【ブログ】持続可能な食を考える(NPOエコラボ学習会)

2022年9月10日(土)は中秋の名月。東京地方でも綺麗に眺めることができました。

 翌日は石川・金沢へ。2年間の在勤・在住の後、2010年に東京に戻ってきて以来です。
 北陸新幹線・かがやきも初めて。昼前に金沢駅に到着すると、懐かしい鼓門・もてなしドームが出迎えてくれました。
 それにしても、蒸し暑い(東京以上かも)。

タクシーで市立泉野図書館へ。
 ここで13時30分から開催されるのは「環境講演会/持続可能な食を考える」(NPOエコラボ主催)。金沢在住・在勤中にもお世話になった方たちに挨拶(ご無沙汰しました)。

 控室で手作りのお弁当を頂きました。地元のお菓子も(地産地消や環境に配慮している野々市市のお菓子屋さんのもの。お世話して下さったスタッフの方の勤め先だそうです)。

会場は、定員180名という広いオアシスホール。
 ただし、この日はコロナ感染予防のために参加者は60名に限定しているそうです。

 NPOエコラボの活動を紹介するパネル、エコクッキング用のソーラークッカー、スマートコンポストで作った生ゴミたい肥等が展示されており、参加者の皆さんが興味深そうにご覧になっていました。
 農林水産大臣の表彰状(2022年度食育表彰)も。

定刻の13時30分に開会。
 前半は、中村早苗代表によるNPOエコラボの活動報告です(文責・中田)。
 「活動を始めて15年、メンバーは26名。昨年3月に策定された国の『第4次食育推進基本計画』では、3本柱のひとつに『持続可能な食を支える食育の推進(社会・環境・文化の視点)』が盛り込まれた。正に私たちがこれまで活動してきた内容で、改めて身が引き締まる思い」

 「食の全ての過程における環境負荷を低減するという観点から、育てて食べる環境配慮型農業の体験(育てて食べる じわもん親子塾)、ソーラークッキング体験講座、キッチンにおけるごみゼロアクション等を実施」

 「今年度、第6回 食育活動表彰で農林水産大臣賞を受賞できたのも、連携させて頂いた地域の様々な皆さまのお陰。感謝を申し上げつつ、今日は皆さんと食について考える場となればと思っている」 

続いて私から、「フード・マイレージからみえてくるもの」と題して話題提供させて頂きました(「講演」と紹介頂くのは、どうにもエラそうで抵抗があります)。

スライドを映写したのですが、立派過ぎる会場でスクリーンと客席との間の距離が遠く、細かな文字などは見えなかったと思います。申し訳ありませんでした。
 当日の説明資料はこちらですので、ご関心のある方はご覧ください。

まずは自己紹介しつつ、意見等は全て個人のものであることをお断りした上で、フード・マイレージの概要から。
 フード・マイレージとはイギリスの市民運動(Foodmiles)を参考としたもの。もっともイギリスのNGOは、現在は輸送距離にとどまらない幅広い運動(エシカル消費等)に発展していることを紹介。
 簡単な数値だが、「食の農の間の距離」の仮想的な計測、食料輸送が地球環境に与える負荷を把握する指標となる。

画像はクリックすれば拡大します(以下、同じ)。また、資料の全体判はこちら

農林水産政策研究所で2001年の数値について計測し主要先進国との比較を行った(日本の数値はこれらの国の中で突出)後、日本については2010年、16年についても計算したが、国際的な食料価格の高騰を反映してやや縮小していた。

ところが今回、初めて2020年の数値を計測したが、コロナ禍で世界貿易全体は縮小しているなか、日本の輸入食料のフード・マイレージが増加に転じていたのは意外に思った。
 要因や背景については分析中だが、一時、高騰していた国際価格が落ち着いた影響かも知れない。

フード・マイレージ指標を用いれば、地産地消の輸送に伴う環境負荷削減効果を定量的に把握することができる。

金沢には「一本ねぎ」という加賀野菜があるが、ねぎを素材にケーススタディを行ってみた。
 市内産、大分県産、輸入品(中国産)についてフード・マイレージ及び輸送に伴う二酸化炭素排出量を試算すると、市内産は輸入品に比べてフード・マイレージは約1000分の1、二酸化炭素排出量は約500分の1となる。

 食べものの産地を意識し、選択するだけで、冷房温度を下げたりテレビを観る時間を減らしたりするのに比べて、より多く二酸化炭素排出量を削減できる。

一方で、フード・マイレージ指標には、輸送手段によって二酸化炭素排出係数には大きな差があること、そもそも輸送部分しかカバーしていないという限界・問題点がある。
 しかし、自らの食生活が地球環境とも関わっていることに気づくヒントとなる。

現在、世界では、どのような食を選択するかが、自らの健康のみならず地球全体の健康(プラネタリー・ヘルス)とも関わっているという考え方が拡がってきている。

エシカル(倫理的)消費も拡がりつつある。
 日本の消費者は意識が高い人は少ないと思っていたが、山本謙治さんの本によると、実は先進国・イギリスも同じような状況らしい。大多数を占める「ときどきエシカル層」がパワーになるとのこと。

フード・マイレージを意識することで、食べものの産地(風土や歴史)、生産者、周りの環境等について想像するよすがとなる。
 金沢には加賀料理など食の伝統があり、同時に豊かな農業生産地帯に囲まれている。その金沢の地から、NPOエコラボを始めとする皆様によるモデル的な取組みが拡がっていくことを期待したい。

参加者の皆さまから、積極的な質問や意見が出されました(終了後もアンケートで寄せられています)。
 その一つ、「金沢ならではの取組みは何かあるか」とのご質問には、
 「何といっても金沢のブランド力は強い。食についても、金沢や加賀のブランドがつけば少々高くても消費者に受け入れられる。そこに環境や倫理の要素も含めていくことができれば、大きな可能性があるのではないか」等と回答させて頂きました。

15時30分過ぎに終了。スタッフの皆さんと会場を片付けた後、中村さんに片町のホテルまで送って頂きました。

 夕方は、その中村さんと改めて待ち合わせて夕食。
 紡績工場を改装した素敵な赤レンガ造りのレストランで、能登牛などを使った美味しい料理とワインなどを満喫。
 外に出ると明るい月が出ていました。
 隣の建物は、技術の伝承と人材育成を目的とした金沢職人大学校とのこと。ここでも金沢の伝統の力を感じました。

 中村さん始めNPOエコラボの皆さま、大変お世話になり有難うございました。

せっかく10数年ぶりに金沢に来たので、翌日からは観光。
 能登・輪島の白米千枚田(日本で最初に認定された世界農業遺産)、日本海に直接落ちる垂水の滝。
 道の駅 すず塩田村では、揚げ浜式の塩づくりを少しだけ体験。

金沢市内ではレンタサイクルを借りて、近江町市場、ひがし茶屋街のお茶屋美術館。金沢城の五十間長屋は見事な伝統的木造建築です。
 兼六園、四校記念文化交流館、金竜山天徳寺のからくり人形など。

最後に訪ねたのは、本年7月に移転・開館したばかりの石川県立図書館
 建物の立派さにはたまげましたが(まさかや~)、工夫された図書の配置、読書スペースの多さなど、ゆっくりと時間を過ごせそうな快適な空間です。

この3日間、加賀料理の治部煮、金沢おでんなど、美味しいお料理も堪能しました。

歴史と伝統、それに文化を大切にする石川・金沢市。
 「食」についても、この地から新たな動きがさらに拡がっていくことを期待したいと思います。