【ブログ】2022年6月の「今夜もご機嫌@銀座で農業」

2022年6月6日(月)の梅雨入り以降、東京地方は雨がちで肌寒い日が続いています。時候は二十四節気の芒種(ぼうしゅ。稲などの穀類の種を播く季節)です。

 9日(木)も雨が落ちてきそうな曇り空。
 終業後、お茶の水駅聖橋口で開催されているサンクレールマルシェへ。毎月第2・第4の木・金曜日、全国各地のこだわりの特産品などが販売されています。
 この日は長野の天然酵母の無添加パンなどを求めさせて頂きました(Sさん、いつも有難うございます)。

続いて中央区京橋へ。
 いわば一極集中を象徴する地であり、同時に一次産業とは最も距離が離れた場所です。
 東京スクエアガーデンも、きらびやかで都会的な複合施設。
 その6階にある中央区環境情報センターの会議室で18時30分から開催されたのは、「今夜もご機嫌@銀座で農業」と題する勉強会です。

蔦谷栄一先生(農的社会デザイン研究所)をメイン講師に10年近く定期的に開催されてきた銀座農業コミュニティ塾が、コロナ禍の下で規模を縮小しつつ続けられています。
 この日は、会場とオンラインを併用した(ハイブリッドでの)初めての試み。会場参加は6名、オンライン参加は3名ほどと少人数です。

主催者の高安和夫さん(銀座ミツバチプロジェクト)の挨拶に続いて、蔦谷先生から「農業情勢トピックス-ワーカーズコープによる農的活動の展開について」と題する講義が始まりました。
 会場とオンラインの参加者双方に資料を共有しながら、概要、以下のような説明をして下さいました(文責は全て筆者にあります)。

ワーカーズコープ(労働者協同組合)は1949年の緊急失業対策から始まったもので、1980年頃から次第に活動が活発化した。2020年12月には労働者協同組合法が成立し、本年10月に施行される予定」

 「現在、全国組織である日本労働者協同組合(労協連)の傘下では1万6千人が働いており、300億円の事業高がある」

「ワーカーズコープは、農や食の分野でも積極的に取り組んでいる。
 その一つめの柱が、本年2月に発足した都市農業研究会。
 顧問は山田俊男参議院議員(元JA専務理事)、会長は永戸祐三氏((一社)日本社会連帯機構代表理事)で、川崎平右衛門顕彰会の事務局長もしている私が副会長を務めている」

「武蔵野の新田開発等を行った川崎平右衛門の実践に学びつつ、農的コミュニティを作り、農業の新たな担い手づくりにつなげていこうという構想。
 具体的には、親子体験モデル農園の開設、農ある街づくり講座の開催など、市民参画の取組みから始めていくこととしている」

「平右衛門は、木曽三川の治水や石見銀山の立て直しにも活躍した優秀な幕府の代官だった。
 武蔵野における新田開発が成功した理由は、農民の持つ力、協同の力を引き出したこと。それよって農業経営を成り立たせると同時に、年貢の増徴を可能にした」

「これまで5回開催してきた川崎平右衛門研究会も、これからはワーカーズコープとコラボしていきたい。本年11月には武蔵野市でフェスタを開催する予定」

「農、食の分野における柱の二つ目が、2020年11月に立ち上げられた『小農・森林ワーカーズ全国ネットワーク』の立ち上げ。
 九州を中心に活動している小農学会と連携したもので、本年5月には3回目の交流会が福岡市で開催された」

 「全就労者の8割が農業に関わり、食料の自給体制を構築していこうという壮大な構想で、食や農の分野において協同組合運動が広がっていくことが期待される」

引き続いて参加者との意見交換。
 その中で蔦谷先生から、農ある街づくり講座の開催に当たって地元JAに協力を働きかけたエピソードを紹介して下さいました。これまで組合員(農家)中心の事業を行ってきたJAも、地域づくり活動への関心が高まってきているようです。

19時40分頃に終了。
 久しぶりの交流会は、同じビルの2階にある中華料理屋さんで(いつもの地下1階のお店より高級感(?)があって空いていました)。

皆さんのお話を伺っていて強く印象に残ったのは、蔦谷先生が、お住まいのある西東京市という地域を大切にして考え、活動されていること。
 農林中金熊本支店長や農中総研常務理事を歴任され、農水省の研究会座長など多くの公職もこなしておられる蔦谷先生ですが、地元JAに働きかけられた時も、上部組織(JA全中や東京中央会)に相談すること等はせず、ご自身で地元JAの担当者に連絡されたそうです。
 社会を変えるためには足元の地域から変えるしかないというのが、蔦谷先生の信念のようです。

また、主催されている高安さんご夫妻は、日本のど真ん中・東京都中央区で「農」を実践されつつ、全国各地で「農福連携養蜂」の調査研究と普及活動等に取り組んでおられます。
 また、この日初めて参加された小谷あゆみさん(農ジャーナリスト)は、全国各地をめぐり、地域における先進事例やそれを担っている方たちを取材し、積極的に情報発信されています。

「地域」をベースに考え実践することの大切さを、日本のど真ん中で、改めて感じることのできた一日でした。