【F.M.Letter No.106】

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◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信 ◇◆◇

     No.106; 2016.11/14(月)[和暦 神無月十五日]発行

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 立冬も過ぎ、いよいよ本格的な冬の到来です。

 今夜は今年の満月のうちでも最大の「スーパームーン」とのことです

が、当地では夜は曇りから雨との予報。

 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満

月の日)に配信している本メルマガ、今回は神無月十五日の配信です。

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  F.M.豆知識

  食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるい

 は考えるヒントになるような話題を毎回コツコツと紹介していきます。

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 所得と食生活に関する状況

 前回、前々回と最近の経済情勢の悪化(失業率の上昇)と栄養(特に

たんばく質)摂取量との間には相関があることを紹介しました。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/60_situgyo.pdf

 

 厚生労働省「平成26年国民健康・栄養調査」では、所得と食生活に関

する状況についても調査されています。

 これは、世帯の所得を200万円未満、200600万円、600万円以上に分

けて、食品群別の摂取量等を把握しているものです。

 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/62_shokuhingun.pdf

 

 例えば、穀類摂取量(男性の世帯員1人当たり)をみると、世帯所得

600万円以上(以下「高所得層」)では494gであるのに対し、同200万円

未満(以下「低所得層」)では535gと低所得層の方が多くなっています。

 一方、野菜類摂取量は高所得層322gに対して低所得層254g、肉類摂取

量は高所得層122gに対して低所得層102gと、いずれも低所得層の方が少

なくなっています(乳類、油脂類も同様の傾向)。

 

 また、エネルギー摂取量も高所得層が2180kcalであるのに対して低所

得層では2053kcalと、やはり低所得層の方が少なくなっているのですが、

エネルギーに占める炭水化物の比率は高所得層58.5%に対して低所得層

では60.8%と高くなっており、たんばく質エネルギー比率(高所得層

14.6%、低所得層14.1%)及び脂肪エネルギー比率(同26.9%、25.1%)

と、低所得者層の方が低くなっています(これらは女性の世帯員にも同

様の傾向がみられます)。

 

 このように、所得水準によって食生活には統計的にも有意な差がある

ことが明らかとされているのです。

 

[出典、参考等]

 厚生労働省「平成26年国民健康・栄養調査」

  http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000106405.html

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおら

 れる方達や、トピックスを紹介していきます。

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 ポコ・ア・ポコ農園(茨城・那珂市)・和知健一さん

 

 和知健一さんは茨城・那珂市にあるポコ・ア・ポコ農園の農園主です。

 大学卒業後いったん民間企業に就職しましたが、やはり農業をやりた

いと思い30歳で大学の農学部に再入学。さらに日本農業実践学園(茨城・

水戸市)、八ヶ岳中央農業実践大学校(長野・原村)で野菜の栽培技術

等を学びました。

 卒業後は青年海外協力隊員としてとしてメキシコに2年間赴任してトマ

トの栽培技術を指導。この時、在来種の魅力に取り付かれたそうです。

 

 和知さんは現在、農薬も肥料も(たい肥も)使わない自然農法で、在

来種の野菜を30
目ほど栽培しています。

 在来種とは、野菜では一般的なF1種(一代雑種)とは異なり、長い年

月をかけてその地の風土や環境に順応してきた個性的な品種のこと。海

外の在来種も数代にわたって種採りすることで、次第に那珂市の風土に

馴染んできているそうです。

 販売は、個人やレストラン向けの直売(宅配)が主ですが、東京・代

々木のアースディマーケット等にも出店されています。

 

 和知さんによると、自然農法とは野菜が本来持つ力を信じて雑草に負

けないものを育てる農法とのこと。

 就農された当初は有機農業(化学合成農薬、化学肥料不使用)に取り

組んでいましたが、ビニール等の廃資材が出ることが気になり、現在の

自然農法に落ち着いたのだそうです。

 環境への負荷がもっとも小さな農法と言えます。

 

 去る1029日(土)にはイモ掘りイベント(主催:週末農風)に参加

し、畑も見学させて頂きました。

 一見、ただの草むらのようにも見えますが、目を凝らすと雑草の間に

カブやニンジンの姿が見えます。なかには種が落ちたものが野生化し、

勝手に生えているようなものもあるとのこと。野菜等の作物も、雑草や

虫とともに生態系の一部ということのようです。

 

 「POCO A POCO」とは、スペイン語で「ゆっくりと」「一歩ずつ」との

意味。和知さんがメキシコ滞在中に一番気に入った言葉だそうで、それ

を自らの農園の名前としました。

 笑顔が印象的な3人のお子さん達も一緒に、これからも着実に歩んでい

かれることと期待されます。

 

