換。
 東北から九州まで全国から参加されているのは、オンラインの強みではあります。

 認証の価格面での効果については「価格への転嫁にまでは至っていないが、安定的に買ってもらえている。消費者の環境に対する意識も変わりつつあると感じている」との回答。
 戸倉を訪ねたことのある方からは「戸倉と聞くと後藤さん達の顔が頭に浮かぶ」との感想も。

 名古屋でシェフをされている方からは「ぜひ後藤さんに来て頂いて、一緒にカキの料理を食べたい」との発言。
 これに対して主催者の方からは「オンラインだけではなくリアルで交流できる場を作りたい」との言葉。早期のコロナ終息を祈りたいものです。

ASC国際認証を含め、いわゆるエコラベルは、世界的にはスタンダードとなりつつあるものの、日本国内での認知度や普及の度合いは高くありません。
 ASCのホームページによると、世界では1,660の養殖場が認証を受けていますが、国内では89養殖場(13件)に留まっているようです。

後藤さんも強調されていた通り、養殖業もこれからは環境保全や資源管理など、持続性の観点が不可欠です。
 そのためには、まずは自分たち消費者も意識して、持続可能な生産物を選んでいくことが求められています。

このようなことを考える機会を頂けたきっかけ食堂の、これからの活動に期待したいと思います。主催者の皆さま、有難うございました。また顔を出させて頂きます。