【ほんのさわり】下川 哲『食べる経済学』

−下川 哲『食べる経済学』(2021年12月、大和書房)−
 https://www.daiwashobo.co.jp/book/b590669.html

著者は北海道大学農学部農業経済学科卒業、アメリカ・コーネル大学で博士号を取得され、現職は早稲田大学政治経済学術院准教授。
 ごく日常的な私たちの「食べる」という行為は、実は地球全体の資源や環境に予想を超えるほどの大きな影響を及ぼしています。そのことに気づくことで、「健康的で持続的な食生活」への変革を促そうというのが、本書のテーマです。

私たちの普段の食事は、グローバルな生産・流通ネットワークにより世界中の多くの生産地に支えられ、地球環境にも大きな負荷を与えています。
 その一例としてあげられているのが肉食。畜産は大量の温暖化ガスを排出し、大量の水を消費すると同時に、人間の何倍もの排泄物を出すという事実を指摘しています(ちなみに畜産を地球温暖化の元凶と決めつけるような単純な意見には、私は異論がありますが)。

また、「食べる」ことは生物的な下限(絶対必要量)と上限(満腹になる)があるという意味で一般の消費とは異なること、食料生産も自然・気象条件に左右されるなど特殊性があること等についても、分かりやすく解説されています。
 さらには、昆虫食やデジタル革命など、現代的な最先端のテーマも取り上げられています。

本書の最終章のタイトルは「未来をイメージする」。
 「『食べる』はこれからも毎日続きます。普段のほんの小さな変化でも、積もり積もって大きな効果につながることだけは覚えておいてください」と、著者は訴えています。

(追記)
  経済・財政・金融を読む会(PP研主催、7月30日(土)13:30〜)において、本書について報告・意見交換させて頂きます。
 http://www.peoples-plan.org/jp/modules/news/article.php?storyid=672

出典:
 F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
  No.246、2022年7月13日(水)[和暦 水無月十五日]
  https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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