京都と金沢、2都ものがたり

 3月5日の土曜日は快晴、午前中の新幹線で京都に向かいます。
 空気が澄んでいて、車窓からは富士山、伊吹山などが綺麗に見えました。静岡県や滋賀県の方が羨ましい。
 12時過ぎに京都着、時間があったのでしばし御苑を散策。梅が満開です。
 13時過ぎに会場のハートピア京都へ。京都府地球温暖化防止活動推進センター主催の「食の地産地消で温暖化防止・実践者交流会」、京都府地球温暖化防止活動推進員など、実際に実践されておられる方を中心に約30名が参加。
 センターのNIさんの司会で交流会がスタート。NIさんは環境カウンセラーとして多彩な活動をされています。



 私からは1時間ほど各地におけるフード・マイレージの取組の現状等について説明。

 続いて活動報告として、京都府地球温暖化防止活動推進員の山本和仁さんから「フード・マイレージ買物ゲームによる環境学習会」について。2009年に作成された京都版の買い物ゲーム教材を用いて、小学校、中学校、一般等を対象としたゲームの実施状況等について報告がありました。実際の教材を持参され、写真を示しながらの説明は臨場感に溢れ、京都において取組が確実に拡がっていることが伺えました。



野木さん(左)、山本さん(右)



 続いての報告者は農業者でNPO法人エコネット丹後の理事長でもある野木武さん。「地域循環社会におけるフード・マイレージとは?」とのタイトルで、京丹後市において取り組んでおられる循環型農業や消費者との交流について、実際に農業生産に携わっておられる方ならではの報告がありました。
 最後は会場の参加者の皆さんを含めての意見交流会。山本さん、野木さんからは熱い思いが語られ、参加者一人ひとりが今後何ができるか等について、熱心な意見交換が行われました。
 終了後は担当のNIさん達と近くの炭火焼き鳥屋さんで懇親。ビールと京都の地酒に後ろ髪を引かれつつ19時過ぎのサンダーバードで金沢へ。
 21時過ぎに金沢着、金沢エコネットの中村早苗さんと北陸農政局のHさんが出迎えてくれ、駅構内の喫茶店で簡単に明日の打合せを行った後、駅西口近くのホテルにチェックイン。新しく、人工温泉の大浴場も快適でした。
 翌6日(日)は曇り空の下、道路脇の植え込みに残った雪を見ながら徒歩で会場の女性センターへ。10時から「地産地消のススメ フード・マイレージ研修会」。会場は寿司詰め状態で、始まる前から参加者の皆さんの熱気に煽られるようです。12時過ぎまで説明、各地の事例は皆さん興味深く聞いて頂きました。
 お昼は、小浦むつみさんから説明して頂きながら「コミュニティトレード al」の地産地消ランチを楽しみました。
 午後からはグループに分かれてのワークショップです。
 まず、カードで献立を選んで、電卓でフード・マイレージと輸送に伴う二酸化炭素排出量を計算。集計表を完成したら、続いて大きな紙に「環境にやさしい食生活とは-私たちにできること-」というテーマで話し合って書き出します。
 そしてグループ毎に発表と意見交換。その中で印象に残ったキーワードの一つが「井戸端会議」。
 食はあくまで個人的な営みであり、他人や行政から強制されるものではありません。自ら気づいて少しずつでも実践していく人を増やしていくためには、井戸端会議的にどんどん周りの人に話していこう、ということの重要性を再認識させられました。
 終了後、金沢市民の台所で観光名所でもある近江町市場を見学。
 この地下1Fに昨年11「風土金澤」がオープンしました。石川県下の生産者有志によるアンテナショップです。各農家のこだわりの食材、その場で精米するお米、牧場直送の乳製品、農産加工品等がずらりと並んでいます。壁面には生産者を紹介するパネルなど。先進的な法人経営等が多くある石川県農業の、新しい発信拠点です。店長さん(農家の娘さん)に、熱く思いを語って頂きました。
 夜は市内の海鮮居酒屋での懇親会。美味しい刺身、鍋と日本酒など。
 翌7日は生憎の雨模様の中「じわもんバスツアー」に参加。「じわもん」とは金沢の言葉で地元産のもの、という意味です。
 ツアーの舞台は金沢市の古くからの港町・大野地区です。
 最初の訪問地は創業100年の(株)ヤマト醤油味噌さん。
 地元産の大豆屋や米にこだわった発酵食品を製造・販売しています。社長の山本晴一さんから直接お話を伺い、味噌蔵も案内して頂きました。最後には2種類の味噌汁の試飲もさせて頂きました。熟成すると味が全然違うのに驚きました。
 その後、バスで県漁協に移動し「てんてん」の雑穀玄米おにぎり等のお弁当。
 食事の後は、石川県水産振興事業団の田渕事務局長と、漁家の平野世紀子さんから、石川県の水産の現状等について説明を伺いました。
 特に平野さんからは、実際にご家族の身に起こったことを含めて率直に話して下さいました。心打たれました。今でも漁船遭難のニュースを聞くと脚が震えるそうです。
 農業と漁業、同じ1次産業に分類されますが、だいぶ様子は違うようです。

 最後は「金沢港いきいき魚市」の見学とお買い物。
 新鮮な魚介類と、干物などが所狭しと並んでいます。脚に青いタグを付けたズワイガニは「加能ガニ」(加賀と能登、つまり石川県産)としてブランド化を図っているもの。市場内にある販売店を経営されている姉妹の方は、地元テレビで「かのう姉妹」と紹介されたそうです。
 1530分に金沢駅に戻り解散。この時になって雨雲が切れ日が射してきました。1620分発のはくたか、越後湯沢経由で帰宅。金沢在勤中は何度も乗った路線です。新潟県の十日町辺りは深い雪に覆われていました。
 京都と金沢はいずれも日本を代表する古都で、伝統的な食文化が豊かに花開いている地です。
 今回は、両都市の皆さんの暖かい気持ちに触れることができ、また、フード・マイレージの取組が熱く着実に拡がっていることに、心励まされた旅となりました。
 *フード・マイレージについて、詳しくは「資料室」をご覧ください。