[参考] 

 ポコ・ア・ポコ農園FBページ

  https://www.facebook.com/POCO-A-POCO-FARM-276920389020810/

 

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  ほんのさわり

  食や農の分野について、考えるヒントとなるような本の「さわり」

 だけを紹介します。

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 西加奈子『まく子』(2016.2、福音館)

 

 今回は食べものや農業とは直接関係なく、思春期に入りかけた少年を

主人公とした小説を紹介します、

 

 サトシ(小学5年生)は、「得体の知れない何かに変身してゆく化け物

みたい」な同級生の女子を目の当たりにし、自分は大人になりたくない

と切望しながら体がどんどん変化していることを嫌悪しています。

 そのサトシの前に、石や砂をまくのが大好きな転校生・コズエが現れ

ます。実は宇宙人というトンデモ設定。コズエは砂をまく理由を「全部

落ちるから楽しい。永遠に続かないから素敵なんだ」と言います。

 

 ひなびた温泉町を舞台に祭りや放火事件といったエピソードを経て、

コズエとオ力アサンが光の塊のUFOに乗って宇宙に帰るクライマックスシ

ーン。

 サトシの独白が続きます。

「光はぼくらの体内に入り、新しい粒となってぼくらを作った。そして

またぼくらの体内から生まれ出て、誰かの体に寄り添うのだった」

「ぼくの周りには、小さな小さな、そして祝福された粒で出来た、たく

さんの奇跡の体があった」

「ぼくたちはいずれ死ななければならない。ぼくたちは誰かと交わる勇

気を持たないといけない。あの人はぼくだったかもしれないと想像する

勇気を持たないといけない。絶対に、絶対に誰かを傷つけてはいけない」

「ぼくはぼくでしかなくて、そして同時に、みんなでもあるのだ」

 

 温泉町には、漫画ばかり読んでいる25歳のニートや「ちょっと頭のお

かしいおじさん」も住んでいます。

 こんな大人にはなりたくないとサトシは思いつつ、いてくれてよかっ

たと思います。作者はファンタジーのかたちを借りて、多様性を尊重す

ることの大切さを訴えているのです。宇宙人に比べれば、人種や宗教な

ど些細な違いに過ぎません。

 一点だけ、城跡の石垣をほじくって崩す場面は城マニアの私としては

ちょっとどうかと・・・。

 

 西加奈子『まく子』(2016.2、福音館)

  https://www.fukuinkan.co.jp/makuko/

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 poco a
poco
農園さんのサツマイモ掘り @茨城・那珂市 (11/01)

  http://food-mileage.jp/2016/11/01/

 

 第8回 森の読書会、「風に舞いあがるビニールシート」 (11/03)

  http://food-mileage.jp/2016/11/03/

 

 熊本を食す会美味しいものを知り、食べて応援 (11/09)

  http://food-mileage.jp/2016/11/09/

 

 森の食卓1周年、『ビハインド・ザ・コーヴ』 (11/11)

  http://food-mileage.jp/2016/11/11/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 東京朝市 アースデイマーケット

 日時:1119日(土)10:0020日(日)16:00

 場所:井の頭公園 御殿山エリア(東京・武蔵野市御殿山)

 主催:アースデイマーケット実行委員会

 (詳細、お問合せ等

  http://www.earthdaymarket.com/

 

 アドボカシーカフェ

 「3.11後の子どもと健康学校と保健室は何ができるか」

 日時:1119日(土)13001530

 場所:見樹院(東京・文京区小石川3

 主催:認定NPO法人まちぽっと、ソーシャルジャスティス基金

 (詳細、お問合せ等

  http://socialjustice.jp/p/20161119/

 

 第2回 鎌倉大根収穫祭

 日時:1126日(土)11:0018:00

 場所:福来鳥(ふくどり)、佐助稲荷神社(神奈川・鎌倉市佐助)

 主催:鎌倉だいこん未来研究クラブ

 (詳細、お問合せ等

  http://kamakuradaikon.sakura.ne.jp/syukaku/

 

 農業体験会「大豆収穫 in 横田農場」

 日時:1126日(土)930(東武東上線小川町駅前集合)〜16:00

 場所:埼玉・小川町

 主催:US. Peace Farm

 (詳細、お問合せ等

  http://uspeace.jp/user_data/event.php#taikenkai2

 

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*今夜のコツコツ小咄。

「なんて綺麗な銀色! 触ってみたくなるわ」

「どうぞ。太刀(タッチ)魚ですから」

 注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、

  絶賛(?)投稿中です。

  https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7

 

* 次号No.107は、1129日(火)[霜月朔日]の配信予定です。

  より有用な情報の発信に努めていきたいと改めて考えています。

 読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也