2年前に定年退職、現在は再任用して頂き週3日(水~金)の勤務。
うち木曜はテレワークで、水・金は東京・霞ヶ関出勤というパターンが基本となっています。
毎朝の地下鉄(東京メトロ)・霞ヶ関駅で、しばらく前から気になっていた光景がありました。
両足が内部に反るような障がいがあり、両手に杖(ロフストランドクラッチ)を突いた女性の姿。階段を上るのもつらそうです。
ホームの中ほどにエレベータがあるのですが、その入り口は女性が歩く方向とは反対側(通り過ぎてから背中の方)。リハビリのために階段を利用されているのかなと思いつつも、万が一、気付いてないのであればお声がけした方がいいのでは、と。
逡巡する朝が数週間、続きました。
気軽に声を掛けられなかった理由の一つは、伊藤亜紗さん(東京工業大学 科学技術創成研究院 未来の人類研究センター長)が紹介されている、障がいのある方の言葉が頭の中にあったためです。
「助けてって言ってないのに助ける人が多いから、イライラする」「毎日毎日、はとバスツアーに乗っている感じがして窮屈(笑)」等々。
それでもある朝、勇気を奮い立たせて(大仰ですね)、ホームを歩いて来られるその方に声を掛けました。
「こちらにエレベータがありますけど、大丈夫ですか」
すると、「あっ、大丈夫です。有難うございます」と、あまりにも普通の、そっけない位の短い言葉が返ってきたのです。
正直、ほっとしました。
私の行動はたぶん「余計なお世話」で、私自身の心の中のモヤモヤを解消するための自己満足に過ぎなかったのかも知れません。それでも、心の中に青空が広がったような気持ちがしました。
私たちの社会は、多様性を尊重することが必要とされています。
街の中で、障がいなど様々な理由で困っている様子の人がおられれば、気軽に声を掛けて、(必要があれば、望まれれば)サポートして差し上げる。
そのような当然のことに、私自身、まだまだ慣れていないことが分かりました。
ある朝の霞ヶ関駅での、ささやかな私の体験です。