−鈴木宣弘『世界で最初に飢えるのは日本−食の安全保障をどう守るか』(2022年11月、講談社+α新書)−
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000369740
かねて日本の食と農をめぐる危機を告発し続けてきた著者(東京大学大学院教授)が、ロシアによるウクライナ侵攻など最新の情勢を踏まえ改めて世界的な危機の現状を整理した上で、日本人が飢餓を回避するためのヒントを探った書です。
帯にある「日本人の6割が餓死する」との刺激的なフレーズは、アメリカの大学の研究者らによる研究成果−核戦争が勃発した場合、食料生産の減少と物流停止によって世界全体で2.55億人が餓死し、うち7200万人が日本に集中するというもの−から引用されています。
2020年度の日本のカロリーベースの食料自給率は37%(注:21年度は38%)ですが、種や肥料の海外依存度を考慮すると10%にも届かないとの著者の試算も紹介されています。
ウクライナ戦争に加えて、中国の「爆買い」、コロナショック、異常気象など、世界の食料生産・流通をめぐる危機はさらに深刻化しています。しかし日本の農政は、諸外国のように食料増産に取り組むどころか、逆に米や牛乳、砂糖の減産要請をしているのは「あきれるばかり」で、これこそが最大のリスクと断じています。
生産コストの高騰等により大手畜産会社が倒産するなど、農村現場の疲弊が急速に進むなか、農家への損失補てん、政府買い上げによる困窮世帯への支援、学校給食の公共調達等の政策的対応が不可欠としています。
しかし、著者は政治や農業者の取組みだけで十分とはしていません。
「消費者の行動が世の中を変える原動力になる」「小さな選択を積み重ねることが、日本の食と農と命を守ることにつながる」と訴えています。
出典:
F.M.Letter-フード・マイレージ資料室 通信-pray for peace.
No.256、2022年12月8日(木)[和暦 霜月十五日]
https://www.mag2.com/m/0001579997.html
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